「休職中の今、どう過ごせばいいのか分からない」
「何かしなきゃと思っても、気持ちが追いつかない」
──そんな思いを抱えていませんか?
仕事を離れている期間は、先が見えず、不安や焦りで心がいっぱいになることがあります。
このページでは、心のケアを専門とするカウンセラーの視点から、休職中の過ごし方について、具体的にご案内していきます。
休職中の「何をしていいかわからない」状態は自然なこと
「このままで本当に再就職できるのだろうか」
「周囲の人たちは働いているのに、自分だけが立ち止まっているようでつらい」
「何もしていない自分が、どんどん価値のない存在に感じてしまう」──
もし今、このような感情に押しつぶされそうになっているとしたら、どうか安心してください。
それは“あなたの心がちゃんと現実に反応している”という、ごく自然で健康なサインなのです。
不安が生まれる心理学的なメカニズム
心理学では、不安や焦燥感は「未来が予測できず、自分ではどうにもできないと感じるとき」に強く現れるとされています。
仕事をしていた頃は業務内容、目標など、ある程度「自分の役割がある」の中で日々を過ごしていたはずです。
しかし、休職中はそれが突然なくなり、「明日、自分が何をすればいいか」が見えにくくなる状態に置かれます。
この“計画の喪失”や“予測不能な状態”こそが、心に大きな負荷をかけ、不安という形で現れてくるのです。
SNS時代の“比較”がさらに不安を増幅させる
現代は、スマートフォンを開けばすぐに「誰かの成功や活動」が目に飛び込んできます。
SNSで見かける「転職成功しました!」「起業しました!」といった投稿に触れるたび、「自分だけ何も進んでいないように感じる」ことはありませんか?
でも、忘れないでください。
私たちがSNSなどで目にするのは、その人の“切り取られたハイライト”であり、背景や努力、挫折、葛藤などは見えていません。
もっと言えば、自分と“編集された誰かの一部”を比べること自体、あまり無意味のないこと。
自分を責めるよりも、「よくここまで頑張ってきたね」と、今の自分にやさしく声をかけてあげることが、まずはとても大切です。
何もしない“空白の時間”には、脳科学的に大きな意味があります
休職中は、「何かしなきゃ」「何か成果を出さなきゃ」と自分を追い込みがちです。
でも、何もしていない時間=ムダとは限りません。
脳科学の研究では、何もしていないときに働く「デフォルトモードネットワーク(DMN)」という脳の活動領域が、自己内省や創造的思考を活性化することが分かっています。
つまり、ぼんやりしている時間こそが、自分の感情を整理したり、将来の方向性を思い描いたりするための“種まきの時間”になっているのです。
- 休職中に「何をすればいいかわからない」と感じるのは、誰にでもある自然なこと
- 何もしていない時間も、内省や創造のための大切な時間
- 自分にやさしい問いかけをしながら、焦らずに、少しずつペースを整えていきましょう
不安や焦りは正常な反応であり、まずは心と体の土台を整えることが大切──そうお伝えしました。
では実際に、毎日の生活の中でどのような習慣を意識すれば、心の安定や再スタートの準備ができるのでしょうか。
次章では、「休職中におすすめの1日の過ごし方」や「心を整えるルーティン」について、より具体的なアクションをご紹介していきます。
心と体を整える!おすすめの毎日の過ごし方
休職中の生活では、時間にゆとりがある一方で、「気がつけば一日が終わっていた」「生活リズムが崩れてしまった」という声をよく聞きます。
心が疲れているときは、何かを始めようとする気力そのものが湧きづらくなり、思うように行動できない自分に対して、無力感や罪悪感を感じてしまう方もいらっしゃいます。
でも、どうか覚えていてください。
「今から生活を整えよう」と思えたその瞬間から、すでに大きな一歩を踏み出しています。
ここでは、無理なく始められて、心と体を少しずつ整えていくための具体的な過ごし方をご紹介します。
適度な運動は心を整えてくれる
実は運動には、科学的に証明された“気分を整える作用”があります。
たとえば、ウォーキングやストレッチといった軽い運動を行うと、脳内で“こころを整える物質”が分泌されます。
代表的なのが セロトニン・ドーパミン・エンドルフィン の3つです。
- セロトニン は「心の安定ホルモン」とも呼ばれ、気分を穏やかに保ち、不安やイライラを和らげる働きがあります。
- ドーパミン は「やる気ホルモン」とも言われ、達成感や喜びを感じたときに分泌され、意欲を高めてくれます。
- エンドルフィン は「脳内麻薬」とも表現されるほど強力な幸福感をもたらし、ストレスや痛みを和らげる効果があります。
運動によってこれらの物質が活性化されることで、気分が少し明るくなったり、ふっと心が軽くなる感覚が生まれやすくなるのです。
これらの神経伝達物質は、うつ病や不安障害との関連が深く、セロトニンが不足すると「やる気が出ない」「不安になる」といった症状が強くなることもあります。
だからこそ、「なんとなく動いてみる」だけでも、心のケアに効果があるのです。
運動とメンタルヘルスの関係についてもっと詳しく知りたい方はこちら → 【専門家が解説】メンタルに効く運動とは?ストレス・うつ病改善になる理由と習慣化のコツ
日常に取り入れやすい運動習慣
種類 | 内容 | 時間の目安 | メンタルへの効果 |
---|---|---|---|
朝の散歩 | 朝日を浴びながらゆっくり歩く | 15〜30分 | セロトニン分泌が促進され、気分が安定しやすくなる |
ストレッチ | 朝や就寝前に体を伸ばす | 5〜10分 | 筋肉の緊張を和らげ、リラックスを促す |
ラジオ体操 | 音楽に合わせて軽く体を動かす | 3分程度 | 短時間でも全身を使えて、達成感も得やすい |
食事:心の安定は“腸”からも作られる
「脳と腸はつながっている」という言葉を耳にしたことがある方もいるかもしれません。
これは科学的にも明らかにされており、腸内環境が整うと、幸せホルモン“セロトニン”の分泌が安定し、気分が落ち込みにくくなることが分かっています。
しかし、現代の私たちは、忙しさの中で「とりあえずお腹を満たす」ような食事に偏りがちです。
オーストラリアのディーキン大学の研究では、加工食品の摂取がうつ病や不安症状のリスク増加につながることを明らかにしました。
反対に、野菜・果物・魚などを多く含む地中海式食生活を実践している人は、うつや不安感が少ない傾向があります。
これは、和食に含まれる発酵食品・海藻類・魚・大豆製品が、脳と腸の健康を支えてくれるからです。
メンタルに関わる栄養素と食材
栄養素 | 働き | 含まれる食材 |
---|---|---|
トリプトファン | セロトニンの材料になる | 大豆製品、乳製品、バナナなど |
ビタミンB群 | 神経や脳の働きをサポート | 玄米、豚肉、卵、海苔など |
食物繊維 | 腸内環境を整える | 野菜、果物、海藻、きのこ類など |
自炊が負担に感じるときは、冷凍野菜や納豆、カットフルーツなど、“簡単に取り入れられる食材”を活用してみてください。
「今日は納豆を食べてみようかな」「おやつをナッツにしてみよう」――そんな小さな一歩が、あなたの心にやさしく作用していきます。
栄養とメンタルヘルスの関係について詳しく知りたい方はこちら → メンタルヘルスに効く栄養素・食事とは?心と腸内を整える食品を専門家が解説!
睡眠:メンタルの基盤を整える“土台”
睡眠は単に「疲れを取る」ための時間ではありません。
心と体の両方を修復し、私たちが元気に日々を過ごすために欠かせない“脳のメンテナンスタイム”なのです。
睡眠には大きく分けて2つの種類があります。
- ノンレム睡眠(深い眠り)
- いわゆる「深い眠り」。
- 体がしっかり休まり、筋肉や免疫系が修復されると同時に、脳内で不要な情報が“掃除”されるとも言われています。
- レム睡眠(浅い眠り)
- 浅い眠りで、夢を見ることが多い時期。
- 脳が活発に動き、感情の処理や記憶の統合が行われています。
- 特に、ストレスの記憶をやわらげる働きがあることが分かっています(※1)。
これらは一晩のうちに約90分周期で交互に現れ、「睡眠サイクル」を形成します。
このサイクルが崩れると、睡眠の質が低下し、感情コントロールや集中力、ストレスへの耐性が落ちてしまいます。
また最近の研究では、睡眠の“量”より“質”のほうが、心の健康により大きく影響することがわかってきています。
例えば、6時間しか寝ていなくても睡眠の質が高ければ、気分が安定し、ストレスに対する耐性も高まります。
一方で、8時間寝ても何度も目覚めていたり、深い眠りに入れていない場合は、「脳の疲労が取れていない」=「メンタル不調に近づいている」という状態なのです。
快眠をサポートする習慣
- 就寝の2時間前からスマホやPCを控える(ブルーライト対策)
- 就寝前は40℃前後のぬるめのお湯で入浴(副交感神経を優位に)
- 部屋を暗くし、刺激の少ない静かな環境を整える
- 毎朝同じ時間に起きる(休日もできる範囲で)
「眠れない日があってもいい」「寝つきが悪い自分を責めない」──そう考えることが、逆に眠りやすくなることもあります。
睡眠とメンタルヘルスの関係を詳しく知りたい方はこちら → 【専門家が解説】睡眠障害とメンタルヘルスの関係とは?不眠とうつ・不安の改善法
入浴:心と体を“ゆるめる”ための習慣
入浴はシャワーだけで済ませてしまいがちですが、心の回復を考えるなら、湯船にゆったり浸かる時間を持つことをおすすめします。
ぬるめのお湯に肩まで浸かると、筋肉の緊張がほぐれ、呼吸が自然と深くなり、副交感神経の働きが活性化します。
それは、緊張していた心にも「大丈夫、安心していいんだよ」というメッセージを届ける時間になります。
デジタルデトックスで脳をリフレッシュ – 情報の“渋滞”が、心の疲れを引き起こす
スマホやPCから流れ込んでくる大量の情報は、私たちの脳を常に「興奮状態」に置き、知らず知らずのうちにストレスを積み重ねています。
特に休職中は、「今すぐ動かなきゃ」といった焦りを煽る投稿や、自分と他人を比べてしまうSNSの情報にさらされることで、心が一層疲れてしまう傾向があります。
デジタルデトックスとは?
意識的にデジタル機器との距離を置くことで、脳と心に“余白”をつくる習慣です。
強制的にすべて断つ必要はありません。まずは「夜20時以降はスマホを見ない」「寝る前の1時間だけOFFにする」など、ゆるやかなルールから始めてみましょう。
初心者向けデジタルデトックスの例
方法 | 内容 | 難易度 |
---|---|---|
SNSを1日1回だけチェックする | 必要な投稿だけを見る | ★☆☆ |
デジタル“オフタイム”を決める | 例:夜20時以降スマホOFF | ★★☆ |
週1日の“スマホ断食”デーを設ける | スマホに触れない日をつくる | ★★★ |
- 運動は「心のエネルギー」を補う習慣。朝の散歩や軽いストレッチから始めてみましょう。
- 食事・睡眠・入浴の質を整えることで、心の土台が安定していきます。
- 情報を減らす“デジタルデトックス”は、心の回復に効果的です。
少しずつ生活が整ってくると、心の中にも「そろそろ何かしてみたいな」という前向きな気持ちが生まれてくるかもしれません。
次章では、そんな気持ちを大切にしながら、未来につながる活動──スキルアップや社会とのつながりの持ち方について、無理なく始められるヒントをお伝えしていきます。
休職中にできる“未来につながる”活動
心と体が少しずつ整ってくると、「何かしてみようかな」「そろそろ動き出したいかも」という気持ちがふと芽生えることがあります。
その気持ちは、とても尊く、前向きなサインです。
そんなときこそ、“未来につながる一歩”を、無理のない範囲で試してみることをおすすめします。
この章では、資格やスキルの習得、社会とのつながりの持ち方、そして心の内面を深く見つめる過ごし方まで、未来への準備になる4つの具体的な活動をご紹介します。
資格取得・スキルアップ:少しの「学び直し」が未来の自信に
「学ぶ」という行為そのものが、心を回復させる
休職中の時間は、心身の回復とともに、“新しい自分”を育てるチャンスでもあります。
特に、学ぶことに向き合えるようになってきたら、それは回復の大きな証。
無理せず、でも少しずつ、自分の興味のある分野に触れてみましょう。
最近では、無料や低価格で利用できるオンライン講座が増えており、自宅からでも手軽に知識を深めることができます。
「履歴書に書ける資格」だけを目指す必要はありません。
学ぶことを通して“自分を大切にする感覚”を取り戻すことが、なにより大切です。
おすすめの分野と講座例
分野 | 主なスキル・資格 | 学習サイト例 |
---|---|---|
IT・デジタル | Excel、Webデザイン、プログラミング | Udemy、Progate、ドットインストール |
ビジネス・事務 | 簿記、MOS、ビジネスマナー | Gacco、TAC、YouTube学習チャンネル |
医療・福祉 | メンタルヘルスマネジメント検定、介護初任者研修 | 厚労省e-ラーニング、NHK for School |
ハードルを下げて“学び癖”をつけるには
- 1日15分からでOK。完璧より「続けること」を意識してみましょう
- 「今日は動画を流すだけ」でも立派な学習です
- 日記アプリやSNSで学びを記録するのも、達成感につながります
「今は頭に入らないな」と思う日があっても大丈夫です。
そんな日は“学びのシャワー”を浴びるように、流して聞くだけでも脳は少しずつ活性化します。
ポートフォリオ作成・職務経歴の整理:「棚卸し」で自己理解が深まる
書くことは、自分の価値を“見える化”すること
「これまで何をしてきたか、自分でもよくわからない」
そう感じると、次の一歩が不安になって当然です。
でも、自分の経験を時系列で振り返り、棚卸ししてみると、「意外といろんなことをやってきたな」と驚くことがあります。
特に、心が弱っているときほど自己評価は低くなりがちです。
だからこそ、過去の実績や経験を“外に出して整理する”ことは、自信の再構築にとても役立ちます。
具体的な取り組みステップ
- 職歴や経験を時系列で書き出す
→ 小さな業務も丁寧に振り返ると、自分の特徴が見えてきます - ポートフォリオを作ってみる(必要な職種の場合)
→ デザイン、ライティング、プログラミングなどは「作品」が強い武器になります - 「得意なこと・苦手なこと・やりたいこと」を3列で書き出す
→ 将来の方向性がぼんやりとでも見えてきます
心の回復にもつながる“内省の作業”
こうした振り返りは、単なる「就職準備」ではありません。
「自分を知る」「自分の歩みを肯定する」時間でもあります。
ゆっくりで構いません。心が「今の私はこれでいい」と感じられる瞬間が、必ず訪れます。
ボランティアや地域活動で、社会とのつながりをゆるやかに持つ
孤立しがちな時期こそ、“誰かと関わる小さなきっかけ”を
休職中は、生活が内向きになりやすく、外との接点が減ってしまうことがあります。
その孤立感は、時に心の不調を深めてしまう要因にもなり得ます。
そんなときは、無理のない範囲で人と関われる「社会参加の場」を持ってみるのがおすすめです。
ボランティアや地域活動は、「人の役に立てた」という実感が自己有用感を育て、“自分はここにいていい”という感覚を思い出させてくれます。
気軽に参加しやすい活動の例
活動内容 | 特徴 |
---|---|
清掃活動 | 朝の短時間で終了。人との会話が少なくても大丈夫 |
子ども食堂・福祉施設 | 対人関係に温かさがあり、癒しにもなる |
オンラインボランティア | 在宅でできるものも多く、体力に不安があってもOK |
「ありがとう」と言われる経験は、何よりも心の栄養になります。
また、こうした取り組みは、面接時に「休職期間中にしていたこと」として話す材料にもなることがあります。
読書・日記・マインドフルネスで“自分の内側”と向き合う
休職中は、心の内面を見つめ直す貴重な時間でもあります
忙しい日々の中では、自分とじっくり向き合う時間を取るのは難しいものです。
休職中の今こそ、自分の気持ちや価値観に目を向ける「内省の時間」を大切にしてみませんか?
読書で「言葉にできなかった気持ち」と出会う
- 自己啓発本やキャリア本で、新しい考え方に触れる
- 小説やエッセイで、自分の中にある感情を見つける
- メンタルケア系の本で、自分の心と向き合う準備をする
「自分の気持ちを言葉にしてもらえた」感覚は、深い安心感をもたらします。
日記で心の整理をする
日記を書くことで、自分の思考や感情を客観的に見つめ直すことができます。
心理療法でも用いられる「ジャーナリング(感情の書き出し)」は、ストレスの軽減や自己理解の深化に効果があるとされています。
マインドフルネスで「今ここ」に心を戻す
マインドフルネスは、「今この瞬間に意識を集中する」ことで、過去や未来へのとらわれから心を解放する方法です。
神経精神学・脳科学の視点から考えるマインドフルネスの主な効果は以下です。
扁桃体(へんとうたい)の過活動を抑える
→ 扁桃体は「恐怖・不安・怒り」などの感情反応に関わる脳部位。
マインドフルネス瞑想を継続することで、扁桃体の反応が低下し、情動の過剰な反応が穏やかになることが研究で報告されています。
前頭前野(特に背外側前頭前野)の機能強化
→ 前頭前野は「注意のコントロール」「意思決定」「感情の抑制」を司る領域。マインドフルネスによってこの領域が活性化し、集中力の向上や衝動のコントロールがしやすくなるとされています。
デフォルトモードネットワーク(DMN)の活動調整
→ DMNは「何もしていないとき」に活性化し、過去の後悔や未来の不安など“反すう思考”に関与するネットワーク。
マインドフルネスはこの過剰なDMNの活動を抑え、「今ここ」に意識を戻しやすくする作用があります。
セロトニン分泌の安定化
→ 呼吸に意識を向けることで、脳幹の縫線核(セロトニンの産生部位)の活動が促進され、感情の安定や気分の改善に寄与すると言われています。
簡単なマインドフルネス呼吸法
- 静かな場所に座る
- 背筋を伸ばし、目を閉じる
- 呼吸の感覚(吸う・吐く)だけに意識を向ける
- 雑念が浮かんだら、やさしく呼吸に意識を戻す
1日5分だけでも、心のざわつきを落ち着ける助けになります。
マインドフルネスについて詳細を知りたい方はこちら → マインドフルネスの効果を脳科学で解説|集中力・睡眠・ストレス・うつ病に効く理由とは?
- 資格やスキル習得は、「未来を選べる自分」を育てる準備です
- 職務の棚卸しやポートフォリオ作成は、自己肯定感を取り戻す助けになります
- ボランティアなどの社会参加は、「誰かとつながる感覚」を思い出させてくれます
- 読書・日記・マインドフルネスは、自分の内側を整える“心の深呼吸”になります
専門家がすすめる「焦らない転職活動」の心構え
「そろそろ働かなきゃ…」「何か始めなきゃいけないのに、体が動かない」──
そんな焦りや不安を抱えながら、心のどこかで“今の自分はダメなんじゃないか”と思ってしまうことがあるかもしれません。
しかし転職活動には、走り出す前の“心の準備期間”が必要です。
今はまだ“静かな時間”を過ごすことこそが、次に進むための土台づくりになります。
求人を見るだけでも“立派な準備”になります
転職活動=応募ではありません
「転職活動=応募すること」と思われがちですが、実はその前にやるべきこと、そして“心の準備段階”として大切なことがたくさんあります。
たとえば、求人情報を眺めるだけでも、次のような“種まき”ができます。
- 今、どんな職種や業界があるかを知る
- 自分が興味を持てる分野を探す
- どの働き方や条件が自分に合いそうかを整理する
- 「この仕事、いいかも」と思える感覚に出会う
求人を見るだけで「やってる気がしない」と感じる方もいますが、それは“情報への耐性を育てている時間”。
実は、立派な準備のひとつなんです。
公的な相談機関や支援サービスを活用しましょう
一人で抱え込まないことが、心の安全につながります
不安や焦りが強くなると、「誰にも相談できない」「自分のことをうまく話せない」と感じてしまう方も少なくありません。
でも、実は話すことそのものに、心を整理する力があります。
最近では、誰でも無料で利用できる就労支援や心のサポート機関が増えてきています。
「一緒に考えてくれる人がいる」という安心感は、それだけで心の支えになります。
代表的な相談窓口一覧(安心して使える支援機関)
機関・サービス名 | 主な内容 | 特徴 |
---|---|---|
ハローワーク | 休職相談、職業訓練、失業手当の手続きなど | 全国にあり、相談は無料。専門員による支援も可能 |
若者サポートステーション | 15〜49歳対象の就労支援・生活相談 | ブランクがある方や未経験者にも丁寧に対応 |
就労移行支援事業所 | 精神疾患などを持つ方向けの就労トレーニング | 医療機関と連携。障害者手帳があると利用可(手帳なしで相談可能な所も) |
地域の精神保健福祉センター・こころの健康センター | 心の不調に関する相談、精神科医や保健師との面談など | 自治体によって名称・内容は異なるが、無料の公的支援機関 |
※利用方法や対象年齢、開所時間などは、お住まいの地域の公式サイトで事前に確認をおすすめします。
話すことに意味がある、という実感
「誰かに話しただけなのに、少しラクになった」──
そう感じた経験、あなたにもあるかもしれません。
話すことで、自分の気持ちや考えが整理され、「次にどう動くか」が自然と見えてくることもあるのです。
話すことは、問題解決のためではなく、“自分を大切にする行為”なのだと覚えておいてください。
- 働けない時期があることは、決して悪いことではありません
- 求人を見るだけでも、十分に「未来への準備」になります
- 不安なときは、一人で抱えず、公的な支援や専門機関に相談を
リワークプログラムへの参加を検討する
復職を支援する「リワークプログラム」は心身の準備を整えるための大きな支えになります。
医療や専門的支援のもとで段階的に職場復帰を目指すこの取り組みは、近年とても注目されています。
最後に、リワークとは何か、どんな人に向いているのか、どのように参加するのかをわかりやすくご紹介します。
リワークプログラムとは?──“再び働く”ための心と体のリハビリ
「リワーク(Rework)」とは、「再び働く」ための準備プログラムのことです。
特にうつ病や適応障害、不安障害などで休職や離職を経験した人が、段階的に社会復帰を目指す際に活用される支援で、医療機関や就労支援機関などで提供されています。
厚生労働省のガイドライン(職場復帰支援の手引き)でも、復職支援の必要性が明記されており、働くことを支える“回復のプロセス”として位置付けられています。
どんな人に向いているの?
以下のような悩みを持つ方に、リワークは特におすすめです:
- メンタル不調での休職・退職を経て、再就職・復職を目指している
- 「もう働けるかも」と思いつつ、再発が心配
- 生活リズムを整えることから再スタートしたい
- 一人ではモチベーションが維持しづらい
- 他者とのコミュニケーションを少しずつ取り戻したい
「まだ働くのは不安だけど、少しずつ日常を取り戻したい」──その気持ちが、参加の第一歩になります。
リワークに参加する5つのメリット
- 生活リズムが整い、体と心が安定する
通所によって起床・就寝の習慣ができ、体内時計がリセットされます。これが、うつ症状の改善やストレス耐性向上にもつながります。 - 「仕事に戻る」ための心の準備ができる
グループワークやCBTを通じて、思考のクセを見直しながら「働くことへの不安」と向き合い、少しずつ前向きな捉え方を育てていきます。 - 自分の得意・不得意が見えてくる
模擬業務やトレーニングの中で、自分に合った働き方やストレスの傾向を把握でき、復職後の職場適応にも役立ちます。 - ストレスへの対処スキルが身につく
マインドフルネスやアンガーマネジメントなどのプログラムにより、「ストレスと上手に付き合う力」が育まれ、再発予防にもつながります。 - 仲間との支え合いが、孤独を和らげる
同じ悩みを持つ仲間との交流により、「一人じゃない」と実感でき、安心感や自己肯定感を取り戻すことができます。
リワークで行う主なプログラム内容
内容 | 目的 |
---|---|
認知行動療法(CBT) | ネガティブ思考の見直し、再発防止 |
グループワーク | コミュニケーションの練習、対人ストレスへの対応力向上 |
作業トレーニング | 集中力・持続力の回復 |
日誌や振り返り | 自己理解の促進、感情の整理 |
模擬就労・就職準備 | 実際の職場環境に近い形でのシミュレーション |
これらを週3~5日の通所型(施設に通う形式)で、2〜6か月程度かけて進めることが多いです。
参加までの流れ
- 主治医へ相談
体調が安定してきた段階で、リワークへの参加を検討している旨を医師に伝えましょう。 - 見学・説明会に参加
施設ごとに説明会や見学会を設けていることが多いです。 - 事前面談・体験参加
不安や希望を丁寧にヒアリングしてくれるところがほとんどです。 - 参加決定・通所開始
医療保険や自立支援医療制度の対象となる場合もあるため、費用面も安心です。
復職リワークと「就職活動との違い」は?
就職活動が“結果(採用)”を求める活動であるのに対し、リワークは“プロセス重視の支援”です。
焦って仕事探しをするのではなく、まず「働ける状態」を整えてからのステップアップ。
まさに、「回復しながら前に進む」選択肢です。
リワークプログラムについて詳しく知りたい方はこちら → 【2025年最新】復職リワークの種類・費用・利用期間・選び方を徹底解説
- リワークは、心と体を整えながら社会復帰・再就職を目指すための支援プログラムです
- 自己理解を深めたり、生活リズムを整えたりと、就労に向けた基礎力を回復できます
- 同じ立場の人との関わりから、孤立感の緩和や共感が得られます
最後に
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
休職中の時間は、時に孤独で、先が見えなくなることもあるかもしれません。
でも、焦らず自分と向き合いながら過ごしたこの時間は、きっとこれからの人生にとって大切な“土台”になるはずです。
今日できた小さなこと、それだけで十分です。
これからも、自分の気持ちに耳を傾けながら、一歩ずつ進んでいけますように。あなたの再出発を、心から応援しています。
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