「人前に立つのが怖い」「面接が不安でたまらない」
—そんな強い緊張や恐怖を感じる方の中には、「社会不安障害(社交不安障害)」という診断名に思い当たる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
とくに就職活動や職場での人間関係は、社会不安障害を抱える人にとって大きな壁になりやすい場面です。
本記事では、社会不安障害の基本知識から、適職の選び方、就活・職場での工夫、利用できる支援まで、やさしく丁寧に解説していきます。焦らず、一歩ずつ自分らしい働き方を見つけていきましょう。
第一章:社会不安障害とは?
社会不安障害(社交不安障害)は、「人からどう見られるか」が強く気になり、人前で極度に緊張したり不安になったりする精神疾患のひとつです。
見た目にはわかりにくく、周囲に「気にしすぎ」「緊張しやすい性格」と受け止められることも多いため、本人はとても苦しんでいてもなかなか理解されづらい特徴があります。
この章では、社会不安障害の具体的な症状や特徴、日常生活や就職活動に及ぼす影響、そして他の不安障害との違いについて、専門的にわかりやすく解説していきます。
社会不安障害の症状と特徴
社会不安障害(Social Anxiety Disorder:SAD)は、他人の注目を浴びるような場面で、強い不安や恐怖、回避行動が続く状態を指します。特に「恥ずかしい思いをするのでは」「評価されるのでは」といった考えが頭から離れず、日常生活に支障をきたすレベルまで不安が膨らむことがあります。
主な症状
- 人前で話すと声が震える・赤面する・汗をかく
- 会議や面接で緊張し、言葉が出てこない
- 他人の視線が常に気になる
- 注目される場面を強く避けたくなる
- 自分の行動が笑われるのではないかと過剰に心配する
これらの状態が長期間(6か月以上)続いており、生活や就労に影響している場合は、医療機関での相談が推奨されます。
社会不安障害の方は、「自分は人付き合いが苦手なだけ」「こんなことでつらくなるのは変なのでは」と感じてしまいがちです。しかしこれは、脳の不安処理にかかわる部分(扁桃体など)が過敏になっている状態であり、「性格」ではなく「状態」なのです。
日常生活や就職活動への影響
社会不安障害は、就職活動や仕事の場面でとても大きな影響を及ぼすことがあります。とくに「人からどう見られるか」「評価されるかもしれない」という恐怖感が強く、以下のような困難が生じやすくなります。
就職活動時の困難
- 面接で頭が真っ白になる、逃げ出したくなる
- グループディスカッションや電話応対が怖くて避けてしまう
- 自己PRがうまくできない、自信が持てない
- 就職活動の長期化や先延ばし
職場での困難
- 朝礼での発表やプレゼンが極度のストレスになる
- 同僚との雑談や会話に強い緊張を感じる
- 相談や質問ができず、業務が滞ってしまう
- 「失敗して恥をかくのでは」という不安から挑戦を避ける傾向
これらは、「やる気がない」「協調性がない」と誤解されやすいため、本人にとっては二重三重のストレスとなります。
他の不安障害との違い
社会不安障害は、似たような症状を持つ他の不安障害と混同されやすいため、違いを理解しておくことが大切です。
疾患名 | 特徴 | 違いのポイント |
社会不安障害 | 他人からの評価や注目に強い不安 | 人前での緊張や恥への恐怖が中心 |
全般性不安障害 | 将来や日常全般に対する過剰な不安 | 人目以外の状況にも不安が広がる |
パニック障害 | 突然の強い動悸や息苦しさ | 発作が中心で、不安の対象は限定されない |
広場恐怖症 | 特定の場所や状況に対する恐怖 | 外出先などの「逃げにくい状況」に不安が集中 |
社会不安障害の場合、不安の「場面」が比較的一貫しており、それが就職・仕事場面におけるパフォーマンス低下や回避行動につながりやすいのが特徴です。
- 社会不安障害は「他人の目が気になる」ことで生活に支障をきたす状態
- 主な症状は、人前での発言・視線・注目などへの過敏な反応
- 就職活動や職場での人間関係に強い不安が生じやすい
- 性格ではなく、脳の働きに由来する精神疾患として理解されている
- 他の不安障害とは「不安の対象の明確さ」で区別される
社会不安障害は、ただの“あがり症”ではなく、実際の生活や仕事に大きな影響を及ぼす精神疾患です。
でも、それは決して「働けない」ということではありません。自分に合った環境や働き方を選ぶことで、社会不安障害があっても安心して働き続けることは十分可能です。
次章では、社会不安障害を抱える方に向いている仕事の特徴や、具体的な職種、働き方の工夫について、わかりやすく紹介していきます。
第二章:社会不安障害を持つ人に向いている仕事とは
社会不安障害を抱えていると、「どんな仕事なら無理なく続けられるだろう」「人と関わらない仕事なんてあるのかな」と悩むことが多いと思います。
でも、すべての仕事が「人前で話す」わけではありませんし、自分に合った働き方を選ぶことで、安心して働ける環境を整えることも可能です。
この章では、社会不安障害の方に向いている職種の特徴や具体例、障害者雇用という選択肢について、やさしく解説していきます。
適性のある職種の特徴
社会不安障害のある方は、「対人場面」に強い不安やストレスを感じやすいため、人と接する機会が少ない仕事や、一人で集中して取り組める仕事が向いている傾向があります。
人との接触が少ない仕事
- 顧客対応や電話応対が少ない
- 社内でもコミュニケーションが必要最小限
- 自分の作業スペースが確保されている(個室、リモートなど)
こうした環境では、過度な緊張や不安を感じにくく、自分のペースで仕事を進めやすくなります。
ルーチンワークが中心
- 作業の内容がある程度決まっていて予測可能
- 状況変化が少なく、「次に何をすればいいか」が明確
- ひとつの作業に集中する時間が長い
社会不安障害の方は、突発的な対応や「人前で判断を求められる状況」にストレスを感じやすいため、一定の手順に従って行う業務が合っていることが多いです。
在宅勤務・リモートワークとの相性
- WebやIT系の仕事を中心に、在宅で完結する仕事が増えている
- 人との接触が画面越しに限られるため、心理的負担が軽減されやすい
- 自宅での安心感の中で、働くリズムを作りやすい
ただし、「一人の時間が長すぎることが逆に不安を強める」タイプの方もいるため、自分に合ったバランスを見極めることが大切です。
具体的な職種の例
以下は、社会不安障害を持つ方が比較的働きやすいとされる職種の一例です。必ずしもすべての人に当てはまるわけではありませんが、自分の特性と照らし合わせて、ヒントとしてご活用ください。
データ入力・事務補助
- 指定された内容をパソコンに入力する仕事
- 人と話す機会が少なく、自分のペースで作業ができる
- 在宅ワークとしても求人が増えている分野
プログラマー・エンジニア
- コーディングやシステム開発など、一人作業が中心
- オンラインでの業務が多く、物理的な対人関係が少ない
- 技術力が評価されやすく、対人スキルに依存しにくい
清掃・軽作業(工場、倉庫など)
- 作業手順が明確で、あいさつ程度の対話が中心
- 身体を動かすことでストレス解消にもつながる
- 朝や夜など、時間帯を選べる場合もあり、負担が調整しやすい
ライター・イラストレーター・在宅ワーカー
- 一人で黙々と進められるクリエイティブ系の仕事
- 直接の対面コミュニケーションが不要
- 納期管理や成果物によって評価されやすい
研究職・分析職(理系分野など)
- 個人での調査・分析が中心となる
- 対人よりも「成果」や「論理性」が重視される傾向
- 専門知識やスキルの蓄積で自己効力感が高まりやすい
障害者雇用枠の活用について
「障害者雇用枠」は、精神障害・発達障害・身体障害などを持つ方が、安心して働けるように企業が特別に設けている採用枠です。
障害者雇用枠を活用するメリット
- 配慮のある環境(通院配慮・静かな作業スペースなど)
- 相談員(ジョブコーチ等)の配置でメンタル面の支援あり
- 業務内容・負担の調整が前提となっているため、自分のペースで働きやすい
- 就労移行支援などと連携した「就職後の定着支援」がある
精神障害者保健福祉手帳を持っていることで、企業の障害者雇用に応募することができます。
開示するかどうかは自由ですが、「安心して働ける職場環境を整えるための手段」として考えるとよいでしょう。
多くの企業は(障害者雇用の場合は特に)「長く安心して働いてもらう」ことを重視しており、無理のない働き方が実現しやすくなっています。書類や面接時に「どんな配慮があると安心か」を伝えることが、ミスマッチを防ぐ鍵になります。
- 社会不安障害を持つ方には、人との接触が少ない・ルーチン中心の仕事が向いている
- 在宅ワークやIT系の仕事など、自分のペースでできる業務は心理的負担が軽減されやすい
- 清掃・軽作業・データ入力なども人との接触が限定され、安定して働きやすい
- 障害者雇用枠を活用することで、配慮のある環境での就労が可能になる
- 障害者手帳の取得は、支援制度や就職機会の拡大にもつながる
「自分に向いている仕事がある」とわかるだけでも、気持ちが少し楽になることがあります。社会不安障害を抱えていても、適した職種を選ぶことで無理なく働くことは十分可能です。
ただし、実際の就職活動では履歴書の書き方や面接への不安など、具体的な壁に直面することも少なくありません。
次章では、社会不安障害の方が就職活動を乗り越えるためのポイントや支援制度、面接時の対策について詳しく解説していきます。
第三章:就職活動時のポイントと対策
社会不安障害を抱えていると、就職活動そのものが大きなハードルに感じられることがあります。
「履歴書になんて書けばいいの?」「面接で緊張して話せなかったらどうしよう」と、
不安が積み重なって一歩が踏み出しにくくなる方も多いでしょう。でも大丈夫。就職活動は“準備”と“工夫”で乗り越えられます。
この章では、履歴書・職務経歴書の書き方、面接時のコツ、そして支援機関の活用方法まで、実践的な対策を丁寧に解説していきます。
履歴書・職務経歴書を書く上でのポイント
履歴書や職務経歴書は、「自分らしさ」を表す大切なツールです。社会不安障害がある方は、「病気のことを書くべきか」「どこまで伝えるか」で悩むことが多いですが、まずは“応募先と自分にとって無理のない関係を築く”ことを意識してみましょう。
開示する?しない?「障害の開示・非開示」の判断ポイント
- 障害者雇用枠に応募する場合は、基本的に開示が前提です。
- 一般枠に応募する場合は、開示義務はありません。ただし、業務や勤務に配慮が必要であれば、開示を検討することが安心につながることもあります。
開示して得られるメリット
- 面接で緊張しやすいことを理解してもらえる
- 通院配慮や勤務時間の調整について相談しやすくなる
- 配慮を前提にした業務設計がなされやすい
履歴書や職務経歴書に直接書く必要はありませんが、「備考欄」や「自己PR欄」に簡潔に記載することもあります。
記載例
「現在、社会不安障害の診断を受けておりますが、通院しながら体調を安定させており、〇〇の業務に支障なく取り組んでいます。配慮が必要な場合には、ご相談させていただければ幸いです。」
職務経歴書で意識したいこと
- 成果や経験は、数字やエピソードで具体的に
- 「自分なりに工夫したこと」や「困難をどう乗り越えたか」は評価されやすいポイントです
- 就業ブランクがある場合も、「その間に行っていたこと」「通院や回復の過程」などを前向きに記述すると、理解を得やすくなります
面接時の注意点と対処法
面接は、社会不安障害の方にとってもっとも緊張しやすい場面のひとつです。けれども、あらかじめ準備と対策をしておくことで、安心してのぞむことができます。
面接前の準備
- よく聞かれる質問を事前にリストアップ(自己紹介、志望動機、強み・弱みなど)
- 答えを簡単なメモにしておき、頭の中で何度かシミュレーションしておく
- 可能なら、信頼できる人に模擬面接をお願いして、練習してみる
面接中に緊張が高まったら
- 深呼吸をゆっくり3回する
- 視線をやさしく相手の“眉間”や“あご”あたりに向けると、プレッシャーが軽減されやすい
- 「緊張しても大丈夫」「誠実に話せれば伝わる」と自分に声をかけてあげましょう(セルフコンパッション)
面接官に配慮を求めたいとき
もし開示している場合は、事前に「緊張しやすいので、質問を少しゆっくりお願いできると助かります」など、シンプルに伝えておくとスムーズです。配慮を伝えることは、“弱さ”ではなく、“自己管理ができている”という印象にもつながります。
支援機関の活用方法
就職活動を一人で抱えるのは大きな負担になります。社会不安障害がある方は、「支援を受けながら就職する」というスタイルも安心できる選択肢のひとつです。
就労移行支援事業所
- 精神・発達・知的障害などを持つ方を対象に、就職までのトレーニングや職場体験を提供している
- 履歴書の添削、面接練習、ビジネスマナーなども学べる
- 就職後も定着支援(職場訪問・相談)を受けられる場合がある
※利用には障害者手帳または医師の診断書が必要です。
ハローワーク(障害者専門窓口)
- 障害者専門の担当者が付き、希望条件に合った求人の紹介や面接同行などの支援を受けられる
- 通院や体調に合わせた働き方の相談も可能
地域障害者職業センター
- 心理職や職業カウンセラーが在籍しており、心理的な支援や職業評価テストを受けることができる
- 障害に応じた就労プランの作成、ジョブコーチによる現場支援などもあり
精神科のケースワーカー・精神保健福祉士
- 医療機関にいる支援スタッフで、就職に関する制度や相談窓口を紹介してくれる
- 手帳申請や支援機関との連携サポートもしてくれる
また、復職を目指す場合は、リワークプログラムという選択肢もあります。最近の法改正で、主治医の診断書があれば公的負担※で民間型のリワークプログラムが利用可能となり、多様な支援が受けられるようになりました。
※費用は、福祉制度を利用することで自己負担額を1割に抑えることが可能。自己負担額は1日800円~2,000円程度で事業所によって異なります。
リワークプログラムについては、「【2025年最新】復職リワークの種類・費用・利用期間・選び方を徹底解説」も参考にしてみてください。
- 障害の開示・非開示は、自分の働き方に合わせて判断してOK
- 面接では準備とシミュレーションが不安軽減につながる
- 緊張しても誠実に伝えることで好印象につながる場合もある
- 支援機関(就労移行支援、ハローワーク、精神保健福祉士)を活用することで、安心して就職活動を進められる
- 一人で抱えず、伴走してくれる支援者とつながることがカギ
就職活動は、社会不安障害のある方にとってプレッシャーの大きいプロセスですが、準備や支援を活用することで、自分らしく安心して進めることができます。
就職後の職場でも、ストレスやコミュニケーションの問題で不安になることがあるかもしれません。でも、それにもきちんと対処法があります。
次章では、職場での人間関係や業務でのストレスを乗り越えるための工夫や、長く安定して働くためのメンタルケアについてお伝えしていきます。
第四章:職場でのコミュニケーションとストレス管理
せっかく就職できても、職場での人間関係や環境に悩み、心が疲れてしまうことは少なくありません。特に社会不安障害を抱える方にとって、「うまく話せない」「注目されるのがつらい」といった場面は、毎日の業務の中で強いストレスにつながりやすいものです。
ですが、必要なときに適切な配慮を求めたり、ストレスを上手にケアしたりする方法を知っていれば、安心して働き続けることができます。
この章では、実際の職場でできる具体的なコミュニケーションの工夫や、心を守る方法をご紹介します。
上司や同僚への配慮の求め方
社会不安障害の方にとって、職場での人間関係は特に大きなストレス源になりがちです。ですが、「全部を話さなければいけない」わけではなく、必要な範囲で適切に伝えることで、気持ちが軽くなることもあります。
「自分が社会不安障害であることを話すなんて、迷惑をかけてしまうのでは」と不安になる方も多いですが、それは決して“甘え”ではありません。むしろ、自分の状態を説明することで、配慮や理解を受けやすくなり、業務に集中できる環境が整うというメリットがあります。
伝える相手や内容は、自分の安心感を軸に選んでOKです。たとえば、以下のような伝え方があります:
- 「大勢の前で話す場面が少し苦手です。可能であれば少人数での対応を希望します」
- 「電話対応は緊張しやすく、メールの方が落ち着いて対応できます」
- 「緊張しやすいので、指示はメモやチャットでいただけると助かります」
ポイントは、「できない」ではなく「こうすればやりやすくなります」と伝えること。前向きな配慮のお願いは、職場での信頼関係づくりにもつながります。
誰に伝えるか?
- 直属の上司:業務調整や配慮の相談がしやすい
- 産業医・人事担当者:制度的な支援や職場環境の改善につながりやすい
- 信頼できる同僚:日々のやりとりが少しラクになることも
業務量や職場環境の調整方法
無理のない業務量や環境を整えることは、長く働き続けるためのカギです。社会不安障害の方にとっては、「自分のペースで働ける」「急な変化に対応しなくていい」環境が特に大切です。
業務の調整
- 業務内容を明確にする:あいまいな指示は不安を高めやすいため、「優先順位」や「納期」を明確にしてもらう
- 朝の挨拶や会議の発言など、苦手な場面を事前に相談しておく
- 一度に多くの仕事を任されないよう、小分けに依頼してもらうことも有効です
環境の調整
- 作業スペースの位置(人の出入りが少ない場所、静かな席)
- チャットツールやメールを中心にしたやりとりへの変更
- 休憩時間をずらして、混雑を避ける など
できる範囲で「落ち着ける職場環境」を整えることが、不安や疲労の軽減に直結します。
「職場定着支援」の利用
障害者雇用枠で就職した方は、定着支援員やジョブコーチなどが、職場との橋渡しをしてくれることもあります。「直接は言いづらいけど、伝えたいことがある」というときは、支援機関を通して働きかけてもらう方法もあります。
ストレスを軽減するリラクゼーション法
職場で感じたストレスをそのままにしておくと、心身にじわじわと負担がかかってしまいます。ちょっとした時間でも、自分を整える方法を持っておくと安心です。
呼吸法(深呼吸・腹式呼吸)
不安や緊張で呼吸が浅くなっているとき、ゆっくりとした深呼吸は自律神経を整える効果があります。
簡単な方法:4-7-8 呼吸法
- 4秒かけて鼻から息を吸う
- 7秒間息を止める
- 8秒かけてゆっくり口から吐く
仕事の合間に数回繰り返すだけで、気持ちが落ち着きやすくなります。
マインドフルネス
今この瞬間に意識を向けるマインドフルネスは、思考の渦から抜け出すのに効果的です。
簡単なやり方
- 1分間だけ、目を閉じて「呼吸」だけに意識を向ける
- 「吸っている」「吐いている」と心の中で言葉にする
人間関係や仕事の失敗など、過去や未来のことに意識が向きがちなときに効果があります。
ジャーナリング(書くことで心を整理)
頭の中のモヤモヤや不安を「書き出す」ことで、客観的に捉えやすくなります。
書くテーマの例
- 今日一番しんどかったこと
- どう感じたか?
- 自分にどんな声をかけてあげたいか?
書いたあとは、「今の気持ち、よく向き合ってくれたね」と、自分に優しく声をかけてあげましょう。
マインドフルネスについて詳しく知りたい方はこちら → マインドフルネスの効果を脳科学で解説|集中力・睡眠・ストレス・うつ病に効く理由とは?
- 上司や同僚に配慮を求めることは、長く働くための大切な工夫
- 業務内容や職場環境を少し調整するだけで、不安の軽減につながる
- 支援機関や定着支援員を通して職場との連携も可能
- 深呼吸・マインドフルネス・ジャーナリングなどのセルフケアを習慣化すると、ストレスを溜めにくくなる
- 「自分を守る方法」を持っておくことが、安心して働き続ける基盤になる
仕事は「ただ続ける」だけでなく、自分らしく、無理なく続けていくことが何より大切です。
社会不安障害があるからこそ、環境や働き方に工夫が必要ですが、それは“特別”ではなく“あなたに合った選択”です。
次章では、長く安心して働き続けるために利用できる支援制度や福祉サービス、経済的な支えとなる制度などを詳しく解説していきます。あなたの働き方を応援してくれる仕組みを、ぜひ知っておいてください。
第五章:長く働き続けるためのサポートと制度
就職を果たしたあとも、社会不安障害のある方にとっては「このまま働き続けられるだろうか」「また調子を崩したらどうしよう」といった不安が続くことがあります。
でも、そうした不安をひとりで抱え込む必要はありません。今の社会には、働き続けることを支える制度や、こころのケアをサポートするしくみがいくつも用意されています。
この章では、長く安定して働くために知っておきたい支援機関、経済的な支援制度、そして継続的なメンタルケアの大切さについて解説します。
利用可能な支援機関
社会不安障害の方が、働くことを長く続けるためには、環境だけでなく“つながり”があることが非常に重要です。身近な地域には、働くことや心の健康を支援するための機関が多数あります。
地域障害者職業センター
全国の都道府県に設置されている公的機関で、障害のある方の職業生活を総合的に支援します。特に以下のサポートが受けられます。
- 就労前の職業評価(どんな働き方が合っているか)
- 職場定着支援(ジョブコーチによる訪問支援など)
- 職場との調整や関係改善のサポート
精神障害者雇用支援センターと連携していることもあり、専門性の高い支援が期待できます。
精神保健福祉センター・保健所
精神疾患のある方の生活・就労・医療のつながりを支援する機関です。
- 心理士・保健師などによる面談相談
- 就労や日常生活に関する情報提供
- 福祉サービス・医療機関との連携支援
地域によっては出張相談やグループ活動なども行われており、孤立しない環境づくりにもつながります。
就労移行支援事業所
就職後も利用が可能な「定着支援型」のサービスを行う事業所があります。職場で困ったとき、悩みを抱えたときに、支援員に相談できる環境があると、不調を早めに対処できる可能性が高まります。
産業医・職場内支援(EAP)
企業によっては産業医やカウンセラーによる社内のメンタル支援制度(EAP)を導入している場合があります。勤務時間中や休憩時間に相談できるため、定期的な心のメンテナンスにも役立ちます。
経済的支援制度の活用
「働き続けたい」という気持ちがあっても、収入や通院費など経済面の不安があると、それがストレスになってしまうことも。以下のような公的制度を活用することで、生活の安定につながります。
自立支援医療制度(精神通院医療)
精神科・心療内科への通院費を1割負担に軽減できる制度です。
- 医師の診断書をもとに申請
- 薬代・通院費が大きく抑えられる
- 申請は市区町村の窓口で行う
長期通院が必要な方には、特に大きな助けになります。
障害年金
精神疾患によって働くことが難しい、または働ける時間が限られている場合、障害基礎年金または障害厚生年金の受給対象になることがあります。
- 医師の診断書や障害状態の申立書が必要
- 障害等級2級または3級に該当するかが目安
- 手帳の有無に関係なく申請可能
申請が複雑に感じる場合は、年金事務所や社労士に相談することをおすすめします。
生活保護・就労支援制度との併用
働ける状態に向かうまでの一時的な支援として、生活保護や、就労自立支援プログラム(就労準備支援事業)を活用するケースもあります。
経済的な不安を減らすことは、精神的な安心にもつながる大切な要素です。
継続的なカウンセリングやメンタルヘルスケア
働き続けるうえで、業務スキルと同じくらい重要なのが「心のコンディション管理」です。とくに社会不安障害の場合、波のある体調や環境の変化に影響を受けやすいため、予防的な心のメンテナンスがとても大切です。
- 定期的に心の中を整理することで、自己理解が深まる
- 職場での困りごとを事前に対処できる
- 安心できる「話し相手」がいることで、孤立感を軽減できる
医療機関や地域の公認心理師・臨床心理士による相談窓口、またはオンラインカウンセリングの活用も選択肢の一つです。
感情のセルフチェックと記録習慣
- 「今日どんな気分だったか?」を毎日5段階で記録する
- 感情の起伏に早めに気づけるようになる
- 不調の兆しに気づいたら、休息や相談のタイミングを逃さずに済む
「がんばりすぎる前に、気づける仕組みを自分に持たせてあげる」ことが、働き続ける力になります。
- 地域障害者職業センターや精神保健福祉センターなど、働くことを支える機関が全国にある
- 通院費の軽減には「自立支援医療制度」、生活の安定には「障害年金」の申請が検討できる
- 就職後も、定着支援や職場のEAPなど“つながり”を持つことで安心して働ける
- 継続的なカウンセリングや感情記録の習慣が、長期的な安定につながる
- 働き方と同じくらい、「心のメンテナンス」も大切にしていくことが重要
社会不安障害があるからといって、働けないわけではありません。自分に合った仕事を選び、必要なサポートや制度を活用することで、無理なく、安心して働き続けることが可能です。
本記事では、職場での人間関係の工夫から、支援制度、継続的なメンタルケアまでを丁寧に紹介してきました。あなた自身の心と体の声に耳を傾けながら、できることから少しずつ、無理なく前に進んでいきましょう。あなたの働き方を応援しています。