つらい出来事があると、私たちの心は知らず知らずのうちに「ネガティブな考え」にとらわれてしまうことがあります。
「きっと私のせいだ」「うまくいかないに決まってる」……そんな思い込みが、さらに気分を落ち込ませてしまうのです。
こうした“自動思考”のクセに気づき、心の負担を軽くする方法として注目されているのが「3コラム法」です。
この記事では、心理療法のひとつである認知行動療法(CBT)の中でも、日常に取り入れやすい「3コラム法」について、
やさしく、わかりやすくご紹介していきます😊
ご自身の感情と向き合いながら、少しずつ心を整えていきましょう。
第1章|3コラム法とは?その基本概念と背景
「3コラム法」とは、自分の感情や考え方を整理するためのシンプルなフレームワークです。
「出来事」「自動思考」「合理的思考」の3つの視点から見直すことで、ネガティブに偏りがちな心の癖に気づきやすくなります。
まずは、この手法がどんな背景から生まれ、どんな場面で使われているのかを一緒に見ていきましょう。
3コラム法は「考え方のクセ」に気づくためのツール
3コラム法は、認知行動療法(CBT: Cognitive Behavioral Therapy)における基本的な技法のひとつです。
CBTは、「私たちの気分や行動は“考え方”に大きく影響される」という前提に立ち、
その“考え方(認知)”を見直していくアプローチです。
この中でも「3コラム法」は、感情に大きな影響を与える“自動思考”に気づくためのシンプルな書き出し技法です。
例えば、上司に注意されたときに「私はダメな人間だ」と感じてしまうとします。
その裏には「完璧でなければ価値がない」という思い込みがあるかもしれません。
こうした自動思考のパターンに気づくだけでも、感情の波に飲み込まれにくくなるのです。
3つのコラム(列)とは?基本の枠組みを解説
3コラム法では、以下のように3つの視点から状況を整理します:
コラム名 | 内容 | 例(上司に注意された場合) |
---|---|---|
① 状況(出来事) | その時に起こった出来事・場面 | 「会議で上司に資料のミスを指摘された」 |
② 自動思考 | そのとき頭に浮かんだ考え(反射的な思考) | 「私は仕事ができない」「また怒られた…」 |
③ 合理的思考 | 客観的・現実的に考えたときの思考 | 「誰でもミスはある」「次に活かそう」 |
このように、思考を書き出して可視化することで、
自分の感情の背景にある「思い込み」や「認知のゆがみ」に気づきやすくなります。
なぜ「自動思考」に気づくことが大切なのか?
私たちの心は、日々の感情や行動を“自動思考”に強く左右されていることが多くあります。
しかし、自動思考は非常に早く、無意識的に浮かぶため、気づかないまま感情が暴走してしまうことも。
たとえば、「電車で知人に挨拶されなかった」とき、
「無視された=嫌われている」と瞬間的に思い込んでしまう場合があります。
このような“自動思考”は、過去の体験や性格傾向、ストレス状態に左右されることが多く、
必ずしも現実とは一致しません。
3コラム法では、こうした思考パターンに“気づき”を与え、
それをより現実的な視点(合理的思考)へと再構成していくことで、
感情のコントロールやストレス軽減につながるのです。
認知のゆがみ(思考のクセ)にも目を向けてみよう
自動思考には「認知のゆがみ(Cognitive Distortion)」と呼ばれる偏った考え方のクセが潜んでいることがあります。
代表的なものには、以下のようなタイプがあります:
- 全か無か思考(白黒でしか考えられない)
- 自己関連づけ(何でも自分のせいにしてしまう)
- 過度の一般化(1度の失敗を“いつもそうだ”と思ってしまう)
こうした思考のクセに気づき、「本当にそうだろうか?」と立ち止まる習慣を身につけることが、
3コラム法を効果的に使う第一歩となります。
- 3コラム法は、認知行動療法の基本的な技法のひとつ
- 「出来事・自動思考・合理的思考」の3つの視点で思考を整理する
- 自動思考は感情に大きく影響し、認知のゆがみを含んでいることがある
- 書き出すことで、自分の考え方のクセに気づきやすくなる
3コラム法の概要を理解していただけたでしょうか?😊
次章では、実際にどのように「3コラム法」を使っていけばいいのか、
その具体的なやり方や記入のコツ、実例をもとに詳しく解説していきます。
初めての方でもすぐに始められるよう、やさしくお伝えしますのでご安心ください。
第2章|3コラム法の使い方:実践ステップと記入例
3コラム法は、とてもシンプルなフレームですが、やり方を間違えてしまうと「ただ書くだけ」で終わってしまうこともあります。
この章では、具体的な書き方やステップを、実際の記入例とともにご紹介していきます📝
初めての方でも、無理なく書き出せるように順を追って丁寧に解説しますので、ぜひ一緒に進めてみましょう。
ステップ①|「状況」を具体的に書き出す
まず最初に書くのは、「何があったのか?」という出来事(状況)です。
✅ ポイントは、できるだけ客観的・具体的に書くこと。
「上司に怒られた」よりも、「朝の会議で、プレゼン資料の誤字を指摘された」と書く方が、自動思考との因果関係が見えやすくなります。
📌例)
状況:「朝の営業会議で、資料の数値ミスを上司に指摘された。周りの同僚もその場にいた。」
ステップ②|頭に浮かんだ「自動思考」を書く
次に、その出来事を経験したときに、頭の中に瞬間的に浮かんだ考えをそのまま書き出します。これが自動思考です。
✅ 自動思考は、ネガティブであってもOK。むしろ正直に書くほど、自分の「思考のクセ」が見えやすくなります。
📌例)
自動思考:「私はやっぱり仕事ができない」「またみんなにバカにされたかもしれない」「ダメな人間だと思われた」
🧠 これは無意識に繰り返される「思い込み」や「認知のゆがみ」であることが多いのです。
ステップ③|合理的思考を書いてバランスをとる
最後に、「本当にそうなのか?」「他に考えられることは?」と問いかけながら、もう一つの視点=合理的思考を導き出します。
✅ これは、「前向きな考え」ではなく、「現実的で柔軟な考え方」を探すことが目的です。
📌例)
合理的思考:「確かにミスはあったが、すぐに修正できた」「誰にでもミスはあるし、責任を取って対応した」「今回のことで次はもっと確認しようと思えた」
🪶この合理的思考が、あなたの心を支える“現実的な声”になります。
実際の記入例(フォーマット付き)
以下は、3コラム法のフォーマットと記入例です。ノートやスマホメモでもOKです!
項目 | 内容 |
---|---|
【状況】 | 朝の営業会議で、資料の数字ミスを上司に指摘された。周りに同僚もいた。 |
【自動思考】 | 「私は仕事ができない」「みんなに呆れられたかも」「また評価が下がった」 |
【合理的思考】 | 「ミスはあったが、すぐに対応できた」「上司は冷静だったし、注意は指導の一環かも」 |
✅ このように書き出すことで、頭の中だけでグルグルしていた感情が少しずつほどけていきます。
書き方に迷ったときのチェックリスト
3コラム法を実践するとき、次のようなセルフチェックが役立ちます:
- 【状況】→「いつ」「どこで」「誰が」「何をした」が含まれているか?
- 【自動思考】→「〇〇だ」「〇〇された」といった決めつけ表現になっていないか?
- 【合理的思考】→「本当にそうだろうか?」「他の可能性は?」と問いかけたか?
- 3コラム法は「状況→自動思考→合理的思考」の順に書き出す
- 自動思考は否定せず、素直に書き出すことが大切
- 合理的思考は“ポジティブ”ではなく“現実的”な視点を意識する
- 書くことで感情が整理され、思考のクセに気づきやすくなる
3コラム法のやり方がつかめてきたでしょうか?✨
ここまでのステップを実践していくと、自分の考え方や感情の変化に少しずつ気づけるようになります。
次の章では、3コラム法がどのような心理的効果をもたらすのかを、実際の研究や臨床例をもとに詳しくご紹介します。
「なぜ効くのか?」が分かることで、継続するモチベーションも高まっていくはずです。
第3章|どんな効果があるの?実践による心理的変化
3コラム法を継続的に実践していくと、ただ気分が落ち着くだけでなく、思考や行動に深い変化が現れてくることがあります。
この章では、実際に報告されている心理的効果をもとに、「なぜ3コラム法が心に効くのか?」を、専門的な視点からやさしく解説していきます。
日常の中で感じるモヤモヤやストレスが、少しずつ“自分の力で整えられる”実感を持っていただけたら嬉しいです😊
自動思考に「気づく力」が高まることで感情が穏やかに
3コラム法を繰り返すうちに、日常の中でふとした瞬間に「今、自動思考が出たな」と気づけるようになります。
この“気づく力(メタ認知)”こそが、感情の暴走を止め、心の安定を促してくれるのです。
たとえば、「あの人に返信がない=嫌われている」という自動思考が出たときに、
「本当にそうだろうか?」「ただ忙しいだけかも」と立ち止まれることが、感情のエスカレートを防ぎます。
研究によっても、認知行動療法を継続している人は感情の自己調整力が高まる傾向にあることが報告されています。
認知のゆがみに気づき、思考の柔軟性が育まれる
多くの心理的なつらさは、「一面的な捉え方」によって強化されます。
たとえば、「うまくいかない=全部ダメ」と考える“全か無か思考”や、
「ひとつの失敗=自分は価値がない」と結びつけてしまう“自己関連づけ”などです。
3コラム法を使ってこうした思考のパターンにラベルを貼り、見直していくことで、
「他にも見方がある」「一度の失敗で決まるわけじゃない」といった認知の柔軟性が育っていきます。
この柔軟性は、ストレス場面や対人関係でも大きな力になります🌿
不安や抑うつの軽減に効果が報告されている
臨床の現場では、3コラム法はうつ病や不安障害の認知療法の初期段階でよく使われています。
ある研究では、3コラム法を含むCBTプログラムを週1回×8週間続けた結果、うつ症状の有意な軽減が確認されました。
もちろん、すべての人に同じような効果が出るわけではありませんが、
「自分の考え方を整理できる」「感情をコントロールできる」という体験は、
心理的な安定感をもたらし、自尊感情の回復にもつながります。
🧩症状の治療ではなく「自己理解とケアの手段」として3コラム法を用いることで、セルフヘルプにも有効に働くのです。
行動の変化にもつながる:回避から一歩踏み出せるように
3コラム法は、思考の変化だけでなく、日常の行動にもポジティブな影響を与えることがあります。
たとえば、「自分には無理だ」という自動思考にとらわれていた人が、
合理的思考を通じて「まずは小さなことから試してみよう」と行動できるようになる――
このように、思考の修正→感情の安定→行動の変化という連鎖が生まれてくるのです。
実際に、CBTではこの連鎖を「認知再構成→行動活性化」と呼び、
うつ状態からの回復や自己効力感の向上にも役立つとされています。
続けるほどに自己理解が深まり「心の習慣」が整っていく
最初は慣れない3コラム法も、続けるうちにだんだんと“思考を客観視する習慣”が育っていきます。
これはまさに、心のトレーニングといってよいでしょう。
「また同じパターンの思考が出てきたな」
「前よりも冷静に見られるようになってきた」
そんな“気づきの積み重ね”が、ストレスに強いこころ、揺れにくい自己感覚を支えてくれます。
- 自動思考への“気づき”が感情のコントロールにつながる
- 認知のゆがみを修正することで思考の柔軟性が育まれる
- 継続することで不安や抑うつの軽減に役立つ可能性がある
- 行動の変化や自己理解の深まりにもつながる
- 心のクセを整える“習慣化ツール”としても有効
ここまでで、3コラム法がどのように心に働きかけるのか、その効果を実感していただけたかと思います😊
ですが実際に書こうとすると、「うまく思考が出てこない」「合理的思考が浮かばない」などの壁にぶつかることもありますよね。
次の章では、3コラム法を継続するためのコツや、つまずきやすいポイントへの対処法を、やさしく解説していきます。
第4章|実践のコツとよくあるつまずき
3コラム法はシンプルな方法でありながら、心に大きな変化をもたらす力があります。
でも実際に取り組んでみると、「うまく書けない」「続かない」「合理的思考が出てこない」など、
つまずきを感じる場面も出てくるかもしれません。
この章では、そんなよくあるお悩みや挫折ポイントを取り上げながら、
無理なく続けるためのコツや工夫を、臨床の視点からやさしくご紹介していきます😊
「合理的思考が浮かばない…」という壁にぶつかったら
多くの人が最初に直面するのが、合理的思考がうまく書けないという壁です。
自動思考がネガティブで強いほど、それに対抗する合理的な視点を見つけるのは難しく感じられます。
そこでおすすめなのが、「もし友人が同じことを言っていたら、どう声をかけるか?」という視点の切り替えです。
他人の悩みに対しては自然と優しく現実的な視点が持てるもの。
それを“自分への思いやり”として使うことで、合理的思考を導きやすくなります。
📌例:
自動思考「私はダメな人間だ」
→ 友人への声かけ「一度のミスで全否定しないで。ちゃんと頑張ってるよ」
→ 合理的思考「ミスはしたけど、それだけで自分の価値が決まるわけじゃない」
感情が強すぎて書き出せないときは
怒りや不安、落ち込みが強いときには、冷静に状況や思考を振り返るのが難しいこともあります。
そんなときは、感情が少し落ち着いてから取り組むのが基本です。
また、以下のような工夫もおすすめです:
- 📖 「感情→思考」ではなく「状況→感情」から始める
→ まずは「どんな感情が出たか」だけでも書き出す - 🕯️ マインドフルネスや深呼吸を行ってから始める
→ 気持ちを落ち着けて、思考に向き合える状態にする - ✍️ “メモ書き”でざっくりでもOK
→ きっちり書こうとせず、ラフな言葉でまとめても大丈夫
3コラム法は完璧を目指すものではありません。自分の状態に合わせて柔軟に取り組んでみてください。
続かない人のための「習慣化のヒント」
「最初は頑張ったけど、続かなかった…」という声も多く聞かれます。
習慣として定着させるには、心理的・物理的ハードルを下げる工夫が有効です。
✅続けやすくする3つのポイント:
- 書く時間を決める:朝の5分、寝る前の5分などルーティン化
- フォーマットを固定する:ノートやスマホメモで書式を決めておく
- 1日1トピックだけ書く:たくさん書こうとせず、小さな1件に集中
🌟「たった1件でも“気づき”が得られたらOK」と思えると、気楽に取り組みやすくなります。
「自動思考すら浮かばない…」というケースには?
「考えてみたけど、何も思い浮かばない」「頭が真っ白になる」という方もいます。
これは、感情や思考を“感じる力”が一時的に鈍っていることが多く、ストレスや疲労のサインとも言えます。
そのようなときは、次のようなアプローチを試してみましょう:
- 🖼️ 出来事をイラストや図で表現してみる
→ 言葉が難しければ、ビジュアル化するだけでもOK - 🎧 音楽や日記、写真などを使って“感情の入り口”を探す
→ 気持ちが動くきっかけを見つけてみる - 🗣️ 誰かと対話する中で思考を言語化してみる
→ カウンセラーとのセッションなども有効です
💬「思考が浮かばない自分」もまた、ありのまま受け止めてあげましょう。
- 合理的思考が出てこないときは「友人への声かけ」をヒントに
- 感情が強すぎるときは、落ち着いたタイミングでOK
- 習慣化には「小さく・決まった時間・1件だけ」がコツ
- 書けない時期があっても大丈夫。無理せず向き合うことが大切
ここまでで、3コラム法に取り組む際のよくあるつまずきとその対処法をお伝えしました。
大切なのは、完璧を目指すことではなく、「今の自分とやさしく向き合うこと」です😊
次章では、3コラム法をより自然に日常へ取り入れていく方法や、
他のセルフケア技法との組み合わせについてご紹介していきます。
毎日の小さな習慣として、無理なく心のメンテナンスをしていくヒントを一緒に探してみましょう。
第5章|3コラム法を日常に取り入れる方法と応用
3コラム法を学び、いざ取り組もうと思っても「毎日は難しい…」「気づいたときにしか書けない」という方も多いかもしれません。
でも大丈夫。3コラム法は、ちょっとした工夫で自然に日常生活に溶け込ませることができます。
この章では、無理なく続けるための取り入れ方や、他のセルフケア技法との組み合わせ方についてご紹介します😊
ノートやスマホを活用した手軽な実践方法
3コラム法は紙でもデジタルでもOK。
ご自身の生活スタイルに合った方法で取り組めるのが魅力です。
📌おすすめの方法:
- 手帳の片隅にミニコラムを書く
- スマホのメモアプリでテンプレートを保存
- 音声入力で気づいたときに簡単に記録する
日常の小さな出来事にも応用しよう
3コラム法は、大きな悩みだけでなく、日常の些細なモヤモヤにも有効です。
📌たとえば:
- 電車で席を譲られなかった → 「無視されたかも」と思った
- SNSで「いいね」が少なかった → 「私はつまらない存在かも」
こうした瞬間にも、自動思考と合理的思考を使うことで、心がふわっと軽くなります🌤️
他のセルフケア技法との併用で効果アップ
3コラム法は、次のようなセルフケアと組み合わせると、より効果が高まります:
技法 | 特徴 |
---|---|
マインドフルネス | 今この瞬間の感情や思考に気づく習慣 |
ACT(アクセプタンス&コミットメント) | 感情を否定せず受け入れつつ行動を選ぶ |
ジャーナリング | 感情や出来事を自由に書き出す習慣 |
- ノート・スマホなど自分に合った方法で手軽に続けられる
- 小さな感情にも3コラム法を使うことで効果が実感しやすい
- 他のセルフケア技法と組み合わせることで相乗効果が期待できる
- 習慣化することで“心のしなやかさ”が育っていく
3コラム法は、「状況・自動思考・合理的思考」の3つの視点から、心の反応を見つめ直す認知行動療法の基本技法です。
ネガティブな思考のクセに気づき、柔軟な視点を育てることで、ストレスや不安を和らげることができます。
実践を続けることで、感情のコントロール力や自己理解が深まり、日常の小さな揺らぎにも冷静に対応できるようになります。
完璧にやろうとせず、自分に優しく、できる範囲で取り組むことが継続のカギです。
あなた自身の「こころのメンテナンス」として、3コラム法をぜひ取り入れてみてくださいね😊