「不安で胸が締めつけられる」「眠れないほど緊張してしまう」——そんなつらさに寄り添ってくれる薬として、多くの医療現場で処方されているのがベンゾジアゼピン系抗不安薬です。
この薬は、即効性があり心のつらさをすぐに和らげてくれる反面、使い方を間違えると依存や離脱症状といったリスクもあるため、正しい知識がとても大切です。
この記事では、薬の仕組みや種類、他の治療法との違い、安全な服薬・減薬の方法までを、医師監修のもと丁寧に解説していきます。
※本記事はファクトチェックを徹底しており、青字下線が引いてある文章は信頼できる医学論文への引用リンクとなっています。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬とは?|不安をやわらげるための「速効性のある薬」
どうして不安がつらくなるの?脳内メカニズムを簡単に
不安は本来、危険を察知し身を守るために必要な感情です。
しかし、その働きが過剰になると、日常生活に支障をきたすことがあります。
こうした「過剰な不安」には、脳内の神経伝達物質のバランスの乱れが関係しているとされています。
とくに注目されているのが、「GABA(ガンマアミノ酪酸)」という抑制系の神経伝達物質です。
GABAは、脳の活動を落ち着かせるブレーキの役割を担っており、これがうまく働かないと、神経が過剰に興奮し、不安感や緊張が強くなってしまいます。
扁桃体は恐怖や不安の処理を担う場所で、この部位が過敏になると、わずかな刺激にも「危険」と感じてしまうのです。
これらの神経活動のアンバランスが続くと、「全般不安症」「パニック症」「社会不安症」といった精神疾患につながることもあります。
ICD-11やDSM-5-TRでも、これらの症状は診断基準として位置づけられており、適切な治療が必要とされています。
ベンゾジアゼピン系とはどんな薬?不安を抑える仕組み
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、不安感や緊張、パニック症状を抑えるために使われる薬で、GABAの働きを高めることで神経の過剰な興奮を抑える作用があります。
この薬は、脳内のGABA-A受容体に結合してGABAの作用を増強します。
結果として、脳全体の活動が穏やかになり、心身の緊張が緩みます。
これは、ちょうど緊張した筋肉がほぐれるようなイメージに近いでしょう。
大きな特徴は「即効性」にあります。
多くのベンゾジアゼピン系薬は、服用から30分〜1時間ほどで効果が現れるため、急激な不安やパニック発作に対して特に有効です。
この即効性は、SSRIやSNRIといった他の抗不安薬では得られにくい特徴です。
ただし、依存性や耐性といった問題もあります。
長期間の使用によって、効きが悪くなったり、薬がないと落ち着かなくなってしまうこともあるため、治療には注意深い計画が求められます。
医師はこうしたリスクを踏まえ、最小限の量・最短の期間での処方を心がけています。

使われる症状|パニック障害、不安障害、不眠などへの処方理由
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、さまざまな精神症状に対して幅広く使われています。代表的なものは以下の通りです。
全般不安症(GAD)
慢性的な不安や心配が続く状態において、SSRIや認知行動療法と併用される形でベンゾジアゼピン系が使われることがあります。
主に症状が強い初期段階に使われ、落ち着いてきたら段階的に減薬する方針がとられます。
パニック症
突然の強い恐怖感や息苦しさ、動悸を伴う発作的な症状に対して処方されることが多く、頓服(必要なときだけ服用)として使用されるケースが一般的です。
社会不安症
人前で話すことが極度に苦手だったり、視線が気になって動悸や震えが起こるような場合にも処方されることがあります。
ただし、依存のリスクがあるため、長期使用には慎重さが求められます。
不眠症
睡眠薬としても使われることがあるのが、ベンゾジアゼピン系の特徴です。
入眠困難や中途覚醒といった症状を改善する目的で処方されることがありますが、睡眠の質を下げてしまう可能性があるため、近年は非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬に移行することも増えています。
その他のケース
一部のケースでは、急性ストレス反応や心的外傷後ストレス症(PTSD)に対して短期間使用されることもありますが、ガイドライン上はベンゾジアゼピンの使用は原則として推奨されておらず、リスクと利益を慎重に比較検討する必要があります。
特にPTSDにおいては、長期的な回復を妨げる可能性があるため、使用には厳格な管理が求められています。
- 不安は脳内のGABAなどの神経伝達物質と関係している
- ベンゾジアゼピン系抗不安薬はGABAの作用を高め、不安を緩和する薬
- 即効性があり、急性のパニックや不眠、不安発作に特に有効
- 長期使用には依存や離脱のリスクがあり、医師との連携が重要
- PTSDや急性ストレス反応に対する使用には慎重な判断が必要
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、つらい不安を一時的に和らげるための有効な手段ですが、具体的にどのような種類があるのでしょうか?
作用時間の違いや、よく使われる代表的な薬の特徴について、次の章でわかりやすくご紹介します。
具体的な薬の種類と特徴|服用の時間帯で異なる選び方
一口に「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」と言っても、実はさまざまな種類があり、作用時間や効果の強さ、副作用の出やすさなどに違いがあります。
処方の目的や生活スタイルによって、選ばれる薬も変わってくるため、特徴を知っておくことはとても大切です。
ここでは、代表的な薬の分類と、それぞれが使われる場面について詳しく見ていきましょう。
作用時間で分ける:短時間・中間・長時間タイプ
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、「どのくらい早く効いて、どのくらい持続するか」によって、大きく3つのタイプに分けられます。
それぞれの特徴を理解することで、症状やライフスタイルに合った使い方がしやすくなります。
短時間作用型(半減期6時間未満)
代表例:デパス(エチゾラム)
即効性に優れ、急な不安や緊張、不眠に使われることが多いです。
作用が早く切れるため、日中の活動に影響を与えにくい一方で、切れ際に不安がぶり返す「リバウンド」や「離脱症状」が出やすい側面もあります。
中間作用型(半減期6〜24時間程度)
代表例:ソラナックス(アルプラゾラム)、ワイパックス(ロラゼパム)
1日2〜3回の服用で安定した血中濃度を保ちやすく、全般性不安症(GAD)や社会不安症(SAD)などの慢性的な不安への継続使用に適しています。
急な不安にも対応しつつ、持続性があるため「頓服+継続」の中間的な役割を果たします。
長時間作用型(半減期24時間以上)
代表例:セルシン(ジアゼパム)、メイラックス(ロフラゼプ酸エチル)
持続性に優れ、血中濃度が安定することで不安の波を抑えやすく、慢性の不安状態や断酒補助(アルコール依存症の離脱予防)にも使用されます。
作用が長い分、眠気やふらつきが翌日に残ることもあり、特に高齢者には注意が必要です。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬の比較表
どの薬にもメリットとリスクがあるため、「強さ」だけで選ばず、症状や生活スタイルに合わせた処方が大切です。
以下に、代表的な抗不安薬を比較した表を載せました。
医師と相談する際の参考にしてください。
薬剤名 (商品名) | 作用時間 | 依存性リスク | 催眠作用の強さ | 抗不安作用の強さ | 筋弛緩作用の強さ |
---|---|---|---|---|---|
エチゾラム (デパス) | 短時間 | 高い | 強い | 強い | 弱い〜中程度 |
アルプラゾラム(ソラナックス) | 中時間 | 非常に高い | 中程度 | 強い | 弱い |
ロラゼパム (ワイパックス) | 中時間 | 高い | 強い | 強い | 弱い〜中程度 |
ジアゼパム (セルシン) | 長時間 | 高い | 弱い | 中程度 | 強い |
ロフラゼプ酸エチル (メイラックス) | 長時間 | 中程度 | 弱い | 強い | 中程度 |
代表的な薬の解説(ソラナックス・ワイパックス・デパスなど)
それぞれの薬には、成分だけでなく「どんな不安に向いているか」「副作用の出方」などに特徴があります。
代表的な薬剤をいくつかピックアップしてご紹介します。
エチゾラム(デパス)
日本で長く使われてきた短時間作用型の薬で、急性不安や不眠に対して非常によく効きます。
ただし、依存性や乱用のリスクが高く、海外では使用が規制されている国もあります。
国内の添付文書でも「漫然投与を避けること」が注意喚起されており、適応を慎重に判断し、使用期間を限定することが望ましいとされています。
アルプラゾラム(ソラナックス)
中間作用型で、即効性と持続性のバランスが良く、全般性不安症やパニック症に多く用いられます。
依存形成のリスクが比較的高いとされるため、短期間での使用が基本です。
ロラゼパム(ワイパックス)
こちらも中間作用型で、安定した抗不安作用があります。
不安だけでな筋弛緩作用もあるため身体症状を伴う不安に処方されることがあります。
また、肝代謝にあまり依存しないため、肝機能が低下している高齢者にも使われやすい薬です。
セルシン(ジアゼパム)
アルコール離脱症状への使用や、全般不安症など、一定の安定した抗不安作用を求められるケースで処方されます。
メイラックス(ロフラゼプ酸エチル)
非常に長い半減期を持つ薬で、1日1回の服用でも安定した効果が続きます。
長時間作用型であるため、血中濃度の変動が少なく、離脱症状が比較的生じにくいとされる報告もありますが、エビデンスは限定的で現時点で決定的な証拠はありません。
効果が残りやすい分、翌日に眠気を持ち越すリスクもあり、運転などには注意が必要です。
処方のされ方と服用方法(就寝前・頓服・持続投与など)
同じ薬でも、「いつ」「どんな形で」飲むかによって、効果の感じ方やリスクの管理に差が出てきます。
ここでは、よくある処方パターンを見ていきましょう。
頓服(必要なときだけ飲む)
「発作が出たときにだけ飲む」スタイルで、パニック症や社交場面での不安など、急に強い症状が出るタイプの人に処方されることが多いです。
即効性のある短時間作用型(例:アルプラゾラムやエチゾラムなど)が選ばれる傾向があります。
これらは服用後30分〜1時間以内に効果が現れることが多く、急な不安への対応に適しています。
ただし、長期的な不安障害の治療としては、頓服の使用は第一選択ではなく、必要最小限にとどめるのが一般的です。
継続服用(1日2〜3回)
全般性不安症など、日中も不安症状が持続するケースでは、一定の血中濃度を保つ目的で1日2〜3回に分けて内服する方法が選ばれます。
このような場合には、中間作用型(例:ロラゼパム、アルプラゾラム)や長時間作用型(例:クロナゼパム、ジアゼパム)が用いられることが多いです。
就寝前のみの服用
入眠困難や中途覚醒といった睡眠障害に対して処方される場合、就寝前のみの服用になることが多いです。
鎮静作用の強い短時間〜中間作用型の薬剤(例:ブロチゾラム、トリアゾラムなど)が用いられることが多いです。
中には、抗不安薬の効果と睡眠導入の効果の両方を期待して選ばれる薬もあります。
状況に応じて変更されることも
たとえば、日中の活動に支障がある場合は「眠気が出にくい薬」へ切り替えたり、逆に夜間に不安が強い人には「作用時間が長いタイプ」へ変更されることもあります。
処方内容は常に固定ではなく、症状や生活に応じて柔軟に調整されるのが理想です。
- ベンゾジアゼピン系抗不安薬は作用時間により短・中・長時間型に分類される
- 薬の選択は、不安の種類や生活リズムに応じて決まる
- ソラナックス・ワイパックス・デパスなど、各薬には特有の作用とリスクがある
- エチゾラム(デパス)は添付文書で漫然投与の回避が求められている
- メイラックスは離脱症状が比較的出にくいとされるが、エビデンスは限定的
- 処方パターン(頓服・定時服用・就寝前)によって服薬の目的も変わる
ベンゾジアゼピン系抗不安薬には多くの種類があり、使用方法によって効果や副作用の出方も変わってきます。
次の章では、「ベンゾジアゼピン系薬のメリットと注意点」について、より具体的に解説していきます。
ベンゾジアゼピン系薬の離脱症状と副作用 – 妊婦や高齢者の利用について
「ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、つらい不安をすぐに和らげてくれる心強い薬です。
しかし、その一方で、依存性や副作用といったリスクがあることも事実です。
ここでは、薬の「良い面」と「注意すべき面」の両方を正しく理解し、安全に向き合うための知識を整理していきましょう。
依存性と耐性|長期服用に潜む落とし穴
効果が高いぶん、気をつけたいのが依存性と耐性です。
ベンゾジアゼピン系薬を長期間使い続けると、体が薬に慣れてしまい、同じ量では効きにくくなる(耐性)、薬をやめると強い不安や不眠が出る(身体的依存)という状態が生じることがあります。
とくに、短時間作用型は、薬が切れたタイミングで反跳性の不安や不眠が現れやすく、無意識のうちに「また飲まないと不安になる」というサイクルに陥りがちです。
心理的な依存も大きな問題です。
「薬がないと外に出られない」「人と会えない」といった不安から、本人の意思とは関係なく、薬に頼る癖がついてしまうこともあります。
そのため、ベンゾジアゼピン系薬は最小限の量で、最短期間で使うことが治療方針の基本です。
特に慢性不安に対しては、SSRIや認知行動療法などの根本的な治療との併用が推奨されています。
離脱症状とは?やめたときに出る不調の正体
「そろそろ薬をやめよう」と思っても、すぐに中止するのは危険です。ベンゾジアゼピン系薬を急にやめると、離脱症状(withdrawal symptoms)と呼ばれるさまざまな不調が出る可能性があります。
代表的な離脱症状には以下のようなものがあります:
- 自律神経過活動(発汗または心拍数増加)
- 手の振戦(細かいふるえ)
- 不眠
- 悪心または嘔吐
- 一過性の幻視、錯覚、または錯誤
- 精神運動性の興奮
- 不安
- 全身性けいれん発作
これらの症状は、「薬をやめたことによる反動」であり、依存の有無にかかわらず起こりうるものです。
特に長期間服用していた場合や、短時間作用型の薬を使用していた場合には、リスクが高くなります。
離脱症状を防ぐためには、医師の指導のもとで少しずつ減薬することが基本です。
数週間〜数か月かけて慎重に進める必要があります。
突然やめることは絶対に避け、自己判断での断薬は控えるようにしましょう。
副作用の種類と対処法(眠気・ふらつき・認知機能への影響など)
ベンゾジアゼピン系薬は、多くの方にとって安全性の高い薬ではありますが、副作用が全くないわけではありません。
とくに以下のような症状には注意が必要です。
眠気・倦怠感
最も多く見られる副作用です。
日中の眠気や集中力の低下につながるため、運転や機械操作を行う方は注意が必要です。
ふらつき・転倒
高齢者では転倒リスクが高まり、骨折などの重大な事故につながることがあります。
作用時間の長い薬や、服用時間を就寝前にするなど、使い方の工夫が重要です。
認知機能への影響
長期使用により、記憶力の低下や判断力の鈍化が報告されています。
特に高齢者では認知症との鑑別が難しくなるケースもあるため、漫然と使い続けないことが大切です。
高齢者・妊娠中・基礎疾患がある場合の注意点
ベンゾジアゼピン系薬は、すべての人に同じように使える薬ではありません。
年齢や健康状態、ライフステージによって注意すべきポイントがあります。
高齢者の場合
加齢により肝機能や腎機能が低下すると、薬が体に残りやすくなり、眠気・ふらつき・転倒のリスクが上がります。
また、長期使用によって認知機能の低下やせん妄のリスクも報告されています。
そのため、高齢者では
- 短時間作用型ではなく、より穏やかな薬を選ぶ
- 投与量をできるだけ少なくする
- 就寝前の単回投与に限定する
など、慎重な対応が求められます。
妊婦・妊娠中の方は必要に応じ最小用量・最短期間で使用
妊娠中のベンゾジアゼピン系薬剤の使用は、慎重な判断が必要です。
大規模な研究では催奇形性のリスクが微増するなどの報告もあり、流産や児の呼吸器疾患、帝王切開率の上昇との関連が示唆されています。
また、妊娠後期から出産直前の使用では、新生児に離脱症候群(不機嫌、過敏、哺乳困難など)が起こる可能性があります。
これらのリスクを踏まえ、使用が必要な場合は非妊娠時と同様、最小限の用量・期間での対応が望まれます。
授乳中の方:短時間作用型(例:ロラゼパム)は専門家の管理下で比較的安全
授乳中のベンゾジアゼピン系薬剤の使用は、薬剤により母乳への移行量や子供への影響が異なります。
一般に短時間作用型や血中濃度が低くなる薬剤は比較的安全とされますが、ジアゼパムのような長時間作用型では、児の傾眠や哺乳不良などが報告されており注意が必要です。
母乳育児を継続するためには、必要最小量での使用、授乳直後の内服、夜間授乳の工夫などが有効です。
自己判断での中止や継続は避け、専門家の指導を受けながら対応しましょう。
基礎疾患がある場合
- 肝疾患:薬の代謝が遅れ、副作用が強く出やすくなります。代謝経路が異なる薬(例:ロラゼパムなど)への変更が検討されることがあります。
- 呼吸器疾患(COPDなど):ベンゾジアゼピンは呼吸抑制を起こす可能性があるため、慎重に使う必要があります。
- ベンゾジアゼピン系薬は、即効性があり急性の不安や発作に効果的
- 一方で依存性や耐性がつきやすく、長期使用には慎重さが必要
- 離脱症状は自己判断での断薬により強く出ることがある
- 副作用には眠気・ふらつき・認知機能の低下などがあり、特に高齢者や妊婦・授乳中は注意
- 医師と相談しながら、用量・期間を調整して使用することが重要
このように、ベンゾジアゼピン系薬は「効く薬」だからこそ、使い方には十分な注意が必要です。
では、ほかの薬や心理療法とはどう違い、どのように組み合わせていくとよいのでしょうか?
次の章では、「他の治療法との違いと併用のポイント」について解説していきます。
他の治療薬や治療法とどう違う? CBTによる薬に頼りすぎない選択肢
不安な気持ちがつらいとき、薬は心を一時的に楽にしてくれる大きな助けになります。
しかし、薬だけに頼ることに不安を感じる方も少なくありません。
そこで知っておきたいのが、他の治療法との違いや併用の可能性です。
この章では、SSRIやSNRIといった抗うつ薬との比較や、認知行動療法(CBT)との組み合わせ、さらに漢方薬や睡眠薬との併用についても解説していきます。
SSRIやSNRIとの違い|効果の持続性と依存性の比較
ベンゾジアゼピン系抗不安薬とSSRI・SNRIは、作用機序も性質も大きく異なります。
それぞれの特性を理解することで、より適切な治療選択がしやすくなります。
即効性 vs 持続性
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は即効性に優れ、服用後30分〜1時間で効果が現れます。
これに対し、SSRIやSNRIは脳内のセロトニンやノルアドレナリンの濃度を調整することで作用し、効果が現れるまでに2〜4週間程度かかるのが一般的です。
一時的な緩和 vs 長期的な改善
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は主に「今つらい不安を抑える」ための薬である一方、SSRIやSNRIは不安そのものの感受性を長期的に改善する効果が期待されます。
このため、慢性的な不安症状にはSSRI・SNRIが第一選択とされることが多いです(特にGAD、社交不安症、パニック症など)。
こうした違いから、ベンゾジアゼピン系は短期間・補助的な使用に限定されるのに対し、SSRIやSNRIは長期的な不安管理の柱として使われる傾向があります。
心理療法(認知行動療法:CBT)との併用が効果的な理由
不安障害の治療では、「薬だけでなく、心の癖にもアプローチする」ことが大切です。
そのために非常に有効とされているのが、認知行動療法(CBT:Cognitive Behavioral Therapy)です。
CBTは、思考(認知)と行動のパターンに着目し、不安を生み出している考え方の癖や行動パターンを少しずつ変えていく治療法です。
薬のように即効性はありませんが、以下のような点で大きな効果があります。
- 再発予防につながる:不安の背景にある思考習慣を変えることで、同じ状況でも心が揺れにくくなります。
- 薬を減らしやすくなる:CBTにより自力で不安をコントロールできるようになることで、減薬のタイミングが見えてきます。
- 副作用がない:薬のような身体的リスクがなく、安全に進めることができます。
特に、全般性不安症・社交不安症・パニック症においては、CBTと薬物療法の併用がエビデンス上最も効果的とされています。
医師や臨床心理士との連携のもと、自分に合った治療法を探ることが大切です。
- ベンゾジアゼピンは即効性があり、SSRIやSNRIは長期的な改善を目指す薬
- ベンゾジアゼピン系は依存性があり、SSRIやSNRIは依存性が少ないが中止時に離脱症状が出ることがある
- 認知行動療法(CBT)は薬と併用することで治療効果・再発予防に役立つ
減薬の方法・進め方について
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、正しく使えば非常に効果的な薬です。
ただし、「いつまで飲み続けていいのか」「やめるタイミングはいつか」など、服薬を続けていると不安になる場面も出てくるかもしれません。
ここでは、安全に薬と付き合うために知っておきたいポイントや、減薬を考えるときの注意点についてお伝えします。
自己判断での断薬・減薬が危険な理由
「もう効いている感じがしないからやめよう」
「最近調子がいいから飲むのをやめても大丈夫だろう」
――そう思って自己判断で薬をやめる方も少なくありません。
しかし、ベンゾジアゼピン系抗不安薬の場合、急な断薬や減薬は非常に危険です。
ベンゾジアゼピンは脳内のGABA-A受容体に働きかけて不安を抑えていますが、長期間使用すると脳がこの状態に慣れてしまいます。
そのため、急に薬をやめると神経の興奮が一気に高まり、強い離脱症状や反跳性の不安、不眠などが出てくる可能性があります。
特に以下のようなケースでは、リスクが高くなります。
- 長期にわたり毎日服用している場合
- 短時間作用型(例:エチゾラムなど)を使用している場合
- 過去に離脱症状を経験したことがある場合
また、一見「再発」や「体調悪化」に見える症状が、実は離脱症状であることも多く、自分自身では区別が難しい場合もあります。
こうしたリスクを避けるためには、必ず医師と相談して減薬のタイミングを決めることが大切です。
医師と相談しながら行う減薬のステップと注意点
減薬は「ただ量を減らせばいい」という単純なものではなく、個人の症状・服薬歴・体質・生活状況などを踏まえた慎重な計画が必要です。
以下は、医療現場で一般的に行われている減薬のステップの一例です。
1. 症状の安定を確認する
まずは、不安や不眠といった症状がある程度落ち着いていることが前提です。
不安定な時期に減薬を始めると、再発のリスクが高まります。
2. 少量ずつ、段階的に減らす
1〜2週間ごとに、全体の10〜25%程度ずつ減らす方法が多く用いられます。
減量スピードは人によって異なり、無理のない範囲で調整していくことが重要です。
3. 長時間作用型への切り替えを検討することも
短時間作用型の薬は離脱症状が強く出やすいため、長時間作用型の薬に置き換えた上で、よりゆっくりと減薬を進めることもあります(例:エチゾラム→ジアゼパム)。
4. 減薬中の症状を記録・共有する
離脱症状や不調が出た場合は、医師とその都度相談しながら減薬ペースを調整します。
無理に続ける必要はなく、時には一時中断や維持に戻すこともあります。
5. 心理的なサポートや生活の安定も大切
薬だけに頼らないためには、認知行動療法(CBT)やストレスマネジメントといった心理的支援も減薬の成功を後押しします。
- 自己判断での断薬・減薬は離脱症状や再発を招くため危険
- 減薬は医師と相談し、段階的かつ柔軟に進めることが重要
- 長時間作用型への切り替えや心理的支援が効果的な場合もある
- 無理のない計画と信頼できる医療チームとの連携が安全の鍵
【本記事のまとめ】
不安や緊張に悩むとき、薬の助けを借りることは決して悪いことではありません。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、つらい気持ちを和らげてくれる大切な選択肢のひとつです。
即効性があり、短期間で生活の立て直しを支えてくれることも多く、特に急性期には強い味方になってくれるでしょう。
ただし、使い方には注意が必要です。依存や離脱症状、認知機能への影響など、知らずに使い続けることで別の苦しさを抱えるリスクもあるからです。
そのためには、医師との信頼関係を大切にしながら、薬に頼りすぎず、心理的な支援や生活習慣の見直しも取り入れることが大切です。
あなたの「つらい気持ち」を理解しながら、「安心して治療に向き合える環境」をつくることが、何より大切な第一歩です。この記事がその一助となれば幸いです。
- ベンゾジアゼピン系抗不安薬は即効性があり、急性の不安に有効
- 長期使用では依存や離脱症状のリスクがあるため、慎重に使うことが大切
- 減薬は医師と相談しながら、段階的に行うのが基本
- 高齢者・妊娠中・持病がある方は特に慎重な対応が必要
- 認知行動療法(CBT)やSSRIとの併用で多面的なケアを目指す