うつで休職したら給料はどうなる?
うつ症状で仕事を続けるのが難しくなったとき、多くの方が「このまま休職したら、お給料はどうなるんだろう?」と不安を抱えます。
生活費や家族のことを考えると、収入面の心配は決して小さくありませんよね。
この記事では、会社から支払われる給与の仕組みや、休職中でも受け取れる可能性がある手当について、専門的な情報をやさしく解説します。まずは「会社からのお給料」がどうなるのかを見ていきましょう。
会社ごとの「休職手当」・「減額支給」パターン
休職中に会社からお給料が支払われるかどうかは、「就業規則」や「給与規定」によって大きく異なります。
法律上、会社は私傷病(業務外の病気やけが)による休職中に給料を支払う義務はありません。
とはいえ、実際の運用では一定期間、給与や手当が支給されることもあります。
主な支給パターン3つ
企業によく見られる休職中の給与支給パターンは、以下のいずれかです。
パターン | 内容 | 実例 |
---|---|---|
パターンA | 休職開始から一定期間は給与の◯割を支給 | 例:3ヶ月間は基本給の60%支給 |
パターンB | 会社独自の「私傷病休職手当」を支給 | 福利厚生が手厚い大企業に多い |
パターンC | 完全に無給となり、傷病手当金に切り替え | 中小企業で多く見られる |
たとえば、従業員数300人以上の大手企業では、最初の3ヵ月~6ヵ月間は「給与の60~80%」が支給され、その後は傷病手当金(健康保険)へ切り替わるケースが多いです。
一方、従業員数50人未満の中小企業では、休職と同時に無給となり、公的制度(傷病手当金)への早期申請が必要になることもあります。
規定は人事・労務へ必ず確認を
就業規則や給与規定は、会社が必ず社員に公開する義務があります(労働基準法第106条)。
自分の会社のルールが不明な場合は、人事担当者に確認を取りましょう。
ポイントは、「休職の開始日がいつか」「その日から何日まで給与が支給されるか」「有給休暇とどう関係するか」の3点を明確にすることです。
有給休暇・欠勤控除との違いを整理
うつ病で仕事を休むとき、「有給休暇」「欠勤」「休職」の3つの言葉が飛び交いますが、それぞれ法的な扱いと給与支給の有無が異なります。
有給休暇は100%給与が出る制度
年次有給休暇は、労働基準法第39条で保障された権利です。
事前に申請すれば、休んでも基本給全額が支払われます。うつの初期段階で休養をとる場合、まずはこの制度を活用するのが良いでしょう。
医師からの診断書があっても、勤務先が「有給休暇として処理する」ことはよくあります。
【活用のポイント】
- 有給休暇は労働日換算(週5日勤務なら年間10日以上)
- 有給残日数があれば、休職に切り替わる前に取得可能
- 医師の診断書があると、上司への説明がスムーズに
欠勤は給与支払いなし、でも社会保険料は天引き
有給を使い切ったあと、診断書が出ても会社が「休職扱い」にしない場合は「欠勤」となります。
この場合、原則として給与の支払いはありません。ただし、社会保険料(健康保険・厚生年金)は在職中である限り引き続き差し引かれます。
欠勤が一定期間続くと、会社によっては就業規則に従い「休職」へと自動的に切り替わる仕組みもあります。
休職は「労務提供義務の停止状態」
「休職」とは、本人が病気やけがで働けない状態が一定期間続くと、会社が一時的に労働契約の履行義務を免除する制度です。
労働契約は継続していますが、労働の提供義務と引き換えに、給与の支払義務も一時停止されます。
つまり、休職中は「在籍しているけれど、会社も給料は出さない」という宙ぶらりんな状態。
だからこそ、会社からの補填がない場合は、健康保険の「傷病手当金」など公的制度の出番となるのです。
- 休職中の給与支給は会社の就業規則により大きく異なる
- 有給休暇は全額支給されるが、日数に限りがあるため計画的に活用
- 欠勤は無給扱いだが社会保険料は天引きされ続ける点に注意
- 休職は「労働契約の一時停止状態」であり、給与支給は原則なし
- 就業規則の確認と人事への相談が、最初の重要なステップ
会社からの給与が停止された後、「じゃあ生活費はどうすればいいの?」という疑問が出てきますよね。
そんなときに頼りになるのが、健康保険制度で保障されている「傷病手当金」です。
次の章では、この傷病手当金について、支給の条件や金額の計算方法、申請の流れなどをわかりやすく解説していきます。
法律で定められた収入保障:傷病手当金の基礎
「会社からのお給料が止まったら、生活はどうすれば…」──そんな不安を抱える方の心強い支えになるのが、健康保険の「傷病手当金」という制度です。
特に、うつ病などの精神的な不調で長期休職となった場合、収入の柱となるのがこの手当金です。
この章では、傷病手当金が受け取れる条件や金額、申請方法について、順を追ってわかりやすくお伝えします。
支給条件:連続3日間の待期と4日目以降の要件
傷病手当金は、会社からのお給料が支給されない間に生活を支える「公的な収入保障制度」です。
対象になるのは、健康保険(協会けんぽや組合健保)に加入している会社員やその扶養者ではない本人です。
もらえる条件は4つあります
以下のすべてを満たす必要があります:
条件 | 内容 |
---|---|
① 会社を連続して3日間休む | 有給でも無給でもOK。土日も含まれます |
② 4日目以降も就労できない状態が続いている | 主治医の意見が必要です |
③ 給料が支払われていない、または減額されている | 無給だけでなく減額支給でも対象になります |
④ 健康保険に継続して加入している | 国民健康保険は対象外なので注意 |
ここでポイントになるのが「待期期間(3日間)」という仕組みです。
これは、最初の3日間は傷病手当金が支給されないというルールのことで、4日目からようやく給付が始まります。
たとえば、金曜から体調不良で休んだ場合、金・土・日が待期期間、月曜から支給対象になる計算です。
「労務不能」とはどう判断される?
医師が「就労不能」と判断し、診断書にその旨を記載する必要があります。
うつ病の場合、「集中力の低下」「睡眠障害」「意欲の著しい低下」など、働く上で支障がある状態が継続していれば該当する可能性があります。
ただし、軽度な不調や単なる疲労感だけでは認定が難しい場合もあります。
うつ病の診断書について詳しく知りたい方はこちら → うつ病の診断書をすぐにもらうには?取得の流れとポイントを解説
支給額の計算式と平均標準報酬日額の確認方法
実際にどれくらいの金額がもらえるのか、これも生活設計においてとても重要なポイントです。傷病手当金の支給額は、以下の計算式で求められます。
支給額の基本計算式
1日あたりの支給額 = 【標準報酬月額の平均 ÷ 30日】 × 2/3
たとえば、標準報酬月額が30万円だった場合: 30万円 ÷ 30日 × 2/3 ≒ 6,666円/日
→ 月20日分で計算すると約13万円が目安になります。
「標準報酬月額」の見方と確認方法
この「標準報酬月額」は、会社が毎年4月~6月の給与を基に算出し、健康保険に報告している額です。
給与明細や健康保険証、もしくは会社の人事部に問い合わせれば、自分の等級(報酬額区分)を知ることができます。
また、直近12ヵ月間の平均額を基準にするため、転職直後などで期間が短い場合は特例的に直近の支給額を基準にすることもあります。
支給される期間の上限は「最長1年6ヵ月」
傷病手当金の支給期間は「最長1年6ヵ月」です。
ただし、「連続して」ではなく、「支給開始日から1年6ヵ月間のうち、支給対象の日数が通算であればOK」という点は見落としやすいので注意しましょう。
例:休職・復職を繰り返した場合
日付 | 状況 | 手当金支給 |
---|---|---|
2024年1月1日 | 傷病手当金の支給開始 | ◯(開始) |
2024年4月1日 | 一時的に復職(3ヶ月勤務) | ✕(支給停止) |
2024年7月1日 | 再び休職(再発) | ◯(支給再開) |
2025年6月30日 | 支給終了 | ◯(終了) |
➡ このように、途中に復職しても、「支給開始日から1年6ヶ月の範囲内」であれば再支給が可能です(残り日数分だけ)。
申請のステップ:医師の意見書/会社記入欄/提出先
傷病手当金を実際に受け取るには、所定の申請書類を提出する必要があります。
手続きに時間がかかることもあるため、早めの対応が安心につながります。
必要書類と流れ
以下が基本的なステップです。
- 「傷病手当金支給申請書」を準備(保険者の公式サイトまたは会社から入手)
- 主治医に診断欄を記入してもらう - 診断名、労務不能期間、治療の状況などを記入
- 会社(事業主)に勤務状況や給与支給状況を記入してもらう - 欠勤日、給与の支給有無、保険加入状況など
- 本人が署名し、協会けんぽまたは健康保険組合に提出 - 郵送でもOK。控えをコピーしておくと安心です
提出先の確認と目安期間
- 協会けんぽ加入者:全国健康保険協会の都道府県支部
- 健康保険組合加入者:自社の健保組合
提出から振込までの期間は、目安として3~4週間前後です。
支給が遅れる場合もあるため、家計に不安がある場合は一時的な生活資金の確保も検討しておきましょう。
- 傷病手当金は健康保険加入者の「生活保障」のための制度
- 条件は「連続3日間の欠勤+4日目以降も労務不能」など4つ
- 支給額は「標準報酬月額÷30×2/3」で計算(上限1年6ヵ月)
- 医師と会社の記入が必要な申請書類は、早めに準備するのがコツ
- 協会けんぽや健保組合への提出から入金までは数週間の猶予を見ておく
傷病手当金は大きな支えになりますが、それだけで生活がまかなえるとは限りません。
とくに休職が長引いたり、家族を養っている方の場合は、他の公的支援制度についても知っておくことが大切です。
次の章では、障害年金や労災保険、教育訓練給付など、うつで休職しているときに使える「その他のサポート制度」について、わかりやすくご紹介していきます。
休職中にもらえるその他の公的サポート
導入文(約200文字)
うつ病での休職は、傷病手当金だけで生活を支えるには不安が残る方も多いと思います。
特に、療養が長期に及ぶ場合や家計に余裕がない場合には、他の支援制度も検討しておくことが大切です。
実は、うつ病による休職でも、障害年金や労災保険、教育訓練給付といった複数の制度が適用される可能性があります。
この章では、それぞれの制度の概要と活用ポイントについて、丁寧に解説していきます。
障害年金(うつ病による等級認定)の概要
障害年金は、うつ病などの精神疾患によって「日常生活や仕事に著しい支障がある」と判断された場合に支給される年金制度です。
働けない状態が長く続いている方にとって、傷病手当金が終了した後の“次の受け皿”となりうる制度です。
対象となる人の要件
障害年金を受給するには、以下の3つの条件を満たす必要があります。
要件 | 内容 |
---|---|
初診日要件 | 初めて医師の診察を受けた日が公的年金に加入していた期間内であること |
保険料納付要件 | 原則、初診日の前々月までの1年間に保険料の滞納がないこと(または直近5年のうち3年以上納付) |
障害認定日要件 | 初診日から1年6ヶ月経過後に障害の程度が認定基準に該当していること |
等級と支給額の目安(2025年度版)
うつ病など精神疾患による障害年金の多くは、「障害基礎年金(1級または2級)」または「障害厚生年金(1~3級)」のいずれかに該当します。
等級 | 日常生活の状態 | 支給額の目安(2025年度時点) |
---|---|---|
1級(基礎年金) | ほぼ常時介助が必要 | 年額 約1,039,625円+子の加算(1人目239,300円、2人目以降各223,800円) |
2級(基礎年金) | 一人での生活が困難 | 年額 約831,700円+子の加算 |
3級(厚生年金のみ) | 軽度の支障がある | 報酬比例で決定(最低年額 約623,800円) |
✅ 詳細はこちら:日本年金機構|障害年金の支給額(2025年度)
「働いていると年金はもらえない?」という誤解について
障害年金は、日常生活にどの程度支援が必要かという観点から判断されます。
就労の有無は一要素にすぎず、働いているからといって必ず不支給になるわけではありません。
ただし、定期的な更新審査の際には「症状が改善した」とみなされて支給停止となるケースもあるため、就労状況は慎重に記載しましょう。
障害年金の申請・注意点
- 主治医による診断書(所定フォーマット)の作成が必須
- 遡及請求も可能だが、受給できるのは過去5年分が上限(時効)
- 一般的には、年金事務所または社会保険労務士を通して申請を行います
労災保険が適用される場合(業務起因)
うつ病が仕事による心理的負荷で発症したと判断された場合は、健康保険ではなく労災保険が適用される可能性があります。
労災認定の主な条件(厚労省基準)
- 発症前6か月以内に「著しい心理的負荷」があった(例:パワハラ、長時間労働、重大なクレーム対応 など)
- 医学的に業務起因性が認められる
- 発症時に私的な強いストレス要因がない
労災が認定された場合の給付内容
給付の種類 | 内容 |
---|---|
休業補償給付 | 平均賃金の60%(休業4日目以降) |
特別支給金 | 上記に20%が加算され、実質80%支給 |
傷病補償年金 | 長期療養時には年金形式での支給も可 |
医療費 | 原則として全額労災で補償 |
教育訓練給付制度との併用
利用できる条件と給付内容
休職中でも「主治医の許可(通学や在宅学習が可能)」があれば、雇用保険の教育訓練給付制度が使える場合があります。
種類 | 支給内容 |
---|---|
一般教育訓練給付 | 上限10万円(費用の20%) |
特定一般教育訓練給付 | 上限20万円(費用の40%) |
専門実践教育訓練給付 | 最大112万円/年(費用の最大70%+修了後追加最大20%) |
傷病手当金との併用の注意点
主治医が「就労不可」と診断しているにもかかわらず、過度な学習・活動を行うと傷病手当金の打ち切りリスクが発生する可能性があります。
必ず医師と相談のうえ、「治療と学習の両立が無理なく可能」と判断された場合のみ申請しましょう。
- 障害年金は、うつ病で日常生活や就労が著しく制限された場合に支給対象
- 労災保険は、職場ストレスが発症要因と認定された場合に強力な補償を受けられる
- 教育訓練給付は、復職・転職を見据えたスキルアップ支援として活用可能
- いずれの制度も申請書類や医師の判断がカギ。早めの情報収集と専門家への相談が安心につながる
こうした制度を活用しながらも、やはり大切なのは「安心して療養できる時間」と「復職に向けた準備」です。
次の章では、休職中の心と体の整え方や、主治医との連携、復職プログラムの進め方など、実践的な“休職期間の過ごし方”についてお伝えします。
休職期間の最適な過ごし方と復職準備
休職中は、つい「早く復帰しなければ」と焦ってしまう方も多いのではないでしょうか。
でも本当に大切なのは、「心と身体を整えること」と「復職に向けて無理のない準備をすること」です。
この章では、うつ病で休職中の方が安心して過ごし、職場に復帰するまでの流れを、主治医との連携やリハビリ出勤、会社との話し合いなどを軸に解説していきます。
主治医との定期受診とリハビリ出勤(試し出社)
休職中にもっとも大切なのは、「主治医との信頼関係」と「段階的な体調の把握」です。
うつ病は回復の波があるため、定期的な受診で変化を記録していくことが重要になります。
定期受診で把握すべきポイント
受診のたびに、以下のような項目について主治医と話し合うようにしましょう。
- 睡眠リズム(入眠・中途覚醒・起床時刻)
- 食欲や体重の変化
- 外出頻度や他者との会話の有無
- 「働きたい」という気持ちの変化
- 自宅での集中力やストレスへの反応
これらの情報は、復職の判断材料になるだけでなく、傷病手当金の継続受給や、障害年金などの他制度の申請時にも役立ちます。
リハビリ出勤(試し出社)とは?
回復がある程度進んだ段階で、職場に短時間だけ足を運んでみる「リハビリ出勤(試し出社)」という方法があります。
これは正式な復職ではなく、職場の雰囲気に徐々に慣れるためのステップです。
【試し出社の例】
- 週1〜2回、1〜2時間程度の出社
- 難しい業務は避け、簡単なメール整理や書類確認などからスタート
- 帰宅後に「疲労度」や「不安感」の変化を記録しておく
リハビリ出勤は医師の許可と、会社の理解があって初めて実施できます。
焦らず、小さな成功体験を重ねていくことが大切です。
会社とのコミュニケーション:復職可否判定会議のポイント
復職を正式に進めるには、会社側との話し合いが必要になります。
多くの企業では、産業医や人事担当者が同席する「復職判定会議」や「復職可否面談」が行われます。
会社との連携をスムーズにするための準備
- 主治医の復職可能意見書を取得
→「通常勤務が可能」「時短・配慮付きで可能」など、勤務形態に応じた記載が必要です。 - 自分の状態を伝えるメモを用意
→ できること・できないこと、日中の過ごし方、ストレス耐性などを簡潔にまとめておくと、会社側も判断しやすくなります。 - 今後の勤務スタイルの希望を明確に
→ 例えば「午前のみ勤務から始めたい」「在宅勤務を希望」「週3日から調整してほしい」など、現実的な提案を伝えることが大切です。
面談時のチェックリスト
- 無理なく通勤できる体力があるか?
- 集中力が1~2時間以上続くか?
- 人との会話や業務連絡にストレスを感じすぎないか?
- 定期的な受診を継続できるか?
復職はゴールではなく「再スタート」です。
会社と相談しながら、再発予防を意識した働き方の設計を一緒に考えていきましょう。
復職プログラム例(リワーク施設・在宅ワーク調整)
復職に向けた準備を具体的にサポートしてくれるのが、「リワーク施設」や「段階的な在宅ワーク調整」です。
これらは、復職後の再発を防ぎ、長く安定して働くための“架け橋”のような存在です。
リワークプログラムとは?
リワーク(Re-Work)とは、精神的な理由で離職・休職した方が復職するための専門的な支援プログラムです。
精神科クリニックやデイケア、就労移行支援事業所などで提供されています。
【主な内容(1日3~4時間)】
- 生活リズムの再構築(起床、外出、通所など)
- ストレス対処トレーニング(認知行動療法など)
- 集団プログラム(コミュニケーション練習など)
- 疑似業務(PC作業、報告書作成)
主治医の指示のもとで通所するため、医療的な安全性も確保された復職練習として高い効果が報告されています。
リワークプログラムについて詳しく知りたい方はこちら → 【2025年最新】復職リワークの種類・費用・利用期間・選び方を徹底解説
在宅ワーク調整による段階的な復職
フルタイム復帰が難しい場合は、在宅での業務から段階的に始める方法も有効です。
【ステップ例】
- 1週目:在宅で1日1時間の資料確認
- 2週目:オンライン会議に15分参加
- 3週目:午前のみ出社、午後は在宅勤務
- 4週目:通常勤務へ移行
柔軟な復職プランは、会社の協力と労務管理の工夫があってこそ成り立ちます。
労働者としての権利を理解しつつ、“できることから始める”姿勢が大切です。
- 主治医との定期受診で「体調の記録」と「復職可能性」の判断を丁寧に進める
- リハビリ出勤(試し出社)は職場復帰に向けた大切なリハーサル
- 復職可否判定では、主治医意見書と自己報告をもとに現実的な勤務調整を話し合う
- リワーク施設や在宅ワークの活用で“段階的な復職”が可能になる
- 焦らず、自分のペースを大事にした復職準備が再発防止のカギ
よくある質問(FAQ)
「会社が休職制度自体を認めてくれない」場合は?
まず大前提として、休職制度の有無や条件は、会社ごとに決められる任意の制度であり、法律で「必ず設けなければならない」と定められているわけではありません。
つまり、会社によっては「就業規則に休職制度がない」というケースも存在します。
しかし、だからといって「体調不良なのに何の支援も受けられない」というわけではありません。
取れる対応策は以下の通りです:
- 就業規則を確認する(閲覧請求は労働者の権利)
→ 労働基準法106条により、従業員には就業規則の閲覧権があります。 - 会社に“特例としての休職”を依頼してみる
→ 書面による診断書を添え、「一定期間の自宅療養が必要」と伝えることで、欠勤扱いではなく“特例的休職”として認められる場合もあります。 - 労働基準監督署や労働局の相談窓口を活用
→ 法的な観点からアドバイスを受けることができる無料の公的窓口です。
なお、会社が休職制度を定めていながらそれを適用しない場合、就業規則との整合性に問題がある可能性もあるため、記録を残しながら対応することが大切です。
傷病手当金と給与が重複する期間は返還義務がある?
はい。
傷病手当金は「賃金の補填」として支給される制度のため、給与が全額支給されている期間と重複して受け取った場合、原則として返還が必要になります。
ただし、給与が「一部のみ支給」されていた場合は、その差額を調整する形で手当金が支給されます。
具体例で解説します:
ケース | 給与額 | 傷病手当金の支給可否 |
---|---|---|
無給 | 0円 | 全額支給対象(1日あたり=標準報酬月額 ÷ 30 × 2/3) |
給与<手当額 | 例:給与が4,000円/日、手当額が6,000円/日 | 差額の2,000円分が支給される |
給与≧手当額 | 例:給与が8,000円/日、手当額が6,000円/日 | 支給対象外(受給不可) |
過払いがあった場合の対応
支給後に過去の給与支給が判明した場合、健康保険組合や協会けんぽから「返還通知」が届くことがあります。
この場合は、通知書に従って分割返済などの相談が可能です。
返還を拒否すると延滞金が発生することもあるため、速やかに連絡することが大切です。
復職後に再発したら再度受給できる?
うつ病は波のある病気で、「一度復職したけれど、また調子を崩してしまった」というケースも少なくありません。
このような場合、傷病手当金を再び受け取れるかどうかは、主に以下の2点で判断されます。
- 同一の傷病かどうか
- 前回の支給開始日からの経過期間
再度受給できる条件の整理
状況 | 支給の可否 | 補足 |
---|---|---|
同一の傷病で、前回の支給開始日から1年6か月以内 | ✅ 再開可能(残りの支給日数の範囲内) | 傷病手当金の「支給期間」は通算1年6か月なので、その枠内であれば再度受給可能です。 |
同一の傷病で、前回の支給開始日から1年6か月を経過 | ❌ 原則、再支給なし | 支給期間が満了しているため、たとえ再発しても対象外です。 |
異なる傷病(別の診断名)での再休職 | ✅ 新たに1年6か月の支給対象となる可能性あり | 例えば「うつ病」→「適応障害」など、別傷病と医学的に判断されれば、新たな傷病として扱われます。 |
再発時に必要な手続きと注意点
場合によっては、医療機関のカルテの継続性が問われることもあるため、診療録は大切に保管しておきましょう。
再受給のためには、再度の「就労不能」を示す診断書が必要です。
同一主治医による一貫した診療が望ましく、支給側(協会けんぽなど)による「同一傷病かどうか」の判断材料にもなります。
- 会社に休職制度がない場合でも、就業規則の確認と労基署相談で対応できる
- 傷病手当金と給与が重複した場合は、原則返還の必要あり
- 給与が手当金より少ない場合は差額が支給される仕組み
- 再発時は、支給開始日から1年6ヶ月以内なら残り日数分の受給が可能
- 傷病が異なる場合は、新たな傷病手当金の支給対象になる可能性もある
最後に
ここまで読んでくださりありがとうございました。
休職に関わる制度やお金の不安が少しでも和らいでいたら嬉しいです。
うつ病と向き合いながら働くことは、ときに困難も伴いますが、制度を正しく知り、必要な支援を受けることで乗り越えていけるものです。
この先も、あなたの心と生活を守る情報を丁寧にお届けしていきます。
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