「最近、なんだか朝起きるのがつらい」「職場に向かうだけで胸が苦しくなる」

——そんな日々が続いていませんか?

うつ病によって心が限界を迎えたとき、休むことは“逃げ”ではなく“回復への第一歩”です。

この記事では

・うつ病で休職を考えている方

・すでに休職中の方に向けて、休職までの流れ

・経済的なサポート

・心と体の整え方を

丁寧に解説していきます。一人で抱えず、まずはここから始めてみましょう。

うつ病で休職に至るまでのプロセス

「このまま働き続けて大丈夫なのかな……」そんな不安を抱えながらも、無理を続けてしまう方は少なくありません。

自分の不調に気づくことから始まり、医療機関の受診、会社とのやりとりまで――あなたの心を守るための第一歩を一緒に整理してみましょう。


ステップ1. 体や心の不調のサインに気づく

うつ病の始まりは、必ずしも目に見えてわかるような劇的な変化からではありません。

「なんとなく調子が悪い」「いつもと違う気がする」といった、ほんの小さな違和感から静かに始まることが多いのです。

もし、次のようなサインに心当たりがある場合、それは心が静かにSOSを発しているサインかもしれません。

前兆1:朝、布団から出られない

以前は自然に起きられていたのに、最近は朝がつらくて、なかなか体が動かない。

目覚めても起き上がるまでに時間がかかり、出勤の準備をする気力が湧かない。

仕事のことを考えただけで、胃がキリキリと痛む……。

こうした変化は、心が日々のストレスに限界を感じ始めているサインかもしれません。

前兆2:理由もなく涙が出る、不安が止まらない

ささいな出来事に心が大きく揺さぶられ、ふとした瞬間に涙があふれてしまう。

あるいは、具体的な理由がわからないまま、不安感がずっと頭から離れない。

うつ状態では、感情の起伏をうまく調整することが難しくなり、普段の自分では考えられないような反応が出ることもあります。

前兆3:集中できない、判断が鈍くなる

人の話が頭に入ってこない。

メールや資料を読むのにやけに時間がかかる。

簡単な作業でもミスが増えてしまう……。

うつ病は脳の働きにも影響を与えるため、思考力や集中力が低下し、日常業務や家事などをこなすのが難しくなることがあります。


こうした状態が2週間以上続く場合、うつ病の可能性が考えられます。

無理にがんばろうとせず、できるだけ早めに医療機関に相談してみてください。

心の不調は、適切なサポートと治療で少しずつ回復していけるものです。

あなたの心も、安心できる居場所を必要としているのかもしれません。

「やる気が出ない」「寝てばかり」「無気力」だと感じてしまっている人はこちら→「やる気が出ない」「寝てばかり」は心のSOS?無気力の原因と対策を専門家が解説


ステップ2. 医療機関を受診する精神科・心療内科の違いと、自分に合った医療機関の選び方

うつ病の診断や治療を受けるためには、まず専門の医療機関を受診することが必要です。

主に対応している診療科は「精神科」と「心療内科」ですが、それぞれの特徴や役割には少し違いがあるので解説します。


精神科とは?心の不調や精神疾患を専門に扱う診療科

精神科は、心の不調や精神疾患を専門に扱う診療科です。

うつ病だけでなく、双極性障害(躁うつ病)、パニック障害、社会不安障害、統合失調症など、幅広い精神疾患の診断・治療を行っています。

心の不調が長く続いていたり、日常生活に支障をきたしている場合は、精神科の受診を検討するとよいでしょう。


心療内科とは? ストレスによって体に症状が出ている場合に適している

心療内科は、「心のストレスによって体に症状が出ている場合」に対応する診療科です。

たとえば、仕事のプレッシャーや人間関係のストレスが原因で、不眠、動悸、胃腸の不調、食欲不振などの身体的症状があらわれているようなケースに適しています

うつ病であっても、体の不調を強く感じている場合には心療内科からのアプローチが有効なこともあります。


医療機関の選び方について

はじめての受診では、「どんな医師が対応してくれるのか」「しっかり話を聞いてもらえるか」といった不安を抱える方も多いと思います。

クリニックによっては、初診にたっぷり時間をとって(30〜60分ほど)丁寧に話を聞いてくれるところもあります。

医療機関のホームページや口コミサイトなどで、医師の雰囲気や診療スタイルを事前に確認しておくと安心です。

また、女性医師や女性専用外来を希望できる場合もあるので、遠慮せず自分にとって心地よい環境を選びましょう。


診断書のもらい方と、受け取る際の注意点

もし医師の診察で「うつ病」や「抑うつ状態」などと診断された場合、必要に応じて診断書を作成してもらうことができます。

特に、会社を休職したい場合には、医師に「仕事を一時的に休む必要がある」ことをしっかりと伝え、その旨が記載された診断書を依頼しましょう。


診断書に関する注意点:

  • 提出用とは別に、自分の控えももらいましょう。
    • 提出後にコピーが必要になる場合や、内容を確認するために手元に残しておくと安心です。
  • 傷病手当金の申請時にも診断書が必要になります。会社員で健康保険に加入している場合、休職中に「傷病手当金」を申請することで、収入の一部を保障してもらえる制度があります。
    • 申請には、医師の証明が必要ですので、必要書類と合わせて医療機関で対応してもらいましょう。
  • 診断書の内容について不安や疑問がある場合は、遠慮せず医師や受付に相談してみてください。
    • 誤字脱字や日付の記載ミスがないかの確認も大切です。

うつ病の診断書に関して詳しく知りたい方はこちら → うつ病の診断書をすぐにもらうには?取得の流れとポイントを解説

ステップ3. 会社への相談と休職手続き

まずは信頼できる相手に相談を

うつ病の診断を受けたあと、仕事を一時的に離れて回復に専念するためには、会社への相談と休職の手続きが必要です。

しかし、「会社に休職の意思を伝える」という行為自体が大きなストレスや不安を伴うことも少なくありません。

「迷惑をかけたくない」「本当に休んでいいのだろうか」と葛藤する気持ちはとても自然なものです

ですが、心や体に限界がきているときこそ、自分の健康を最優先に考えることが何より大切です。


上司・人事・産業医への報告の仕方

まずは、信頼できる上司や人事担当者に、「医師から休職が必要と診断された」ことを伝えましょう。

直接の対話が難しければ、メールや書面で伝える方法もあります。

伝える際には、無理に詳細を話そうとせず、「診断書があります」とだけ伝えても構いません。

また、企業によっては産業医(職場の健康管理を担う医師)が在籍している場合もあります。

産業医に相談することで、会社側への橋渡しをしてもらえたり、復職に向けた体制を整えてもらえたりすることもあります。

特に大企業や公務員の職場では、産業医との面談が休職・復職のプロセスに含まれていることもあります。


休職申請書・診断書の提出方法

会社によって休職の手続きには異なるルールがありますが、基本的には次のようなステップで進めます:

  1. 診断書の提出
     まずは医師に作成してもらった診断書を、会社に提出します。
     内容には「〇〇という病気のため、〇月〇日からの就労は困難である」といった文面が記載されます。
  2. 休職願(休職申請書)の提出
     会社の就業規則や社内ルールに基づいて、正式な休職願を提出します。フォーマットが指定されている場合は、人事・労務担当者に確認しましょう。
  3. 労務担当者とのやりとり
     休職期間の上限や、給与・手当の有無、社会保険の取り扱い(傷病手当金など)についても、事前に確認しておくと安心です。
     必要書類の準備や提出方法もサポートしてもらえることが多いため、不明点があれば遠慮なく相談しましょう。

休職時のよくある不安と、対処方法

うつ病で休職する決断をした際、多くの方が心の中に様々な「不安」や「罪悪感」を抱えています。

以下に、特に多く寄せられる悩みと、その向き合い方をご紹介します。


「周囲に迷惑をかけてしまうのでは」という罪悪感

「自分が休んだら、職場のみんなに負担がかかってしまうのでは」と悩んでしまうのは、きっとあなたが真面目で、責任感が強く、周囲を思いやる優しい人だからこそだと思います。

その気持ちはとても尊いものですし、簡単に手放せるものではないですよね。

でも、どうか思い出してほしいのです。

もし今、体や心が「もう限界」と訴えているのなら、それは無理をし続けるべきタイミングではないというサインです。

このまま我慢を重ねてしまえば、心身の状態がさらに悪化し、結果的にもっと長い休養が必要になってしまうかもしれません。

一方で、少しでも早く立ち止まり、しっかりと休む時間を持つことができれば、回復もスムーズに進みやすくなります。

今だけは「誰かのために頑張る自分」ではなく、「自分のために立ち止まる自分」を大切にしてあげてください。

職場の人間関係やキャリアへの不安

「こんなふうに休んでしまって、本当に戻れるんだろうか」

「評価が下がったり、居場所がなくなったりするんじゃないか」

そんな不安がふと頭をよぎって、心がざわついてしまうこと、ありますよね。

でも、それはとても自然な感情です。

あなたが仕事に誠実に向き合ってきた証拠でもあります。

うつ病や心の不調は、誰にでも起こりうる「特別ではないこと」です。

最近では、こうしたメンタルヘルスへの理解が職場でも少しずつ進み、復職をサポートするリワークプログラムや、柔軟な復帰制度を取り入れる企業も増えてきています。

今、あなたが休むことを選んだのは、キャリアを投げ出すためではありません。

休職は「終わり」ではなく、心と人生を整えるための一時停止ボタン

今は焦らず、無理せず、自分のペースで歩み直す準備をしてみてください。

復職リワークプログラムについて詳しく知りたい方はこちら→ 【2025年最新】復職リワークの種類・費用・利用期間・選び方を徹底解説

まとめ
  • 朝起きられない、涙が止まらないなどのサインは早めにキャッチする
  • 精神科や心療内科を受診し、診断書をもらう
  • 上司や産業医に相談し、会社のルールに従って休職申請を行う
  • 「迷惑をかけるのでは」という罪悪感は不要です。心の治療を優先しましょう
  • 休職は終わりではなく、再スタートの準備期間

休職を決断したあなたは、すでに「回復に向けた一歩」を踏み出しています。

とはいえ、実際にお休みに入ると、次に気になるのが「経済的な不安」ではないでしょうか。

次の章では、うつ病による休職中に利用できる手当や保険など、知っておきたい支援制度についてわかりやすく解説していきます。

休職中の経済的支援制度

「休職はしたいけれど、収入がなくなったらどうしよう……」そう感じる方はとても多いです。

特に、うつ病による休職では、先が見えず不安になるのも無理はありません。

ですが安心してください。日本には、休職中の生活を支えるための経済的支援制度がいくつか用意されています。

この章では、代表的な傷病手当金をはじめ、会社独自の制度や公的支援まで、わかりやすく丁寧にご紹介します。

あなたの心と暮らし、どちらも守るために知っておきたい情報です。


傷病手当金とは?

傷病手当金の概要

傷病手当金とは、健康保険に加入している被保険者が、業務外の病気やケガで働けなくなった際に、収入の一部を補うための制度です。

うつ病など精神的な病気も対象となっており、休職中の生活を支える最も代表的な支援制度です。

傷病手当金の支給条件

以下のすべてに該当する必要があります:

  1. 業務外の病気やケガによる療養であること(うつ病含む)
  2. 仕事に就けない状態であること(医師の診断・意見書が必要)
  3. 4日間連続で仕事を休んでいること
  4. 会社からの給与の支払いがない、または一部しか支給されていないこと

※会社から給与が支払われている間は支給対象外となる場合があります。

■ 支給額と受給期間

  • 支給額:直近12ヶ月の平均標準報酬日額の2/3相当(約67%)
    例:月収30万円なら、1日あたり約6,600円(30万円÷30日×67%)ほど支給されます。
  • 支給期間:最大で1年6ヶ月間

■ 申請の流れと注意点

申請は原則として月単位で行います。必要な書類は以下のとおりです。

  1. 傷病手当金支給申請書(健康保険組合または協会けんぽのHPから入手)
  2. 会社の証明欄:会社側が記入
  3. 医師の証明欄:通院中の医師が記入

注意点:

  • 医師の記入には日数がかかることがあるので、早めに依頼しましょう。
  • 書類に不備があると支給が遅れることがあります。
  • 一部の健康保険組合では、Web申請や郵送対応も可能です。

会社独自の制度(休職中の給与支給など)

多くの企業では、就業規則に基づいた独自の休職制度が整備されています。

以下のようなケースもあるため、まずは人事部や総務部に確認してみましょう。

有給休暇の利用

休職前に残っている有給休暇を使うことで、一定期間は通常通りの給与を受け取ることが可能です。

診断書の提出と同時に、有給処理を行う方も多くいらっしゃいます。

会社からの休職手当

一部の企業では、法定外で休職期間中に独自の休職手当(特別手当)を支給するケースもあります。

これは福利厚生の一環で、対象者や支給条件は会社ごとに異なります。

福利厚生サービスの利用

企業が契約している外部のEAP(従業員支援プログラム)や、心の相談窓口など、休職中でも利用できる支援サービスがある場合もあります。

精神的なサポートにもつながるので、積極的に確認してみましょう。


その他の公的支援(障害年金、生活支援制度など)

傷病手当金だけで足りない場合や、長期にわたり就労が困難なケースでは、他の公的支援制度の活用も検討できます。

障害年金(精神疾患も対象)

うつ病で長期間働けない場合、「障害年金」を申請できる可能性があります。

精神疾患も正式な対象であり、初診日から1年6ヶ月経過後の状態により等級が決まります。

  • 障害等級2級の場合(例:一人で通院・日常生活がやっと)
    年間およそ78万円前後(2025年度見込み)、加算あり
  • 申請には:初診日の証明、診断書(所定様式)、日常生活の困難さを示す資料などが必要です。

参考)精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について

障害年金は複雑な制度のため、年金事務所や社会保険労務士への相談をおすすめします。

精神障害者保健福祉手帳について詳しく知りたい方はこちら→精神障害者保健福祉手帳とは?対象となる病気や等級の違いをやさしく解説

自立支援医療制度(医療費の軽減)

精神科・心療内科の治療費を1割負担に軽減してくれる制度です。

対象は、精神疾患で継続的に治療が必要な方。

自治体の窓口に申請し、承認されると、通院時の医療費負担が軽くなります。


まとめ
  • 傷病手当金はうつ病による休職中に受けられる代表的な支援。最大1年6ヶ月、給与の2/3が支給される
  • 申請には医師の診断書と会社の証明が必要。早めの準備を
  • 会社独自の休職制度や手当がある場合もあるので、必ず人事に確認する
  • 障害年金や自立支援医療制度など、公的支援制度も併せて検討すると安心

うつ病の人が受けられる経済的支援制度についてもっと詳しく知りたい方はこちら → うつ病でお金がないときに使える給付金・補助金まとめ|今すぐ頼れる支援制度を解説

経済的な支援制度が整っていることがわかると、「まずは安心して休もう」という気持ちが生まれますよね。

次に気になるのは、「休職中の過ごし方」ではないでしょうか?

次章では、うつ病で休職中の回復期をより良いものにするための過ごし方について、ご紹介します。

休職中の適切な過ごし方

この章では、休職初期から復職準備期まで、時期ごとの過ごし方をやさしく解説していきます。

心と体をゆっくり整えながら、焦らず、自分らしいペースで進んでいくヒントをお伝えします。

まずは休むことへの罪悪感を手放す

「休んでいる自分に価値がない気がする」

―そんな罪悪感を感じていませんか?

これはとてもよくある反応です。

でも、うつ病というのは“心のケガ”

骨折をしたときに安静が必要なように、心もまずは“何もしない時間”が必要です

実際、厚生労働省のガイドラインでも、うつ病の治療初期には「十分な休養」が重要とされています。

「今は回復のための準備期間」と考え、少しずつ罪悪感を手放していきましょう。

休職中の過ごし方:睡眠をしっかりとって、栄養を取る

うつ病では、睡眠障害や食欲低下がよく見られます。まずは以下の2つを意識してみてください。

休職直後は「寝たいだけ寝る」ことを恐れない

うつ病になると、心も体もエネルギーが枯渇した状態になります。

そのため、休職してすぐの時期は、睡眠時間が長くなったり、日中も強い眠気を感じたりすることがあります。

これは体が「休みたい」というサインを出している状態です。

この時期は、「○時に起きなければ」「夜に寝ないとダメだ」と無理に生活リズムを整えようとするよりも、まずは体の声に従い、寝たいときに寝ることが大切です。

とくに休職してすぐの数日は、心身の回復を最優先に考えて、思いきってたっぷり眠ってください。

睡眠とメンタルヘルスの関係について詳しく知りたい方はこちら → 【専門家が解説】睡眠とメンタルヘルスの関係とは?不眠とうつ・不安の改善法

食べられるものからでOK。少しずつ「栄養」を摂る工夫を

うつ病のときには、胃腸の働きが低下し、食欲が湧かなくなることがあります。

食事を用意する気力が出ない、自分のために何かを作るのが面倒に感じる、というのもよくある反応です。

そんなときは、まずは「少量でも食べられるもの」を意識しましょう。

たとえば、バナナ、ヨーグルト、スープなど、消化に優しく手軽に摂れるものから始めるのがコツです。

無理に3食しっかり食べようとせず、1日1食でも「食べられた」という経験を積み重ねていくことが、回復への一歩になります。

また、うつの回復には、以下のような栄養素も重要です。

  • タンパク質:神経伝達物質(セロトニンやドーパミンなど)の材料になります。
  • ビタミンB群:エネルギー代謝や脳の働きを支える栄養素です。
  • 鉄分:脳への酸素供給に関わり、意欲や集中力にも影響します。

体調が少し落ち着いてきたら、スーパーの惣菜、宅配食サービスなどを利用して、無理なく栄養バランスを整えていきましょう。

メンタルヘルスに効く栄養素を詳しく知りたい方はこちら → メンタルヘルスに効く栄養素・食事とは?心と腸内を整える食品を専門家が解説!


【休職中期】少しずつ生活リズムを整える

■ 軽い運動や散歩のすすめ

少し元気が戻ってきたと感じたら、外の空気を吸うことや軽い運動を取り入れてみましょう。

  • 朝に10分でも散歩をする
  • ストレッチやヨガを取り入れる
  • 晴れた日に日光を浴びる

これらの活動には、幸せホルモンであるセロトニン(精神を安定させる神経伝達物質)の分泌を促す効果があるとされており、再発予防にも役立ちます。

「今日は少しストレッチができた」「外に出て散歩ができた」など、自分を褒める小さな目標を大切にしましょう。

運動とメンタルヘルスについて詳しく知りたい方はこちら → 【専門家が解説】メンタルに効く運動とは?ストレス・うつ病改善になる理由と習慣化のコツ

■ 1日のスケジュール例

生活のリズムを整えるためには、「ざっくりとした1日の流れ」を作るのが有効です。

例:うつ病回復中の生活スケジュール(中期)

時間帯活動例
8:00〜9:00起床・朝食・軽いストレッチ
10:00〜12:00散歩・洗濯など軽作業
12:00〜13:00昼食・休憩
14:00〜16:00本や動画でリラックス・記録を書く
17:00〜18:00夕食の準備・入浴
21:00〜22:30就寝準備・音楽を聴いてリラックス

ポイントは、「何をしてもOK」「休憩は何回でもOK」と自分を許してあげること💡

あくまで柔軟に、体調に合わせて調整してくださいね。


リワークプログラムとは?――復職への“準備運動”としての大切なステップ

うつ病などで休職していた方が復職を目指す際には、ただ単に「職場に戻る」ということだけでなく、「安定して働き続けられる状態に整える」ことがとても重要です。

そのための準備段階として、体力・集中力・生活リズムの回復状況を見直すことは欠かせません。

そして、この復職準備のサポートとして、さまざまな方法が存在します。

リワーク(復職支援プログラム)とは? 参加するメリットについて

「リワーク」とは、英語の「Rework(再び働く)」に由来し、主にメンタルヘルスの不調によって休職した人が職場復帰するための支援プログラムを指します。

具体的には、心理教育やストレスマネジメント、認知行動療法(CBT)、対人関係スキルの向上などを通じて、復職に向けた準備を整えるものです。

リワーク施設では、専門家によるカウンセリングやトレーニングを通じて、心身の回復を促しながら「働く準備」を整えていきます。

ここでは、リワーク施設に参加する具体的なメリットについてお伝えします。

メリット1. 生活リズムの安定

休職中は、つい夜更かしをしてしまったり、朝起きるのが遅くなったりしがちです。リワーク施設に通うことで、決まった時間に起床し、施設に向かう習慣が身につきます。

規則的な生活リズムが整うと、体内時計が正常に戻り、日中の活動がしやすくなります。

これは、精神面でも大きな効果があり、エビデンスとしても生活リズムや睡眠時間の安定は、抑うつ症状の改善やストレス耐性の向上に寄与するといった研究結果が示されています。

メリット2. ストレス対処スキルが身につく

ストレスは避けられないものですが、対処の仕方を学ぶことで、大きな負担を感じずに過ごせるようになります。

リワーク施設では、

といったプログラムが用意されており、ストレスとうまく付き合う方法を学ぶことができます。

特にマインドフルネス瞑想は、うつや不安障害の改善に有効であるという研究結果も多く発表されています。

マインドフルネスについて詳しく知りたい方はこちら → マインドフルネスの効果を脳科学で解説|集中力・睡眠・ストレス・うつ病に効く理由とは?

メリット3. 仲間と支え合える環境がある

リワーク施設には、同じように職場復帰を目指している仲間がいます。

グループワークや休憩時間の会話を通じて、お互いの悩みを共有し、支え合うことができます。

これは、心理的な安定にとても重要です。

「自分は一人じゃない」と感じることで、孤独感が和らぎ、復職へのモチベーションも高まります。


リワークプログラムに参加することで、認知行動療法を通じたストレス管理の方法を学び、復職後の環境への適応力を高めることができ、現在は無理のない働き方を実践しながら、再発を防ぐセルフケアの習慣を身につけることも可能です。

復職リワークプログラムについて詳しく知りたい方はこちら→ 【2025年最新】復職リワークの種類・費用・利用期間・選び方を徹底解説

まとめ
  • 休職初期はとにかく「休む」ことが大切。罪悪感を持たず、心と体を回復させる
  • 中期は少しずつ生活リズムを整える。散歩や軽作業からはじめてみよう
  • 自分に合ったスケジュールを柔軟に組み立ててOK
  • 復職準備期には通勤訓練やリワークプログラムの活用を検討
  • 「働く自信」を取り戻すために、日々の小さな達成を積み重ねよう

休職中に避けたいこと

「せっかくの休職期間だから、早く良くなりたい」「何か行動しなきゃ」という気持ちになるのは自然なことです。

でも、うつ病からの回復は“無理をしないこと”がとても大切。実は、よかれと思ってしたことが、逆に回復を妨げてしまうこともあります。

この章では、うつ病で休職中に避けておきたい行動や考え方について、よくある事例をもとにわかりやすくお伝えします。焦らず、自分をいたわるヒントにしてみてください。


自己判断での治療中断をしないこと。

うつ病は、良くなったり悪くなったりを繰り返す”波”のある病気です。

数日調子がいいと、「もう薬は必要ないかも」「病院に行くのは面倒だしやめようかな」と感じることもあるかもしれません。

しかし、自己判断での治療中断は再発リスクを大きく高めます

▼ 再発率に関する研究データ

特に、抗うつ薬は「調子がよくなったから」と自己判断でやめると離脱症状(めまい、頭痛、不安感など)が出ることもあります。

主治医と相談しながら、減薬や通院ペースを決めていきましょう。


ネットやSNSで情報過多になること

休職中は時間がある分、ネット検索やSNSを見る機会も増えると思います。

情報を得るのは悪いことではありませんが、過剰に見すぎることで心が疲れてしまうこともあるので注意が必要です。

▼ よくある悪循環

「うつ病 回復期間」「復職 目安」などを検索し続ける
→ 他人と比較して不安になる
→ 焦りが強くなり、眠れなくなる・食欲がなくなる

SNSにはポジティブな投稿が多いため、自分だけが遅れているような感覚に陥りやすくなります。

また、誤った医療情報も多く、判断を誤るリスクもあります。


■ 活動過多・頑張りすぎによる悪化

調子が少しよくなると、「何かしなきゃ」と行動的になりすぎてしまう方もいます。
たとえば──

  • 毎日スケジュールを詰めすぎる
  • 無理に資格の勉強を始める
  • 家事を完璧にこなそうとする

これは“良くなりたい気持が強い人ほど起こりやすい行動パターンですが、実はとても危険です。

エネルギーを使いすぎてしまい、その後に「何もできなくなってしまった……」と自己否定が強まり、再び抑うつ状態に戻ってしまうケースもあります。

▼ 回復期は“1歩進んで半歩戻る”くらいでちょうどいい

  • 今日は散歩できたから、明日はゆっくりしよう
  • 週に1回、出かけられたらOK

といったように、波を見越してゆるやかにリズムを整えていくことが大切です。

がんばることより、“がんばらない練習”をするつもりで、日々を過ごしてみてくださいね。


まとめ
  • 薬の服用や通院は主治医と相談して継続を。自己判断での中断は再発リスクが高まる
  • SNSやネット検索のしすぎは不安を助長する可能性があるので、情報との距離感を意識する
  • 少し元気になったからといって、急に予定を詰めすぎるのは逆効果。波を意識しながら無理のない活動を

最後に

心と体をしっかり休めること、それは「元の自分」に戻るためではなく、「より自分らしい自分」に出会うための時間です。

うつ病による休職は、決して恥ずかしいことではありません。

むしろ、あなたが真剣に自分を守ろうとした証です。

焦らず、比べず、少しずつ。

この時間を“充電期間”と捉えながら、自分のペースで歩いていきましょう。

あなたの回復を、心から応援しています。

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