職場における労働災害や健康被害――それは、誰にとっても他人事ではありません。

特に製造業や建設業、物流現場などでは、日々の業務が「危険」と隣り合わせで行われています。
こうしたリスクから働く人を守るために定められているのが、「労働安全衛生法」における危険・健康障害の防止措置です。

この記事では、企業が講じるべき防止措置の具体例を、分かりやすく5つの視点から解説していきます。実務に役立つ内容を中心に、チェックリストや事例も交えてお伝えしますので、衛生管理担当者や人事労務の方は、ぜひ参考にしてみてください😊

第1章:防止措置とは何か ― 労働安全衛生法の基本をおさらい

「危険・健康障害の防止措置」と聞くと、少し堅苦しく感じるかもしれません。でもこれは、働く人の命と健康を守るために、とても大切な考え方です。

この章では、労働安全衛生法における防止措置の定義や対象、企業に課される義務について、わかりやすく解説していきます。「そもそも何をどこまでやればいいの?」という不安を解消できるよう、基本の考え方を丁寧にお伝えしていきます。

労働安全衛生法の目的と基本構造

労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)は、「労働災害の防止」を目的とした法律です。
この中で、企業に対して「労働者の危険または健康障害を防止するために必要な措置を講じなければならない」と義務づけているのが、法第22条に該当する「危険・健康障害の防止措置」です。

対象となるのは、製造業や建設業のような明らかにリスクの高い現場だけではありません。事務職であっても、例えば照明不足や換気不良が健康障害の原因となる可能性があるため、どの職種・業界でも対応が求められます。


防止措置の定義と企業の義務範囲

防止措置とは、「職場内で発生しうる危険・有害要因に対して、あらかじめ予防的な対応を取ること」です。

具体的には、以下のような措置が代表的です。

リスク対象代表的な防止措置の例
機械による危険非常停止スイッチの設置、ガードの取り付け
転落・転倒手すりの設置、足場の強度確保、滑り止め
有害物質換気装置の整備、安全データシート(SDS)の配布
照明・換気作業環境の基準に沿った照度・換気量の確保
下請けの作業元請け企業による作業環境の整備、安全教育

これらは、「一度事故が起きてから対応する」のではなく、「起きる前に未然に防ぐ」ことがポイントです。


法令違反による企業リスクと罰則

防止措置を怠った場合、労働基準監督署から是正勧告を受ける可能性があります。
また、事故が発生して被害が出た場合には、労働安全衛生法第120条に基づき、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることもあります。

さらに、重大な事故が起きるとマスメディアによる報道やSNSの炎上につながるなど、企業イメージの失墜という“見えない損失”も発生しかねません。


「努力義務」と「義務」の違いに注意

労働安全衛生法には、実施しなければならない「義務」と、可能な限り取り組むべき「努力義務」があります。
例えば、「作業環境測定」は特定業種では義務ですが、他では努力義務とされることも。

実務で対応する際には、「どの項目が法的義務で、どれが努力義務なのか」を明確に把握することが大切です。厚生労働省のガイドラインや安全衛生基準規則を参考にしましょう。

まとめ
  • 労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を守るための法律です
  • 「危険・健康障害の防止措置」は、企業にとって義務とされる重要な対策です
  • 機械・転落・有害物質・換気・照明など、多岐にわたるリスクに対して予防策を講じる必要があります
  • 義務を怠った場合には、罰則や企業イメージの悪化といったリスクがあります
  • 義務と努力義務を正しく理解し、優先順位をもって整備を進めましょう

防止措置の必要性や法的な義務についてご理解いただけたでしょうか?
では実際に、職場でどのようなリスクが存在し、それに対してどのような予防策が求められているのでしょうか。

次章では、「機械や設備による危険」をテーマに、実際の事故事例や対策のポイントを掘り下げていきます。
「設備はあるけれど、安全対策までは手が回っていない…」そんな職場こそ、今一度見直しが必要です。現場で実践しやすいチェックリストもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください🔧✨

第2章:機械・設備による危険の防止策 ― 切創・挟まれ・感電を防ぐために

「危ない」と感じたときには、すでに事故が起きかけている――これは現場でよく言われる言葉です。
特に工場や建設現場など、機械や設備を扱う作業では、ちょっとした油断が重大な事故につながるリスクを孕んでいます。

本章では、切創・挟まれ・感電といった代表的なリスクに対して、企業が講じるべき具体的な措置を解説します。
「どう防ぐか?」の視点に加え、「どうすれば確実に守れるか?」という実務でのポイントにも触れながら、法的根拠とともにわかりやすくお伝えしていきます⚙️

切創・挟まれ事故を防ぐための基本対策

機械の可動部に巻き込まれてしまう「挟まれ・巻き込まれ」、刃物や鋭利な部品による「切創(せっそう)」は、労災の中でも頻度が高い事故原因です。

防止措置として求められる基本対策には、以下のようなものがあります。

対象リスク必要な措置根拠法令
可動部の危険防護カバーの設置、非常停止装置の設置労働安全衛生規則第107条、第108条
刃物の露出遮蔽装置、工具の収納管理安全衛生基準規則
始業点検の不備チェックリスト運用、責任者の明確化指針・ガイドライン(厚労省)

特に重要なのは、機械が稼働する前の「始業前点検の徹底」です。
毎日の確認が習慣化していない職場では、防止装置の外れ・劣化が放置され、事故につながるリスクが高まります。


感電・漏電の防止:電気設備の管理ルール

感電事故は、「電源が入っていないと思っていた」「絶縁が劣化していた」といった認識のズレから発生することが多くあります。

以下のような設備管理が重要です。

  • 絶縁被覆の劣化チェック
  • アース(接地)処理の確保
  • コンセント周辺の水漏れ防止
  • 電気工具の整備と定期点検

また、「高圧電気設備に触れる可能性がある作業」では、有資格者の作業に限定されるなど、業務そのものの制限もあります(労働安全衛生規則第298条など)。

感電事故の多くは“知識不足”と“教育不足”によるヒューマンエラーが原因です。安全講習やマニュアル整備を通じて、未然防止につなげましょう⚡


非常時の対応を想定した安全装置の設置

事故を完全にゼロにするのは難しいからこそ、重要になるのが「非常時の備え」です。

例えば以下のような装置・工夫が求められます。

  • 非常停止ボタンの設置(複数箇所)
  • 作業員から見えやすい表示灯・アラーム
  • 周囲への緊急連絡体制の確立(インカム、社内LINEなど)

また、誰でもすぐに使える設計(ユニバーサルデザイン)であることも重要です。
押しづらい、見えづらい、手が届かないなどの理由で作動が遅れると、被害が拡大します。

厚生労働省の「機械の包括的安全指針」にもある通り、「ヒューマンエラーを前提とした設計思想」が今後のスタンダードとなっています。


実務で使えるチェックリスト【現場用】

項目チェック内容チェック欄
防護カバーの装着状況作業開始前に確認し、緩みや欠損がないか
非常停止装置の動作動作確認を定期的に実施
電気コードの劣化亀裂や異臭がないか
感電防止措置接地処理の確認、絶縁体の導入
作業員の教育状況操作手順や非常時対応を共有しているか

チェックリストは印刷して掲示するだけでなく、記録簿として保存することも推奨されます📋

まとめ
  • 機械による切創・挟まれ・感電は、職場で多発する重大リスクです
  • 防止カバーや非常停止装置の設置は、法令で明確に義務づけられています
  • 感電対策では、絶縁と接地、定期点検が必須です
  • 安全装置は「使いやすさ」「視認性」も意識して設置しましょう
  • 教育・点検・マニュアル整備を通じて、未然に事故を防ぐ仕組みが重要です

機械や設備は便利である一方、リスクも大きく、安全対策は必須です。
では、設備だけでなく、「作業場所そのもの」にはどのような危険が潜んでいるのでしょうか?

次章では、高所作業における転落・日常の転倒事故など、空間的なリスクに焦点を当てます。
階段や床面、足場などの管理が不十分だと、思わぬ事故を招くことも…。
「つまずきやすい職場」になっていないか、一緒に見直していきましょう🚧

第3章:作業場所での転落・転倒リスクを防ぐには

「転んだだけ」と侮ってはいけません。
実は、労働災害の中でも「転倒」は常に上位に入る原因であり、高所からの墜落事故は命に関わる深刻なケースも少なくありません。

この章では、作業場所で起こり得る「転落」や「転倒」のリスクについて解説し、それぞれに応じた防止措置の具体例を紹介します。

特に、足場・階段・床面といった“空間そのもの”の整備が重要となりますので、「どんな環境が危ないのか」「どう改善すべきか」を一緒に考えていきましょう🦺

高所作業での「転落」事故をどう防ぐか?

転落事故は、墜落による骨折や死亡事故に直結する最も危険な災害の一つです。
厚生労働省の統計では、建設業における労働災害の約4割が「墜落・転落」に関連しています。

主な対策としては、以下が義務化または強く推奨されています。

危険箇所防止措置備考
足場・高所作業手すり・中桟・布板の設置安全衛生規則第540条など
ハーネス使用墜落制止用器具(フルハーネス型)を着用2019年より原則義務化
開口部蓋の設置・囲いの設置転落防止柵の高さ:85cm以上

フルハーネスの装着義務化(2022年完全施行)は、現場での大きな変化の一つです。
また、足場の点検や撤去時の手順ミスによる事故も多いため、作業手順書の整備と周知も不可欠です。


日常の「転倒」事故 ― 滑り・つまずきの原因を見逃さない

事務所や倉庫、厨房など、あらゆる現場で起こるのが「転倒」事故です。
特に中高年の労働者にとっては、骨折や長期離脱につながる深刻な問題です。

転倒事故の主な原因と対策は以下のとおりです。

原因防止措置補足
床の滑り滑り止めマット・床材の選定濡れや油分がないかの清掃も重要
段差・配線ケーブルカバー・段差の視認表示足元の視認性向上がポイント
暗い照明十分な照度確保・センサー照明導入厚労省基準:150ルクス以上(一般作業)

また、「忙しい時ほど事故が起きやすい」という傾向もあるため、作業効率と安全性を天秤にかけない文化の定着が大切です。


階段・通路の整備 ― 人の動線を最優先に考える

意外と見落とされやすいのが、階段や通路といった“人の移動ルート”の安全確保です。
ヒューマンエラーは避けられないからこそ、「失敗しても大事故にならない」環境づくりが求められます。

たとえば:

  • 階段には両側に手すりを設置する(推奨)
  • 通路には最低幅(60cm以上)を確保する
  • 避難経路や導線上の障害物を常に除去する
  • 荷物や段ボールの仮置きを習慣化しない

また、通路への荷物放置は立派な労基法違反になる可能性があります。
「通れるから大丈夫」ではなく、「安全に通れる状態か」を日々点検することが事故防止につながります。


実務で使える転落・転倒防止チェックリスト

項目チェック内容チェック欄
高所作業時の装備フルハーネスの装着義務が守られているか
足場の整備状況手すり・板材に緩みがないか
床面の状態油や水で滑りやすくなっていないか
階段の安全性手すりの設置・段差表示はあるか
通路の障害物荷物やコードが放置されていないか

これらを日次点検の一部に組み込むことで、意識と行動の両面から安全が保たれます📋

まとめ
  • 高所作業での転落は、命に関わる重大災害です。ハーネス装着や手すり設置が法的に義務化されています
  • 事務所や倉庫でも、滑り・段差・視認性の不足による転倒リスクがあります
  • 通路や階段といった移動経路の整備は、事故防止の基本です
  • チェックリストを活用し、日常的な点検と意識づけが事故ゼロにつながります
  • 「当たり前」の行動が安全をつくる。環境整備は予防の第一歩です

作業場所の安全は、単に「足元の整備」だけでは完結しません。
次に見ていくのは、「目に見えにくいリスク」――有害物質や換気不足による健康被害です。

化学物質や粉じん、VOCなど、日常の業務の中で知らず知らずのうちに体に負担をかけるリスクは数多く存在します。

第4章では、SDS(安全データシート)の活用や換気装置の整備など、見えないリスクへの具体的な防止措置をわかりやすくご紹介していきます🌬️👷

第4章:有害物質による健康障害 ― 化学物質の管理と換気対策

目に見えないけれど、確かに存在するリスク――それが有害物質や換気不足による健康被害です。
化学物質を取り扱う現場はもちろん、接着剤や洗浄液、塗料を使う作業でも、吸入や皮膚接触による慢性的な健康影響が懸念されます。

この章では、厚生労働省が義務化しているSDS(安全データシート)の活用や、換気装置の管理方法個人用保護具の適切な選定など、目に見えないリスクにどう向き合うかを、実務目線で解説します🌫️

有害物質とは?労働者の健康にどう影響するのか

有害物質とは、労働者の身体に急性あるいは慢性的な健康障害を引き起こす物質のことです。

その種類は非常に多く、たとえば:

  • 揮発性有機化合物(VOC)→ 頭痛・めまい・シックハウス症候群
  • 有機溶剤(トルエン、キシレンなど)→ 肝機能障害、神経系障害
  • 酸・アルカリ性の液体 → 皮膚炎や眼への障害
  • 粉じんや金属粉 → 呼吸器障害やアレルギー

特に問題なのは、「少しずつ体に蓄積される慢性障害」であり、自覚症状が出るころには重症化していることも少なくありません。


安全データシート(SDS)の活用義務

SDS(Safety Data Sheet)は、有害性・取扱い方法・応急処置・保管条件などをまとめた化学物質の取扱説明書のようなものです。
労働安全衛生法第57条により、指定化学物質を扱う企業は、SDSの交付が義務化されています。

活用のポイントは以下の通りです。

  • 作業現場にSDSを掲示またはすぐに見られる場所に設置
  • 新規導入の物質は事前に確認・教育を実施
  • 誤使用や混合による有害反応を防ぐ目的で、現場内の情報共有を徹底

労働者が内容を理解できるよう、図解や翻訳版の準備も有効です📄🔍


換気装置の設置と保守管理 ― 換気は“命綱”です

有害物質の多くは、揮発性ガスや粉じんとして空気中に拡散します。
したがって、換気装置の設置と維持管理は防止策の柱となります。

換気の種類内容
局所排気装置有害物質の発生源に直接取り付け、局所で吸引フード、集塵機
全体換気装置作業場全体の空気を入れ替える空調・換気扇
自然換気窓開放などによる空気循環限界があるため補助的

局所排気装置の性能はフィルターや吸引力に依存するため、定期点検・清掃を怠らないことが重要です。

また、換気装置の電源を「作業者が自由に切れる」環境は危険です。
できれば、常時稼働設定や、作業中は必ずオンになる制御システムの導入が望まれます。


個人用保護具(マスク・手袋など)の正しい選定と使用法

設備対策に加えて、作業者の身を守る“最後の砦”が個人用保護具(PPE)です。
ただし、「とりあえずマスクをつければいい」というのは誤解
です。

保護具用途注意点
防毒マスク有機溶剤・酸性ガスの吸入防止フィルターの種類が用途に合っているか確認
防じんマスク微粒子の吸入防止(粉じん・アスベストなど)定期交換と密着性の確認
手袋(ニトリルなど)皮膚吸収・炎症の防止使い捨てか耐久性のあるタイプか選別
保護メガネ粒子・飛沫の眼への影響防止曇りにくく、視界が広いものを推奨

加えて、「いつ使うか」「誰が管理するか」を明文化し、周知することが義務対応の第一歩です👷‍♂️


実務で使える健康障害防止チェックリスト

項目チェック内容チェック欄
有害物質のリスト化使用中の化学物質が明確に管理されているか
SDSの管理SDSを掲示・説明し、周知できているか
換気装置の動作稼働確認と定期点検がされているか
PPEの支給と教育マスクや手袋の選定・使用方法が指導されているか
作業環境測定必要な業種で測定が行われているか
まとめ
  • 有害物質は目に見えず、長期的な健康リスクを伴います
  • 安全データシート(SDS)の掲示と周知は法的義務です
  • 換気装置の設置と保守が、健康障害防止の基本となります
  • PPE(マスク・手袋など)は、リスクに応じた適切な選定が必要です
  • 点検・記録・教育体制を整えることで、慢性的リスクから労働者を守れます

ここまで見てきた防止措置は、いずれも企業が自社の従業員に対して行うべき対応でした。
しかし、建設業や製造業などでは、元請け企業が複数の下請け業者を束ねる立場にあります。

最終章となる第5章では、「元請け企業が果たすべき安全衛生管理責任」に焦点を当てます。
「自社だけ安全ならいい」ではなく、現場全体の安全を守る視点が必要です。
協力会社との関係性をどう構築するか、その実務もあわせてご紹介します🏗️

第5章:元請け企業の責任とは ― 下請けの安全を守るために

建設業や製造業の現場では、複数の企業が同時に作業を行うことが珍しくありません。
このときに重要なのが、「誰が現場全体の安全を管理するのか」という視点です。

労働安全衛生法では、元請け企業に対して、下請け業者を含めた全体の安全管理責任を課しています。
「自社の従業員だけ守ればよい」という考えでは通用しません。

この章では、元請け企業が行うべき具体的な防止措置と、安全衛生管理体制の構築方法を、実務に沿って解説していきます🔧

元請け企業に課される「安全衛生責任」とは?

労働安全衛生法第31条では、元請け企業に対して、自社だけでなく下請け企業の労働者の安全も確保する責任を定めています。

これは、単なる「配慮」ではなく、明確な法的義務です。
たとえば、次のような責任が発生します。

  • 現場全体の作業計画の調整
  • 作業区域の明確化と立入禁止措置
  • 危険箇所の共有と説明
  • 安全教育やKY活動(危険予知)への下請け企業の参加促進
  • 共通設備(足場・照明・換気など)の安全管理

つまり、下請け業者が事故を起こしても、「うちは関係ない」とは言えないのです。


安全衛生管理協定書とは ― 下請けとの責任を明文化する

実務では、元請け企業と下請け企業との間で交わされる「安全衛生管理協定書」が、重要な役割を果たします。

この書類には、次のような内容が記載されます。

協定内容目的
現場の責任分担(指揮命令系統)誰がどの範囲で管理責任を負うか明確にする
作業手順・ルールの共有同一基準での安全確保
定例の安全会議の開催情報共有と事故防止
緊急時の連絡体制事故発生時の迅速対応を可能に

協定書があることで、下請けとの関係性が明確になり、責任の所在も曖昧になりにくくなります。
事故時に企業の対応が問われる際にも、重要な証拠として扱われます📄


教育と指導体制 ― 下請けにも同じ安全水準を

元請けが最も注力すべきなのは、下請け作業員にも自社と同レベルの安全知識・対応力を持ってもらうことです。

そのためには、次のような取り組みが必要です。

  • 新規入場者への「安全教育」の実施(作業内容ごとに動画・資料を整備)
  • 月1回の「合同安全ミーティング」での事故事例共有
  • 現場巡回での注意喚起や声かけ
  • 「指差呼称」や「KYシート」など、簡易でも参加しやすい形式の導入

特に、日本語が不自由な外国人作業員が多い場合には、翻訳資料やピクトグラム表示の活用が有効です🌍


安全な作業環境の提供は“設備”から始まる

元請け企業が提供する「共通の作業設備」の安全性は、作業員全体の安全に直結します。

たとえば:

  • 足場の強度・固定状況の確認(外注任せにしない)
  • 仮設トイレや洗浄設備の衛生状態維持
  • 明るさ・換気・動線の整理など、作業しやすい環境の提供
  • 災害用のヘルメット・防災用品の貸与

「最低限の作業ができる環境」はもちろん、「安全に働ける環境」まで提供することが、元請けとしての責任です。


実務で使える元請け管理チェックリスト

項目チェック内容チェック欄
安全衛生協定書の締結下請け全社と書面を交わしているか
教育の実施新規入場者・外国人労働者への教育があるか
会議・巡回安全会議や現場パトロールの実施履歴があるか
設備点検足場・仮設設備の点検結果を記録しているか
緊急対応体制事故時のフローが関係者間で共有されているか
まとめ
  • 元請け企業には、下請け企業を含めた安全衛生の管理責任が法的に課されています
  • 安全衛生管理協定書の締結により、責任分担やルールを明文化できます
  • 下請け作業員への教育や安全ミーティングの実施が重要です
  • 共通設備の安全管理は、現場全体のリスク低減につながります
  • 点検・記録・教育の仕組みを整えることで、事故予防と企業リスクの回避が実現します

労働安全衛生法における「危険・健康障害の防止措置」は、単なる義務ではなく、働く人すべてを守るための基本姿勢です。

機械や設備による事故、高所からの転落、化学物質による健康障害――こうしたリスクに対して、企業は環境を整え、教育し、継続的に点検する義務があります。

また、元請けとして他社の作業者も関わる現場では、全体の安全を意識した対応が求められます。
「何も起こっていない今こそが対策のタイミング」です。この記事を参考に、ぜひ一歩ずつ、御社の安全体制を見直してみてください🛠️👷‍♀️

🔗 参考URL一覧

  1. https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000640322.pdf
    (化学物質による健康障害防止指針)
  2. https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/1003-3d.pdf
    (製造業における元方事業者による 総合的な安全衛生管理のための指針)