「最近、どうしてもやる気が出ない」「気づいたら一日中寝てばかりいる」――
そんな自分に気づいたとき、焦りや不安を感じることはありませんか?
そう思って、つらさをひとりで抱えてしまっているあなたへ。
心や体がうまく動かないときは、何かしらのサインが出ている時期かもしれません。
このページでは、やる気が出ない・寝てばかりの状態について、その背景にある原因や関連する心の不調、
そして少しずつ元気を取り戻すためのヒントを、心理カウンセラーの視点からやさしくお伝えしていきます。
やる気が出ない、寝てばかりの無気力状態について
まず知っておいてほしいのは、やる気が出ない・寝てばかりしまうのは、誰にでも起こりうる現象であり、それ自体が異常というわけではないということです。
疲れがたまっていたり、ストレスがかかっていたりすると、私たちの心や体は無意識のうちに「休息が必要だ」とサインを出します。
無気力状態の定義
「無気力」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
心理学や精神医学では、やる気がなく、何をするのも億劫に感じる状態を「無気力(アパシー)」と呼びます。
この状態には個人差があり、短期間で自然に回復することもあれば、何週間・何ヶ月と続いてしまうこともあります。
無気力状態の主な特徴として、以下のようなものがあります。
- 興味や関心の喪失:「以前は楽しかったことに対して、まったく興味が湧かなくなった」
- エネルギーの欠如:「体がだるく、何をするにも疲れを感じる」
- 社会的な関わりの減少:「人と会うのが面倒に感じてしまい、連絡を取るのも億劫になる」
- 睡眠の変化:「とにかく長時間寝てしまう」「逆に、寝つきが悪く、十分な睡眠がとれない」
特に「寝てばかりしまう」という状態は、単なる疲労回復のためではなく、心や脳がエネルギーを節約しようとしている可能性があるのですが、これは精神的ストレスと深く関係しているのです。
一般的な症状と日常生活への影響
無気力状態が続くと、私たちの生活にはどのような影響が出るのでしょうか?
ここでは身体面・精神面の4つの観点から詳しく見ていきます。
1. 身体的な影響
やる気が出ないと、食事・運動・睡眠のリズムが崩れやすくなります。
- 食欲がなく、栄養バランスが偏る
- 運動不足で体力が低下し、ますます動くのが億劫になる
- 長時間寝ても疲れが取れず、だるさが続く
特に「長時間寝ても疲れが取れない」と感じる場合は、睡眠の質が低下している可能性があります。
2. 精神的な影響
やる気が出ない状態が続くと、「こんな自分はダメだ」と自分を責めてしまい、自己評価が低下することがあります。
- 「自分は何をやってもダメなんじゃないか」と思い込む
- 「何もしたくない」から「何もできない」と考え、無力感を抱く
- さらに行動できなくなり、落ち込みが悪化する
このような思考パターンが続くと、うつ病や適応障害といった精神疾患へと発展するリスクもありますので、「少し休めばよくなるだろう」と放置せず、自分の心の状態を客観的に見つめることが大切です。
- やる気が出ない・寝てばかりしまうのは、心や体のエネルギーが不足しているサイン
- 短期間なら問題ないが、長期間続く場合は注意が必要
- 放置すると悪循環に陥り、うつ病などの精神疾患につながるリスクも
やる気が出ず、寝てばかりになってしまう原因について
やる気が出ないのは決してあなたのせいではありません。
その背後には、心や体の疲労、ストレス、生活習慣の乱れ、そして目標喪失など、さまざまな要因が絡み合っていることが多いのです。
この章では、「やる気が出ないのはなぜなのか?」を具体的に紐解いていきます。
原因1:身体的な疲労が溜まっている可能性
身体的な疲れが溜まると、脳が「エネルギーを温存しなければ」と判断し、自然とやる気が低下します。
特に、慢性的な睡眠不足や過労は、脳の働きを低下させる大きな原因になります。
厚生労働省によると、成人の適切な睡眠時間は6〜8時間が推奨されていますが日本人の多くは睡眠時間が不足しており、「睡眠負債」が蓄積している状態になりがち。
睡眠が足りていないと、脳の前頭葉の働きが低下し、集中力が落ちたり、意欲が湧かなくなったりするので、睡眠の質と量を担保できると改善されるでしょう。
原因2:コンビニ飯などの栄養不足による脳のエネルギー低下
やる気を維持するためには、脳に十分な栄養が届いていることも重要です。
特に、不足しやすい栄養素として次のものが挙げられます。
- 鉄分不足(酸素供給が低下し、疲れやすくなる)
- ビタミンB群不足(エネルギー代謝がうまくいかず、脳の働きが鈍る)
- タンパク質不足(神経伝達物質の合成が低下し、気分の落ち込みにつながる)
特に、「ジャンクフードやコンビニご飯など簡単な食事で済ませる」ことが習慣になっていると、脳に必要なエネルギーが供給されず、気力が湧かなくなってしまいます。
原因3: 精神的な疲労:過剰なストレスが脳の機能を低下させる
やる気が出ない最大の原因のひとつに、精神的な疲労(メンタルの消耗)があります。
メンタルの消耗には様々なパターンがありますので、1つずつ解説・紹介していきます。
精神的な疲労① ストレスによる「コルチゾールの過剰分泌」
ストレスを受けると、私たちの体は「コルチゾール」というストレスホルモンを分泌します。
これは一時的には集中力を高める役割を果たしますが、長期間にわたってコルチゾールが分泌され続けると、脳の前頭葉(意思決定・意欲を司る部分)の機能が低下することが研究で分かっています。
その結果、次のような状態に陥りやすくなります。
- 考えるのが面倒になり、決断力が低下する
- 注意力が散漫になり、集中できなくなる
- 感情のコントロールが難しくなり、気分が落ち込みやすくなる
こうした変化が重なることで、「何をするのも億劫」「やる気が出ない」といった状態が生まれてしまうのです。
精神的な疲労② 気を張り続けることで「交感神経優位」が過剰に働いてしまう
精神的な疲労は、単に「ストレスを感じること」だけでなく、無意識のうちに気を張り続けることによっても引き起こされます。
たとえば、次のような状況が続くと、脳は大きく消耗します。
- 職場で常にミスをしないように気を張っている
- 人間関係で相手に気を遣いすぎてしまう
- 完璧主義で、常に「もっと頑張らなきゃ」と自分を追い込んでしまう
気を張り続けることで、脳は常に「緊張モード(交感神経優位)」の状態になり、休息を取る余裕がなくなってしまいます。
通常であれば、交感神経(活動モード)と副交感神経(リラックスモード)がバランスよく働くことで、心と体は適切に回復できるのですが、ストレスが強い状態が続くと、以下のような悪影響が出やすくなります。
- 何をしても気分が晴れない(副交感神経がうまく機能しない)
- 寝ても疲れが取れず、朝からだるい
この状態では、脳が疲労しすぎて回復が追いつかず、やる気を出すエネルギーがなくなってしまうのです。
これが続くと、心のエネルギーが枯渇し、「何もしたくない」という状態に陥りやすくなってしまいます。
精神的な疲労③SNS疲れ
現代社会では、SNSの使用が精神的な疲労の大きな原因のひとつになっています。
スマートフォンが普及したことで、私たちは常に大量の情報にさらされ、無意識のうちに心のエネルギーを消耗しています。
SNSを開くと、他人の成功や楽しそうな生活が目に飛び込んできますよね。
- 「この人はこんなに充実しているのに、私は……」と比較してしまう
- 「リアクションが少ないと不安になる」と自己評価がSNSの反応に左右される
心理学では、こうした現象を「社会的比較理論(Social Comparison Theory)」 と呼びます。
特に、自分に自信がないときや、ストレスが溜まっているときほど、SNSの情報と自分を比べて落ち込みやすくなるのです。
- 身体的な疲労(睡眠不足・過労・栄養不足)が続くと、脳の働きが低下し、やる気を失う
- ストレスによる「コルチゾールの過剰分泌」が、脳の意欲を低下させる
- 「気を張り続けること」によって、交感神経(活動モード)が過剰に働き、休息を取る余裕がなくなる
- SNS疲れが続くと、自己評価が下がり、やる気の低下につながる可能性が高い
やる気が出ない、無気力状態の時に考えられる精神疾患
やる気の低下や過眠はは精神的・身体的な疾患が関係している可能性もあります。
たとえば、うつ病、適応障害、自律神経失調症、過眠症、更年期障害などは、やる気の低下や長時間の睡眠と関係が深い疾患です。
「単なる疲れかな?」と思っていても、実は体の仕組みが大きく影響していることもあります。
この章では、やる気の低下や過眠と関連のある疾患について、それぞれの特徴や症状を詳しく説明していきます。
可能性のある精神疾患1.うつ病
① うつ病とは?
うつ病は、脳の神経伝達物質(セロトニン・ノルアドレナリン・ドーパミン)のバランスが崩れることで、意欲や感情の調整がうまくいかなくなる病気です。
この神経伝達物質は、「気分を安定させる」「やる気を生み出す」「楽しさを感じる」といった重要な役割を担っています。
しかし、ストレスや生活環境の変化、ホルモンバランスの乱れなどによって、これらの物質が減少すると、気分の落ち込みや無気力感が続くのです。
厚生労働省の調査によると、日本では約15人に1人が生涯のうちに一度はうつ病を経験するとされています。
うつ病は「心の風邪」とも呼ばれ、誰にでも起こりうる病気です。
しかし、風邪のように自然に治ることは少なく、適切な治療やサポートが必要となる場合が多いのが特徴です。
② うつ病の主な症状
うつ病の症状は、「気持ちの面」だけでなく、「身体の面」にも影響を及ぼします。
✅ 精神的な症状
- 気分の落ち込みが続く(一日中気持ちが晴れない)
- 何をしても楽しく感じない(以前好きだったことに興味が湧かない)
- 極端な疲労感や無気力(体が鉛のように重く感じる)
- 「消えてしまいたい」と考えることが増える(希死念慮)
✅ 身体的な症状
- 寝ても疲れが取れない、または過眠・不眠(睡眠リズムが乱れる)
- 食欲の変化(食べすぎる、または食べられなくなる)
- 頭が働かず、集中力や判断力が低下する
- 肩こりや頭痛、胃の不調などの身体症状が続く
うつ病は、精神面だけでなく、体調の不調として現れることも多いため、「なんとなく調子が悪い」と感じることが続いた場合も注意が必要です。
③ うつ病が疑われる場合
もし、上述したような状態が2週間以上続いている場合は、うつ病の可能性があるため、早めに心療内科や精神科を受診することをおすすめします。
うつ病は、「心の甘え」ではなく、脳の機能の問題です。
「まだ大丈夫」と無理をせず、早めの対処を心がけましょう。
可能性のある精神疾患2. 適応障害
「新しい職場になじめない」「仕事のプレッシャーが強すぎる」「人間関係のストレスがつらい」――
こうした「特定の環境や出来事」が原因で、心や体に不調が現れるのが適応障害です。
① 適応障害とは?
適応障害とは、特定のストレス要因に対する適応能力が低下し、精神的・身体的な症状が現れる状態を指します。
うつ病とは異なり、明確なストレスの原因があり、その影響を受けている間に症状が出るのが特徴です。
例えば、以下のような状況がストレスとなり、適応障害を引き起こすことがあります。
- 仕事の異動や転職、新しい環境になじめない
- 職場や学校での人間関係のトラブル
- 家庭の問題(離婚、育児のストレスなど)
- 経済的な不安や生活環境の急激な変化
適応障害の特徴は、ストレスの原因がなくなると、比較的短期間で症状が改善しやすいという点です。
しかし、ストレスが長期間続くと、うつ病へ移行する可能性もあるため、早めの対処が重要です。
② 適応障害の主な症状
適応障害の症状は、精神的なものと身体的なものの両方 があります。
✅ 精神的な症状
- 強い不安や緊張感を感じる
- やる気が出ず、仕事や勉強が手につかない
- ストレスを感じる環境を避けたくなる(遅刻・欠勤・引きこもり)
- イライラしやすくなり、感情のコントロールが難しくなる
✅ 身体的な症状
- 過眠または不眠が続く
- 胃痛や頭痛、動悸などの身体症状が出る
- 食欲不振や暴飲暴食など、食生活の乱れが起こる
③ 適応障害が疑われる場合
もし、以下のような状態が続いている場合は、適応障害の可能性があります。
✅ チェックポイント
✔ 特定の出来事や環境が原因でストレスを感じる
✔ そのストレスが強すぎて、日常生活に支障をきたしている
✔ 不安感やイライラ、無気力が続いている
✔ 仕事や学校を休みがちになっている
適応障害は、ストレスの原因がなくなれば改善することが多いですが、
無理を続けているとうつ病に発展することもあるため、早めに環境を調整したり、専門家に相談することが大切です。
可能性のある精神疾患3:更年期障害
「最近、やる気が出ない」「気分が落ち込む」「理由もなくイライラする」40〜50代でこのような症状が続く場合、更年期障害の可能性があります。
更年期とは、女性では閉経を迎える前後約10年間(45〜55歳)、男性では40代後半〜50代以降に訪れるホルモンバランスの変化が起こる時期 のことを指します。
この時期に現れる体調不良や気分の変化を「更年期障害」と呼びます。
① 更年期障害とは?
更年期障害は、ホルモンバランスの変化によって、心と体にさまざまな不調が現れる状態 です。
女性の場合、エストロゲン(女性ホルモン)の急激な減少 が影響し、男性の場合は テストステロン(男性ホルモン)の低下 が原因となることが多いです。
ホルモンは、体温調節や自律神経の働き、気分の安定に関わっているため、分泌が減少すると次のような症状が現れやすくなります。
② 更年期障害の主な症状
更年期障害の症状は個人差がありますが、一般的に次のようなものがあります。
- 慢性的な疲労感や倦怠感(体が重く、常に疲れている感じがする)
- 気分の落ち込みやイライラ(感情の起伏が激しくなり、些細なことでストレスを感じる)
- 不眠や過眠(寝つきが悪くなったり、逆に長時間寝てしまうことがある)
- 動悸やめまい、息切れ(突然、心臓がドキドキしたり、立ちくらみが起こる)
更年期障害の症状は、生活習慣の改善やホルモン補充療法(HRT)によって緩和できることも多いため、気になる場合は婦人科や泌尿器科で相談することをおすすめします。
やる気を取り戻すための具体的な対策
私たちの心や体は、思っている以上に日々の生活リズムに左右されます。
特に、やる気が出ないときには、“生活の土台”が静かに崩れてしまっていることが多いのです。
この章では、心のエネルギーをじんわりと取り戻していくために、規則正しい生活・食事・運動という3つの基本を、やさしく丁寧に見直していきましょう。
対策1. 規則正しい生活リズムの確立:つらさの影には“体内時計のズレ”が。
「夜に眠れず、昼間はずっと眠い」「平日と休日のリズムがバラバラ」――
そんな生活が続いていると、心のエンジンがうまくかからなくなってしまいます。
人の体は「体内時計(サーカディアンリズム)」によって、1日のリズムを刻んでいます。
このリズムが乱れると、脳の覚醒・睡眠の切り替えや、ストレスを調整するホルモン(コルチゾール、メラトニンなど)の分泌も乱れてしまいます。
科学が教えてくれる「生活リズムの大切さ」
- 朝日を浴びることで、幸せホルモンの1つであるセロトニンが分泌されやすくなる
- 決まった時間に起きるだけで、自律神経が整いやすくなる
- 夜に光を浴びすぎると、睡眠ホルモンの生成が阻害され、翌日の疲労感に影響する
2. バランスの良い食事 – 「気力が出ない」のは、栄養不足のせい?
「コンビニ飯で適当に済ませちゃう」
「甘いものばかり食べてしまう」
このような食生活が続くと、脳が“エネルギー切れ”を起こし、思考力もやる気も出にくくなります。
特に、神経伝達物質の材料になる栄養素が不足すると、気分の落ち込みや無気力感が強くなることが知られています。
心の元気を支える栄養素とそのはたらき
栄養素 | 役割 | 多く含まれる食品 |
---|---|---|
トリプトファン(タンパク質) | セロトニンの材料 | 卵、大豆製品、乳製品、魚 |
ビタミンB群 | 脳の代謝と神経伝達 | 豚肉、玄米、納豆、緑黄色野菜 |
鉄分 | 酸素運搬と神経伝達 | レバー、赤身の肉、ひじき、ほうれん草 |
小さな実践でもOK!
- 朝食に「ゆで卵+おにぎり+味噌汁」を意識してみる
- 甘い物が欲しいときは、ナッツやヨーグルトに切り替えてみる
- コンビニでも「たんぱく質」と「野菜」を1品ずつ選ぶ習慣をつける
対策3. 適度な運動 – 「動けない自分」に落ち込まないで
やる気が出ないときに「運動しろ」と言われると、逆に苦しく感じてしまうかもしれません。
でも、覚えておいてください。
運動は“やる気があるからする”ものではなく、“やる気を出すためにやってみる”ものでもあるんです。
科学的にわかっている「運動の心への効果」
- ウォーキングでセロトニンが分泌され、気分が安定しやすくなる
- 有酸素運動は脳の海馬(記憶や感情を司る部位)を刺激する
おすすめの運動の始め方
- 朝、駅まで一駅分歩いてみる
- 夜、3分だけストレッチするところから始めてみる
- 音楽をかけながら、軽く体を揺らすだけでも立派な第一歩
- 完璧を求めず、まずは「5分のリズム作り」から始めてみましょう
- 体内時計を整えることで、自律神経とホルモンバランスが安定し、自然とやる気が戻りやすくなる
- 脳のエネルギー源である栄養素(たんぱく質、ビタミンB群、鉄分)を意識して摂ることが大切
- 「軽い運動」だけでも神経伝達物質が活性化され、気分や集中力の回復に役立つ
症状が悪化する前に – カウンセリングや相談の活用も検討しよう
「こんなこと、相談していいのかな」「誰かに話すなんて、大げさに思われないかな」――
そう思って、つらさを胸の奥にしまい込んでいませんか?
でも、心が苦しいときに誰かを頼ることは、甘えではなく、自分を守るための立派な力です。
本章では、カウンセリングや相談を活用することがどんな助けになるのか、
その意味と実際の活用法を、やさしく、わかりやすくお伝えします。
1. 相談することは「勇気」であり「選択肢のひとつ」
人に相談することを「弱さ」と感じる方は少なくありません。
「自分で何とかしなきゃ」――そんなふうに、自分の気持ちを押し込めてしまうこともあるかもしれません。
でも、WHO(世界保健機関)によれば、メンタルヘルスの不調は、世界で最も身近な健康問題のひとつとされています。
また、厚生労働省の調査では、心の不調を感じてから相談するまでに平均6カ月以上かかっているというデータもあります。
「誰かに話す」という行為は、あなたが自分の感情に気づき、未来へ向かうための最初の一歩なのです。
それは、自分自身を責めるのではなく、「今の自分に必要なことは何か?」を考える行動でもあります。
2. カウンセリングとはどんなもの?
相談=アドバイスではなく、「整理の時間」

カウンセリングは、何か正解を提示される場ではありません。
むしろ、あなたの中にすでにある思いや考えに、ゆっくり耳を傾けるための時間です。
カウンセラーは、あなたの気持ちや経験を否定せずに受け止め、
一緒に「どこが苦しいのか」「何がひっかかっているのか」を探っていきます。
✅ たとえば、こんな会話が行われます:
クライアント:「最近、何をしていても楽しく感じられなくて……」
カウンセラー:「そうなんですね。少し前までは、何をしている時間が好きでしたか?」
こんなふうに、日常の会話のようなやりとりから、心の奥にある“自分でも気づいていなかった気持ち”に出会えることもあるのです。
3. カウンセラーと精神科医の違い
「誰に相談すればいいの?」と迷う方のために、ここで簡単に整理しておきましょう。
カウンセラー | 精神科医(医師) | |
---|---|---|
必要な資格 | 公認心理師・臨床心理士免許など | 医師免許(精神科専門) |
できること | 傾聴・心理療法・心の整理のサポート | 診断・薬の処方・医学的な治療 |
主な方法 | 対話(50分程度) | 問診 診察 必要に応じて薬物療法 |
臨床心理士と精神科医のちがいと使い分けのヒント
心の調子が悪いとき、「カウンセラーに相談するべき? それともお医者さん?」と迷うこと、ありますよね。
実は、臨床心理士(または公認心理師)と精神科医は、それぞれ得意なサポートの領域が少し違うのです。
それぞれの役割は下記になります。
臨床心理士/公認心理師(カウンセラー)-対話を通じて心を整理す。症状が軽い場合はこちら。
- 国家資格(または民間資格)を持った、心理支援の専門家
- 主に「対話を通じて心の整理や気づきを促す」サポートを行う
- 時間をかけて、「自分自身を理解する」「感情を言葉にする」お手伝いが得意
- 原則として薬の処方はできない
🔸 こんなときにおすすめ:
- なんとなくモヤモヤしている
- 誰かに話を聴いてもらいたい
- 自分の思考や感情を整理したい
- 人間関係のパターンやストレスの背景を見つめ直したい
精神科医・心療内科医 – 医学的に診断し、薬の処方ができる ※症状が重い場合はこちら
- 医師免許を持つ「心の不調を医学的に診断・治療できるお医者さん」
- 病名の診断や、必要に応じて薬の処方、休職の診断書の発行などが可能
- カウンセリング的な面談時間は短めなことが多い
🔸 こんなときにおすすめ:
- 睡眠が極端に乱れている(眠れない/寝すぎてしまう)
- 食欲が全くない、体重が急に落ちた
- 日常生活に支障が出ている(学校や仕事に行けない)
- 希死念慮がある(死にたい気持ちが強い)
🌼 どうやって使い分ければいいの?
カウンセラーとお医者さんの使い分けですが、
- まず話を聴いてほしい・整理したい → カウンセリングへ
- 症状がはっきりしていて、治療や診断が必要そう → 医師へ
…というふうに考えると分かりやすいです。
また、併用することもまったく問題ありません。
実際、多くの医療機関では「精神科医+臨床心理士」がチームで関わっており、薬による治療と、心のケアの両方を受けることができる体制も整っています。
- 相談は「弱さ」ではなく「心を守るための選択肢」
- カウンセラーは、心を整理し、自分らしさを取り戻すための伴走者
- まず話を聴いてほしい時は臨床心理士によるカウンセリング、逆に症状がはっきりしていて治療や診断が必要そうな場合は医師を頼ろう。
- つらさを感じた“今”が相談のベストタイミング。早めのケアが回復への近道
心がモヤモヤしており、精神科医に相談すべきか悩んでる人はこちら → 【専門家が解説】うつ・ストレスで悩んだら相談を|カウンセリングの進め方完全ガイド
終わりに
「やる気が出ない」「寝てばかりで何もできない」――それは、あなたが弱いからではありません。
きっと、今のあなたなりに精一杯頑張ってきたからこそ、心や体が休息を求めているのです。
すぐにすべてがうまくいかなくても大丈夫。
少しずつ、生活のリズムを整えたり、人に相談してみたり、
「できそうなこと」から始めるだけで、心は少しずつほぐれていきます。
どうか、あなたがご自身のペースで回復への道を歩めますように。
心から、応援しています。
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