私たちが日々感じる不安や落ち込みの背景には、「自動思考」と呼ばれる心のつぶやきが潜んでいます。たとえば、誰かに否定されたとき、「自分はダメだ」と感じることはありませんか?
そんなときに役立つのが、認知行動療法(CBT)の中でも特に有名な「5コラム法」です。自分の思考・感情・行動のつながりを丁寧に見つめ直すことで、心のクセに気づき、より柔軟な捉え方ができるようになります。
本記事では、初心者の方にもわかりやすく、5コラム法の基本から実践例までを丁寧に解説します😊
認知行動療法(CBT)とは?
認知行動療法(CBT)は、「出来事 → 思考(認知)→ 感情 → 行動」が互いに影響し合うという考え方に基づいています。
たとえば、「上司に注意された(出来事)」という出来事に対して、「自分は役立たずだ(自動思考)」という思考が浮かべば、「恥ずかしい、悲しい(感情)」といった反応が起き、結果的に「報告が怖くなる(行動)」というように、日々の行動に影響を与えてしまいます。
同じ出来事が起きたのに、人によって感じ方が全然ちがう――
「上司に注意された」という出来事があったとしても、
ある人は「また怒られた。自分はダメなやつだ……」と落ち込みます。
一方で、別の人は「なるほど、ここを直せばもっとよくなるんだな。成長のチャンスかも」と前向きに受け止めます。
この違いは、性格のせいでしょうか?
もちろんそれもあるかもしれませんが、実はその背景には、“出来事の捉え方=思考”が大きく影響しています。
認知行動療法では、この「思考」に注目します。
もっと正確に言うと、私たちが日々何気なく抱いている「自動思考」と呼ばれるものに気づき、それを見つめ直すことで、感情や行動のパターンを柔軟に変えていく方法です。
「自動思考」という言葉は聞き慣れないかもしれませんが、これは、ある出来事があったときに、瞬間的に頭に浮かぶ考えやイメージのことです。
たとえば、メールの返信が来なかったときに「無視されたかも」と思ったり、誰かに挨拶して返ってこなかったときに「嫌われたのかも」と感じたり。
こうした反応は、まさに自動思考の例です。
こうした考えは無意識に浮かぶので、私たちはふだん意識することがありません。
でもこの自動思考が、私たちの「感情」や「行動」にとても大きな影響を与えています。
CBTでは、「出来事 → 自動思考 → 感情 → 行動」という心の中の流れに注目します。
たとえば、先ほどの例で言えば:
出来事:「上司に注意された」
自動思考:「自分はダメだ」
感情:「悲しさ、落ち込み」
行動:「仕事に消極的になる」
このように、思考が感情を生み、感情が行動に影響する――それが認知行動療法の考え方の基本です。
一方で、こうも考えられます。
出来事:「上司に注意された」
自動思考:「今後に活かせばいい。成長の機会だ」
感情:「前向きな気持ち」
行動:「改善のために行動する」
同じ出来事でも、自動思考が変われば、感情も行動もまったく違う方向に進みますよね。
ここで大切なのは、「どちらが正しいか」ではなく、「自分がどんな思考のクセを持っているのかに気づくこと」です。
私たちの思考には、長年の経験や育ってきた環境によって身についたクセがあります。
そのクセが、自分を責めたり、悲しくさせたりしていることもあるんです。
でも、認知行動療法の良いところは、自分の思考に気づくことができれば、少しずつ変えていけるという点です。
たとえば、「ダメな自分だ」と思ったとき、「本当にそうかな?」「前はうまくいったこともあったよね」と、別の見方ができるようになれば、感情も行動も変わっていきます。
自動思考とは?あなたの中の“瞬間的なつぶやき”
「自動思考」とは、何か出来事が起こった瞬間に、無意識に浮かぶ言葉やイメージのことです。たとえば、「ミスをしてしまった」ときに、「なんでいつもこうなんだ…」というような声が頭の中で再生されたことはありませんか? それが自動思考です。
この自動思考は、幼少期の経験やこれまでの価値観から無意識に形成されたもので、自分でも気づかないうちに私たちの気分や行動を左右しています。5コラム法は、この「自動思考」に気づき、そこから一歩離れて見直すための方法です。
5コラム法の基本構造とは?
「5コラム法」は、以下の5つのステップで構成されます。
コラム | 内容 |
---|---|
第1コラム | 出来事(いつ、どこで、何が起きた?) |
第2コラム | 自動思考(瞬間的に浮かんだ言葉やイメージ) |
第3コラム | 感情(どんな気持ち?強さは?) |
第4コラム | 合理的思考(別の見方、根拠のある視点) |
第5コラム | 結果の感情(気持ちはどう変化したか) |
このように、5つの視点から一つの体験を丁寧に見つめ直すことで、思考のバランスを整え、感情や行動への影響を和らげていくことができます。
頭の中で考えているだけでは、自動思考はすぐに流れてしまいます。しかし、紙やノートに書き出すことで、思考を“客観的に見る”ことができます。これが、認知の歪みに気づく第一歩です。
実際、臨床の現場でも「5コラム法を毎日やっているうちに、自動思考が自然と見えるようになってきた」という声はよく聞かれます。また、書き続けるうちに、自分の思考パターンに「クセ」があることにも気づけるようになります。
5コラム法は、特定の精神疾患を抱える人だけでなく、日常生活のストレスや不安を感じやすい人にも有効です。
- 人間関係でモヤモヤしたとき
- 仕事の失敗で落ち込んだとき
- 過去の出来事を引きずっているとき
- 将来への不安で動けなくなっているとき
など、幅広いシーンで活用できます。使い方さえ知っていれば、心のセルフケアツールとして誰でも取り入れられるのが大きな魅力です🧠✨
- 「5コラム法」は認知行動療法の代表的な技法のひとつ
- 出来事→思考→感情→行動という心の流れを整理する枠組み
- 自動思考に気づくことで感情のコントロールがしやすくなる
- 書くことで客観的に自分を見つめ直すことができる
- 誰でも日常的なストレスへのセルフケアとして活用できる
第1章では、5コラム法の全体像とその意義についてご紹介しました。では、実際に自分で5コラム法をやってみたいと思ったとき、どうやって始めればよいのでしょうか?
次章では、5つのステップをひとつずつ丁寧に解説しながら、記入のポイントやよくあるつまずきについてもご紹介していきます✍️ ぜひ、ノートやメモを用意して、一緒に実践していきましょう!
第2章:5コラム法の5つのステップと具体的な書き方
5コラム法の全体像が見えてきたところで、次は実際のやり方をステップごとに確認していきましょう。いざ書こうとすると「これで合っているのかな?」「何を書けばいいの?」と迷う方も多いです。
この章では、5つのコラムそれぞれの意味や記入のコツ、注意点をわかりやすく解説していきます📝 初めてでも安心して取り組めるよう、実際の記入例や感情の強さの目安も交えてお伝えします。
第1コラム:出来事(事実を整理する)
最初のステップでは、「いつ」「どこで」「誰と」「何が起こったのか」といった“客観的な事実”を書き出します。ここでのポイントは、「評価」や「感想」を含めず、起こったことを淡々と描写することです。
✅ 記入例
6月5日、職場での定例ミーティング中に、上司から進捗の遅れについて注意された。
🟡 注意点
- 「怒られた」と書くより「注意された」と事実ベースで記述
- 状況を細かく書くことで、思考や感情の振り返りがしやすくなります
第2コラム:自動思考(心に浮かんだ瞬間のつぶやき)
ここでは、出来事が起きた瞬間に頭に浮かんだ「自分の内なる声」をそのまま書き出します。これは無意識に出てくる言葉やイメージであり、感情の引き金になるものです。
✅ 記入例
「やっぱり自分はダメだ」「皆の前で恥をかいた」「また信頼を失ったかも」
🟡 記入のコツ
- 文章でなくてもOK。「単語」や「映像イメージ」でも可
- 遠慮せず“素直な心の声”をそのまま書くことが大切
- いくつか浮かんだ場合は複数記入してOK
第3コラム:感情(気持ちの種類と強さ)
ここでは、自動思考によって引き起こされた「感情」を明確にします。人は思考を通して感情を抱くため、ここを丁寧に整理することで気づきが深まります。
✅ 記入例
悲しい(80%)、恥ずかしい(60%)、不安(70%)
🟡 チェックポイント
- 感情と評価は分けて考える:「情けない」は評価であり、「悲しい」「恥ずかしい」が感情
- 数字で“強さ”を書くと、変化が可視化しやすくなる
- 「モヤモヤ」などの言葉も、自分がしっくりくるならOK
📋 感情ラベルの一例
感情カテゴリ | 例 |
---|---|
不安系 | 不安、緊張、恐れ |
怒り系 | 怒り、苛立ち、悔しさ |
悲しみ系 | 落ち込み、悲しみ、虚しさ |
喜び系 | 安心、嬉しさ、感謝 |
第4コラム:合理的思考(別の見方に目を向ける)
ここが5コラム法の核心部分です。ここでは、浮かんだ自動思考をいったん「本当にそうだろうか?」と問い直し、別の見方・合理的な視点を書き出します。
✅ 記入例
「進捗は遅れていたけど、毎日残業して頑張っていた」
「他の人も指摘されることはある。自分だけではない」
「上司の意図は責めることではなく、改善のためのフィードバックだったのかも」
🟡 ポイント
- ポジティブ思考ではなく“現実的・客観的”に見ることが大切
- 「証拠はあるか?」「他の人ならどう考えるか?」と自問してみましょう
- 自分を責めるパターンが強い人ほど、事実に基づいた視点が効果的
🧠 合理的思考を導く問いの例
- 本当に100%そう言える?
- その考えに反する証拠はある?
- 友人が同じ立場なら、どう声をかける?
第5コラム:結果の感情(変化を確認する)
最後は、合理的思考に触れた後の“感情の変化”を記録します。どれだけ変化したか、どのように気持ちが和らいだかを数字や言葉で記入します。
✅ 記入例
不安(70%→40%)、恥ずかしさ(60%→30%)、少し安心した
🟡 ここでの気づき
- 完全に感情が消えなくてもOK。少しでも変化すれば意味があります
- 自分の思考パターンに気づき、感情の波に飲まれにくくなる
- 5コラム法は5つの段階で思考・感情・行動を整理する手法
- 自動思考と感情を切り分けることで、気分の浮き沈みに気づきやすくなる
- 合理的思考を通じて「別の捉え方」を見つけることが可能
- 感情の変化に注目することで、自己理解が深まる
- 続けるうちに、自分の思考パターンに対する“気づき力”が養われる
5つのステップをひとつずつ確認しながら進めると、少しずつ自分の思考や感情のパターンが見えてきます。でも、いざ実践してみると「うまく書けない」「例が欲しい」と感じる方も多いはず。
次章では、実際の記入例をもとに、5コラム法をどのように書けばよいか、2つのケースを通じて具体的にご紹介していきます🧾
ぜひご自身の経験と重ね合わせながら読み進めてみてください。
第3章:実践例で学ぶ!5コラム法の記入例とポイント
「頭ではわかったけど、実際に書くのは難しい…」──これは、5コラム法に取り組む多くの人が感じる最初の壁です。でも、いくつかの実例を見ることで、自分の中の思考や感情も整理しやすくなります。
ここでは、よくあるシチュエーションをもとに、5コラム法をどのように記入するのかを2つのケースでご紹介します。書き方のコツや、初心者がつまずきやすいポイントにも触れながら解説します📖✨
ケース1:仕事のミスで落ち込んだとき
状況(第1コラム)
6月5日、社内ミーティング中に、自分の担当業務のミスが上司から指摘された。
自動思考(第2コラム)
「またやってしまった…」
「自分は社会人として失格だ」
「もう信頼されないかもしれない」
感情(第3コラム)
・恥ずかしさ(80%)
・不安(70%)
・悲しさ(60%)
合理的思考(第4コラム)
「確かにミスはあったが、初めての業務で手探りだった」
「誰にでもミスはあるし、改善のチャンスともいえる」
「上司も“次から気をつけて”と言っていただけで、責めていたわけではない」
結果の感情(第5コラム)
・恥ずかしさ(80%→50%)
・不安(70%→40%)
・悲しさ(60%→30%)
→ 少し気持ちが楽になった。次は気をつけようと思えるようになった。
🟡 ポイント解説
- 自動思考が「全か無か思考(=失敗=全否定)」になっている点に気づけるかがカギ
- 合理的思考では、「事実」と「評価」を切り分けることが大切
- 気持ちが0%にならなくても、“軽くなる”だけで十分効果があります
ケース2:友人からの返信が遅くて不安になったとき
状況(第1コラム)
6月3日、親しい友人にLINEで遊びの誘いを送ったが、2日たっても返信がない。
自動思考(第2コラム)
「嫌われたのかもしれない」
「誘い方がしつこかったのかな」
「もう仲良くしてくれないのかも」
感情(第3コラム)
・不安(90%)
・孤独感(60%)
・悲しさ(70%)
合理的思考(第4コラム)
「忙しいだけかもしれない。以前も返信が数日後だったことがある」
「返信が遅いのは相手の都合であり、自分の価値とは無関係」
「相手から連絡が来たとき、普通に話してくれていた。今回も同じかも」
結果の感情(第5コラム)
・不安(90%→40%)
・孤独感(60%→30%)
・悲しさ(70%→20%)
→ 相手の都合を尊重して待てるようになった。自分を責めすぎていたことに気づけた。
🟡 ポイント解説
- 「個人化思考(=悪いのは全部自分)」に陥っている点に着目
- 合理的思考は、過去の客観的事実(返信が遅れたことは何度かあった)を参照することで導きやすい
- 自分の気持ちと現実のズレに気づくことが大きな“安心感”に
初心者がつまずきやすい3つのポイント
- 自動思考が出てこない
→ 頭の中の「モヤモヤしたつぶやき」をそのまま書く。きれいな文章にしようとしなくてOK。 - 感情の強さをどう表現していいかわからない
→ 0〜100%の目安で、「今の自分がどれくらい影響を受けているか」を主観的に記入。 - 合理的思考が思いつかない
→ 「友人だったらどうアドバイスするか?」「証拠はあるか?」などの質問を自分に投げかけてみる。
- 実際の記入例を見ることで、書き方のイメージが湧きやすくなる
- 自動思考には「認知の歪み(全か無か思考、個人化など)」が隠れていることが多い
- 合理的思考は、自分に優しく問いかける姿勢が大切
- 感情の強さを数値で記録することで、変化に気づきやすくなる
- 書くことで「気づき」や「安心感」が自然と生まれてくる
実際の記入例を通して、「あ、自分もこんなふうに思っていたかも」と感じた方も多いのではないでしょうか? 5コラム法は、気づきを得るだけでなく、それを“続けていく”ことで、より深い効果を実感できるものです。
とはいえ、毎日書くのが難しかったり、うまくいかない日があるのも自然なこと。
次章では、5コラム法を無理なく続けるための工夫や、継続のコツについて詳しくご紹介します⏳📘
第4章:効果を引き出すために|5コラム法を続ける工夫
「5コラム法をやってみたけれど、うまく書けない」「毎日は続けられない」──そんな声は決して珍しくありません。どんなセルフケアも、無理をすると逆にストレスになってしまうことがあります。
でも、ちょっとした工夫や視点の変え方で、5コラム法はぐっと身近なものになります。ここでは、日常に取り入れやすくするためのヒントや、書けないときの対処法など、“継続”のための工夫を心理的観点から解説します🌱
毎日やらなくても大丈夫。自分のペースを大切に
5コラム法は、必ずしも「毎日欠かさず続けなければならない」ものではありません。大切なのは、「書くこと」そのものよりも、「思考のクセに気づく習慣を育てること」です。
📌おすすめのタイミング例
- 気分が落ち込んだとき
- 何となくモヤモヤしているとき
- 感情的に反応してしまったあと
たとえば、「1週間に1回」「週末だけ」など、あらかじめ“ゆるく”設定しておくと、続けやすくなります。「書かなきゃ」と思うより、「ちょっと整理してみようかな」と感じたときに取り組むほうが、自然で効果的です。
書けないときは「ひとつのコラムだけ」でもOK
すべてのコラムを完璧に埋めようとすると、かえって負担になってしまうことがあります。そんなときは「書けるところだけ」でもかまいません。
たとえば、
- 感情が強すぎるときは、第3コラム(感情)だけを記録して終える
- 自動思考が浮かんできたら、第2コラム(思考)だけをメモに残す
これでも立派なセルフケアです。書き残しておけば、後から時間をおいて続きを書くこともできます✍️
数値化することで見える「感情の波」
第3・第5コラムで感情の強さを数値化するのは、変化を“視覚的に確認する”ためです。たとえば、以下のような記録を1週間分並べてみると、気分の傾向が見えてきます。
日付 | 出来事 | 不安(%) | 結果の不安(%) |
---|---|---|---|
6/3 | 返信が来ない | 90 | 40 |
6/5 | ミスを注意された | 80 | 50 |
6/6 | 予定がキャンセル | 70 | 55 |
「少しずつでも気持ちが軽くなっている」ことが視覚化されると、自分に対する信頼感が育ちます。これが継続の原動力になるのです🧩
うまく書けないときに役立つ3つの工夫
- フォーマットを決めておく
→ ノートやスマホのメモアプリにテンプレートを用意しておくと、心理的ハードルが下がります。 - 時間帯を固定する
→ 毎日ではなくても「木曜の夜」など、生活リズムに組み込むと継続しやすくなります。 - 書くこと以外の“気づき習慣”を補助に使う
→ 例えば「感情日記」や「モーニングページ(朝の自由記述)」なども併用すると、5コラム法の効果を底上げできます。
続けることで変わる「心の受け止め方」
はじめは「書き方に迷う」「効果があるかわからない」と感じていても、続けるうちに、自動的に「今の思考、ちょっと極端だったかな?」と気づけるようになります。
つまり、紙に書かなくても“頭の中で5コラムを行う力”が育ってくるのです。これは心理療法の中でも「認知再構成」と呼ばれる、大きな目標のひとつ。継続することで、ストレスに対する耐性や自己理解が自然と深まり、自己否定や過剰な不安に囚われにくくなります🌈
- 5コラム法は「毎日」やらなくても効果があります
- 書けるところだけ、または感情だけを記録するのでもOK
- 感情の強さを数値で記録すると、変化が視覚的に確認できる
- フォーマット化や時間帯の固定で、習慣化しやすくなる
- 続けることで“頭の中で5コラムを回す力”が育つ
ここまでで、5コラム法の使い方から、実践例、継続の工夫までを学んできました。最後にお伝えしたいのは、5コラム法が「単なる記入作業」ではなく、心とのつき合い方を変えていくプロセスだということです。
最終章では、5コラム法がもたらす心の変化や、カウンセリングや治療との併用についてご紹介します。自分にやさしくなるためのヒントを、もう一歩深めてみましょう💫
第5章:心のセルフケアとしての5コラム法の可能性
私たちは日々、さまざまな出来事や感情の波に揺れながら生きています。その中で「どうすれば自分の心と穏やかに向き合えるのか?」という問いを抱える人も多いはずです。
5コラム法は、思考や感情に振り回されそうになる瞬間に、自分を見つめ直し、やさしく立て直す力を育ててくれます。
この最終章では、5コラム法が心にもたらす変化や、他の支援との併用、そして長く付き合っていくための視点についてお伝えします🧘♀️🌿
■ 自分の「心のパターン」が見えてくる
5コラム法を続けていくと、「いつも同じようなことで落ち込んでいるな」「自分はこういうときに『○○な思考』に陥りやすいな」といった心の傾向=“思考のクセ”に気づけるようになります。
たとえば…
- 対人関係で「嫌われた」と感じやすい
- ミスをすると「自分は無能だ」とすぐ結論づける
- 完璧でいないと不安になる
こうしたパターンを言語化し、客観的にとらえられることは、自分自身への理解を深める大きなステップです。「気づいている」というだけで、感情に呑まれにくくなり、次の行動にも違いが出てきます。
感情との“適切な距離感”が身につく
5コラム法では、「感情を否定せず、見つめる」ことが基本です。不安や怒り、落ち込みがあっても、それ自体が悪いわけではありません。むしろ、それらを丁寧に扱うことで、心の安定が育まれていくのです。
書くことで、“自分の気持ち”と“その引き金になった思考”を切り離せるようになり、「感情の波が来ても、自分はそれに流されすぎずに済む」と感じられるようになります。
この感覚は、マインドフルネスやセルフ・コンパッション(自分へのやさしさ)とも共通しており、精神的なレジリエンス(回復力)を高める支えになります。
カウンセリングや治療との併用で効果を深める
5コラム法はセルフケアとして非常に有効ですが、心理的な悩みが強い場合は、カウンセラーや医師の支援と併用することで、より安全かつ効果的に活用できます。
たとえば…
- 書いた5コラムをセッションで共有し、より深く思考を掘り下げる
- 書けなかった理由を話し合い、自分の回避パターンに気づく
- 強い感情やトラウマが絡むテーマについては、専門家と一緒に扱うことで安心感を得られる
また、医療機関によっては、5コラム法の指導や支援を行っているところもあります。「一人で頑張りすぎない」という視点は、長く続けるうえでもとても大切です。
「心の生活習慣」として取り入れるという考え方
5コラム法は、一度覚えたら終わり、というツールではありません。日々の心の動きを“点検”する習慣として、長く付き合っていけるものです。
例えるなら、「食事の記録をつけて栄養バランスを見直す」ようなもの。忙しいときは簡単に、余裕があるときはじっくり…と、自分の生活リズムに合わせて柔軟に使えるのが大きな魅力です。
続けていくうちに、「頭の中で自然と5コラムが動いている」「前ほど落ち込まずに済むようになった」といった変化に気づけるでしょう。それは、“思考”との付き合い方が変わってきた証です。
- 5コラム法を続けることで、自分の思考パターンに気づけるようになる
- 感情を否定せず見つめる力が育ち、心の安定感が高まる
- カウンセリングや治療と併用することで、より深い気づきや安心感が得られる
- 長く続けることで「頭の中で自然に思考を整理できる」感覚が身につく
- 心の“生活習慣”として、日常的に役立つツールである
5コラム法は、心のなかで渦巻く思考や感情にやさしく光を当てる、心理的セルフケアの基本ともいえる方法です。最初は書くのが難しく感じるかもしれませんが、少しずつ慣れていくうちに、自分の内側にある「パターン」や「思考のクセ」に気づけるようになります。
大切なのは、無理せず、自分にやさしく取り組むこと。日々の生活の中で、心の声に耳を傾ける時間を持つことが、ゆるやかな回復と成長の第一歩になるのです🍀