「言いたいことがあるのに、うまく伝えられない…」「つい我慢してしまって後から後悔する」——そんな経験、ありませんか?人間関係の中で、自分の気持ちを無理なく伝えながら、相手の立場も尊重できる方法。それが「アサーション」というコミュニケーションスキルです。
アサーションは、心理学やカウンセリングの現場でも活用されており、自己肯定感の向上やストレスの軽減にも効果があるとされています。
本記事では、アサーションの基本から日常での活用法まで、やさしく丁寧にご紹介していきます。自分らしく、心地よく人と関われるヒントを一緒に見つけていきましょう🌿
第1章:アサーションとは何か?
「アサーションって聞いたことはあるけど、なんとなくしかわからない」そんな方も多いかもしれません。日本語では「自己主張」と訳されることが多いアサーションですが、実は単なる“自己中心的な主張”とはまったく異なる概念です。
この章では、アサーションの基本的な定義とその背景にある心理学的な考え方を解説しながら、他のコミュニケーションスタイルとの違いについても整理していきます。
自分と他者の気持ちを同時に大切にするという、一見むずかしそうで実はとても温かいこのスキルの本質に触れてみましょう🕊️
■ アサーションの定義とは?
アサーション(assertion)とは、自分の意見や感情、希望を相手を尊重しながら率直に、誠実に、適切に伝えるコミュニケーションの方法です。心理学では「アサーティブ・コミュニケーション」とも呼ばれ、自分の権利を守りながら、他者の権利も認める態度とされています。
アサーションは、「我慢すること」と「わがままに振る舞うこと」のちょうど中間にあるスタンス。どちらかに偏りすぎることなく、自分も相手も大切にする「対等な関係」を目指します。
■ 3つのコミュニケーションスタイル
アサーションを理解するために、まずは3つの代表的なコミュニケーションスタイルを見てみましょう。
スタイル | 特徴 | 相手からの印象 |
---|---|---|
受動的(非主張的) | 自分の意見を抑えて相手に合わせる | 優しいが、頼りない・不満が溜まりやすい |
攻撃的 | 相手を押しのけてでも自分の意見を通そうとする | 怖い・話しづらい・関わりたくない |
アサーティブ | 自分も相手も尊重しながら意見を伝える | 信頼できる・安心できる・関係が続きやすい |
このように、アサーションは単なる「強く言う」ことではなく、「どう伝えるか」「相手とどんな関係を築きたいか」が重要になります。
■ アサーションの背景にある心理的な考え方
アサーションは、アメリカの心理学者アルバート・エリスやアーノルド・ラザルスらによって発展してきた概念で、認知行動療法の文脈でも活用されています。彼らは、人が不適切なコミュニケーションを取ってしまう背景に「非合理な思い込み(イラショナル・ビリーフ)」があると考えました。
たとえば、「相手に嫌われたら終わりだ」「相手の気分を害してはいけない」といった思い込みが、自分の意見を伝えることへのブレーキになってしまうのです。アサーションを学ぶことは、こうした思考パターンを見直し、自分らしく人と関わる力を育てることでもあります。
■ 自己表現とアサーションの違い
「自己表現」と「アサーション」は似ているようで異なります。自己表現は、自分の考えや感情を自由に表すことが主目的ですが、アサーションは「相手との関係性」も重視したコミュニケーションです。
たとえば、SNSで感情的な投稿をするのも自己表現の一種ですが、それが相手を攻撃したり、傷つける内容であればアサーション的とは言えません。アサーションは、相手の立場に配慮しながら「どうすれば伝わるか」「どうすれば関係が深まるか」を考えることが土台となっています。
■ 日本人がアサーションを苦手とする理由
日本では「和をもって貴しとなす」という文化が根強く、自分の意見を言うことが「空気を読めない」と捉えられる場面も少なくありません。そのため、自己主張を避けて「受け身」でいることが無難だとされがちです。
しかし、それが続くと自分の気持ちを抑圧しすぎてしまい、ストレスや対人不安の原因となってしまうことも。アサーションは、そうした状況の中で「無理なく、心地よく自己主張する」ための新しい選択肢となるのです。
- アサーションとは「自分も相手も大切にする自己表現」のこと
- 攻撃的・受動的・アサーティブの3つのスタイルを理解することで、より健全な人間関係が築ける
- 心理学的には、非合理な思い込みがアサーションを妨げる要因となる
- 日本社会では受動的コミュニケーションが優先されがちだが、アサーションはそのバランスをとる手段となる
- アサーションは「関係性を育む伝え方」であり、単なる自己主張とは異なる
アサーションの基本的な考え方がわかってくると、「なぜこのスキルが今の時代に求められているのか」が気になってくる方も多いのではないでしょうか?特に現代社会では、人間関係のストレスやコミュニケーション疲れを感じる人が増えており、相手に合わせすぎて自分を見失ってしまうケースも少なくありません。
次章では、アサーションがなぜ現代の人間関係において必要とされているのか、そしてそれが心の健康にどのように影響するのかを、具体的な例や心理的効果とともに解説していきます🧩
第2章:なぜアサーションが必要なのか?
私たちは日々、多くの人と関わりながら生活しています。職場、家庭、友人関係など、さまざまな場面で「自分の気持ちを伝える」「相手の気持ちを受け止める」やりとりが生じます。
しかし、その中で「言えなかった」「言いすぎてしまった」と後悔することも多いのではないでしょうか。人とのコミュニケーションは、喜びにもなれば、悩みの原因にもなります。
この章では、現代の人間関係でなぜアサーションが必要とされているのかを、ストレスや自己肯定感の観点から深掘りしていきます。アサーションがもたらす心理的効果を知ることで、自分自身の在り方にも優しく目を向けられるようになります🍀
■ 人間関係のストレスはなぜ起きる?
「他人に気を使いすぎて疲れる」「言いたいことが言えなくてモヤモヤする」——多くの人が感じるこれらの悩みは、コミュニケーションの不均衡から生まれます。
心理学の世界では、人間関係におけるストレスの多くが、「伝えたいこと」と「伝えられていること」のズレによって生じるといわれています。つまり、自分の気持ちやニーズが相手に届いていない状態が続くと、心のどこかに不満や孤独感が蓄積されていくのです。
たとえば、職場で過剰な業務を押し付けられても断れず、我慢してこなしてしまう。そんな状況が続くと、心身に疲れがたまり、自分の気持ちがわからなくなってしまいます。
アサーションは、この「自分の本音を伝えたいけれど、うまく伝えられない」葛藤に光を当て、無理なく自己表現するための手助けをしてくれます。
■ 「いい人症候群」が引き起こす内なる疲れ
誰かに嫌われるのが怖くて、いつもニコニコしている。頼まれると断れず、無理をしてしまう。そんな「いい人症候群(過剰適応)」は、日本人に多く見られる傾向です。
一見、周囲との関係は円満に見えるかもしれません。しかし、内心では「本当はこうしたくなかった」「なんで私ばかり」といった不満が積み重なっていきます。
この状態が長く続くと、自分を責めたり、気分の落ち込みにつながったりすることがあります。アサーションは、こうした状態から抜け出す第一歩になります。「嫌われないようにする」ことから「自分の気持ちを大切にする」ことへ、意識を少しずつシフトしていくのです。
■ 自己肯定感とアサーションの関係
アサーションを実践していくと、多くの人が「自分のことを前より好きになれた」と感じます。これは、自己肯定感が高まるからです。
自己肯定感とは、自分自身を「そのままでいい」と受け入れる気持ち。アサーションは、その土台となる「自分の気持ちに気づく」「言葉にする」「相手に伝える」というプロセスを通じて、自分との関係を整えていくことができます。
たとえば、「今日は忙しいので、後で手伝います」と断ることができたとき。「ありがとう、でも少し時間をください」と言えたとき。その一つひとつの選択が、「私は自分の時間や気持ちを大切にできている」という実感につながり、自分への信頼感を育んでくれるのです。
■ 研究で示された心理的効果
アサーションが心の健康に与える影響については、さまざまな研究が行われています。
たとえば、アサーティブな行動が多い人ほどストレス反応が低く、対人不安も少ない傾向があることが報告されています。また、職場においても、アサーション・トレーニングを受けた従業員が、職場ストレスの軽減とチームの人間関係改善に効果を感じたというデータもあります。
アサーションは単なるテクニックではなく、「どう生きたいか」「どんな関係を築きたいか」といった、人生そのものの在り方にもつながるスキルだといえるでしょう。
- 人間関係のストレスは「言いたいけど言えない」気持ちから生まれることが多い
- 「いい人でいなければならない」という思い込みが、自分を追い詰める原因になる
- アサーションを実践することで、自分の気持ちを大切にする感覚が育まれる
- 自己肯定感の向上や、ストレス軽減にもつながることが研究からも示されている
- アサーションは、他者だけでなく「自分自身との関係」も整える大切なスキル
アサーションが心の健康や人間関係に役立つことはわかったけれど、「実際にはどうやってやればいいの?」という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
いざ本音を伝えようとしても、うまく言葉が出てこなかったり、相手の反応が気になったりと、難しさを感じることもあります。
次章では、アサーションを日常の中で実践するために必要な基本スキルや言い回しのポイントを、具体的な例とともに解説していきます✍️
第3章:アサーションを実践するための基本スキル
アサーションの大切さはわかったけれど、「実際にどう話せばいいのか分からない」という方は多いのではないでしょうか?自分の気持ちをそのまま言葉にするのは、簡単そうに見えて意外と難しいものです。
特に、相手の反応が気になるときや、関係性を壊したくないと感じる場面ではなおさらです。
この章では、アサーションを実際の生活で活かすために必要な基本スキルをご紹介します。
大切なのは、完璧にこなすことではなく、「自分も相手も大切にする」という姿勢を持ち続けること。小さな一歩から、安心して試せるヒントをお伝えします🌷
■ Iメッセージを使って自分の気持ちを伝える
アサーションの基本としてよく紹介されるのが「Iメッセージ(アイ・メッセージ)」という伝え方です。これは、相手を責めるのではなく、「私はこう感じている」という、自分の感情を主語にした表現方法です。
たとえば、同僚がいつも仕事を押し付けてくると感じたとき、
- ❌「あなたって、いつも人にばっかり仕事を押し付けるよね」
- ✅「私は、最近少し業務が立て込んでいて、負担に感じています」
このように、主語を「私」にすることで、相手を非難する印象を避けつつ、自分の気持ちをしっかり伝えることができます。Iメッセージは、アサーティブな対話の基礎となる重要なスキルです。
■ ノーを伝える練習:「断る=関係を壊す」ではない
「断るのが苦手」「頼まれるとつい引き受けてしまう」——そんな方にとって、「ノーを伝える」ことは大きな壁に感じられるかもしれません。しかし、アサーションでは「ノーを言えること」も大切な自己表現のひとつとされています。
ポイントは、相手を否定せず、代替案や事情を添えること。
- ✅「その日は別の予定があるので難しいですが、翌日ならお手伝いできます」
- ✅「気持ちは嬉しいですが、今は少し余裕がなくて、今回は見送らせてください」
相手との関係を大切にしながら、無理なく自分を守る姿勢は、むしろ信頼感を深めることにもつながります。
■ アクティブ・リスニング:聞く力もアサーションの一部
アサーションは「伝えること」だけではありません。相手の話をきちんと受け止める「アクティブ・リスニング(積極的傾聴)」も、アサーティブな関係性を築く上で欠かせない要素です。
アクティブ・リスニングの基本:
- 相手の目を見てうなずく
- 合いの手を入れて関心を示す(「なるほど」「それで?」など)
- 相手の言葉を繰り返して確認する(「つまりこういうことですか?」)
こうした姿勢は、相手に「大切にされている」という感覚をもたらし、自然と双方向のコミュニケーションが生まれやすくなります。
■ 非言語コミュニケーションの整え方
アサーションにおいては、「言葉」だけでなく、表情・声のトーン・姿勢などの「非言語」的な要素も大きな役割を果たします。
たとえば、自信のなさそうな声や視線をそらす態度では、どんなに言葉を工夫しても、相手に真意が伝わりにくくなってしまいます。
アサーティブな非言語の特徴:
- 落ち着いた声のトーン
- 相手をまっすぐ見つめる視線(過度に見つめすぎない)
- 開かれた姿勢(腕を組まない・背筋を伸ばす)
自分の気持ちを「言葉+態度」の両方で表現することで、誤解のないコミュニケーションが生まれます。
あなたならどう伝える?
以下のような場面で、アサーティブな伝え方を考えてみましょう。
場面1:友人に貸した本が返ってこない
- 感情:気まずさ・言い出しにくさ
- アサーティブな例:「以前貸した本、そろそろ読み終わったかな?よければ今度会うときに持ってきてくれると嬉しいです」
場面2:残業を頼まれたが、今日は体調が悪い
- 感情:断りにくさ・罪悪感
- アサーティブな例:「今日少し体調が優れなくて…申し訳ないのですが、今日は早めに帰らせてもらえますか?」
自分の気持ち+相手への配慮をセットにすることで、無理なく意思表示ができます。
- Iメッセージを使うことで、自分の気持ちを率直に伝えやすくなる
- 「ノー」と言うことは、関係を壊すどころか、むしろ信頼関係を築く手段になりうる
- 聴く姿勢(アクティブ・リスニング)もアサーティブなコミュニケーションの一部
- 非言語コミュニケーション(表情・声・姿勢)も、自分の真意を伝えるうえで重要
- 日常の小さな場面から練習を重ねることで、自然にアサーションを身につけられる
ここまでで、アサーションの基本的なスキルや実践のコツが少しずつ見えてきたのではないでしょうか。でも実際には、「私はアサーションが得意なのか?」「どのタイプに当てはまるんだろう?」と、自分自身の傾向を知ることもとても大切です。
次章では、自分のコミュニケーションスタイルを見つめ直すためのチェックリストをご用意しました。あなたの中にある“対人関係のクセ”を一緒に探ってみましょう🔍
第4章:自分のアサーション傾向をチェックしよう
「アサーションを実践したい」と思っても、そもそも自分がどんなコミュニケーションスタイルなのかを知らなければ、うまく方向づけるのは難しいかもしれません。
人にはそれぞれ、育った環境や性格に基づく“対人関係のクセ”があります。そして、それは無意識に表れるため、自分では気づきにくいことも。
この章では、アサーティブ・攻撃的・受動的という3つの傾向をわかりやすく整理した上で、簡単なセルフチェックテストをご紹介します。自分のスタイルを客観的に把握することが、より良い関係づくりへの第一歩です🌼
■ 3つのコミュニケーション傾向を改めて整理しよう
アサーションは「自分と他人を同時に大切にする」態度でした。一方で、多くの人が以下のどれかに偏ったコミュニケーション傾向を持っていると言われています。
傾向 | 特徴 | 主な口ぐせ | 周囲からの印象 |
---|---|---|---|
受動的(非主張的) | 相手を優先して自分を抑える | 「まあ、いいです…」「どうでもいいです」 | おとなしい、自己主張しない、頼みやすい |
攻撃的 | 自分を優先し相手を支配する | 「普通はこうでしょ」「君のせいだ」 | 怖い、支配的、距離を取りたい |
アサーティブ | 自分も相手も尊重して伝える | 「私はこう感じます」「~してもいいですか?」 | 誠実、安心できる、信頼できる |
このように、どの傾向が強いかを自覚することは、アサーションを実践するうえで非常に大切です。
■ セルフチェック:あなたのスタイルを見つけてみよう
以下の10項目を読んで、自分にどれくらい当てはまるかをチェックしてみましょう。
【アサーション傾向セルフチェック】
質問 | はい | いいえ |
---|---|---|
1. 断りたい時に、きっぱり断ることができる | □ | □ |
2. 苦手な相手にも、丁寧に意見を伝える努力ができる | □ | □ |
3. 相手の立場も尊重しながら自分の意見を伝えたいと思っている | □ | □ |
4. 怒りを感じたとき、暴言ではなく言葉で説明しようとする | □ | □ |
5. 頼まれたことを無理して引き受けて後悔することが少ない | □ | □ |
6. 周囲から「落ち着いていて話しやすい」と言われる | □ | □ |
7. 自分の考えに自信を持っている | □ | □ |
8. 他人の意見に合わせすぎて疲れることが少ない | □ | □ |
9. 自分を責めすぎることがあまりない | □ | □ |
10. 話し合いの場で相手を攻撃せずに意見を主張できる | □ | □ |
✅ 「はい」が8個以上の方:アサーティブ傾向が強いです
✅ 「はい」が4~7個の方:受動的または混合傾向があるかもしれません
✅ 「はい」が3個以下の方:受動的または攻撃的なスタイルが強く出ている可能性があります
※このチェックはあくまで気づきのきっかけであり、診断や評価ではありません。
■ 傾向別アドバイス:あなたに合った第一歩
①受動的な傾向がある人へ
人に気を使いすぎて、言いたいことを飲み込んでしまいがちな方は、自分の「小さな違和感」に気づくことから始めてみましょう。
たとえば、「本当は違うと思ったけど、黙ってしまった」など、小さな“飲み込んだ気持ち”を書き留めてみることは、自分の感情を尊重する練習になります。
②攻撃的な傾向がある人へ
相手をねじ伏せるように話してしまう傾向がある方は、「相手がどう感じるか」に一瞬立ち止まる習慣をつけてみましょう。
「この言い方、もし自分が言われたらどう感じる?」という問いを挟むだけで、伝え方が少しずつ変わってきます。
③アサーティブ傾向がある人へ
自分のスタイルに気づけているあなたは、ぜひそれを「維持」しながら、周囲へのサポートも意識してみましょう。チームや家庭の中で、他の人が安心して話せる場づくりができる存在として、アサーションの輪を広げていけます。
- アサーションの実践には、自分の現在の傾向を把握することが大切
- 人には「受動的」「攻撃的」「アサーティブ」の3つのスタイルがある
- チェックリストを使って自分のクセや傾向に気づくことができる
- 傾向に応じた具体的な対処法を意識することで、無理なく改善が可能
- 自分の傾向を否定せず、優しく向き合う姿勢が成長につながる
自分のコミュニケーション傾向が見えてくると、「こういうとき、どう対応すればいいんだろう?」という具体的な場面が思い浮かぶようになる方も多いと思います。
次章では、日常の中でアサーションを実践していくための「練習方法」や「工夫の仕方」をご紹介します。最初からうまくできなくても大丈夫。ほんの少し言葉を変えるだけで、心地よい対話が生まれることがあります。
一緒に、無理なく始められるアサーションの第一歩を探っていきましょう🚶♀️
第5章:日常で活かすアサーションの練習法
アサーションを身につけるには、日常の中で“少しずつ”実践していくことが一番の近道です。とはいえ、「いきなり本音を伝えるのは怖い」「どうやって練習したらいいの?」と戸惑う気持ちもあるでしょう。
アサーションは、トレーニングや練習を通じて少しずつ体得していく“技術”です。
この章では、特別な道具や準備がなくても取り組めるアサーションの実践方法をご紹介します。誰でもできる小さな行動から、自分と相手の関係性を少しずつ整えていきましょう🌸
■ アサーションは「筋トレ」みたいなもの?
アサーションは、生まれつきの性格ではなく、誰でも練習して身につけることができるスキルです。心理学やカウンセリングの現場でも、「アサーション・トレーニング」は正式な支援法の一つとして用いられています。
とはいえ、いきなり完璧を目指す必要はありません。むしろ、小さな成功体験を積み重ねることが、自然と自信につながっていきます。ちょっとした声かけや言葉の工夫を「習慣」にしていくイメージで、焦らずにトライしてみましょう。
■ 初級編:身近な相手との“ひとこと”から始める
アサーションは、特別な場面でなくても練習できます。最初のステップとしておすすめなのは、「ありがとう」「お願い」「断り」の場面を意識的に使ってみることです。
例1:ありがとうをアサーティブに
- 「昨日助けてもらって嬉しかったです。本当にありがとう」
例2:お願いをアサーティブに
- 「今日は少し疲れているので、掃除を代わってもらえると助かります」
例3:断りをアサーティブに
- 「せっかくですが、今回は見送らせてください」
このように、自分の感情+具体的な内容+相手への配慮を意識するだけで、自然で優しい自己主張ができます。
■ 中級編:想定練習で“準備”しておく
実際の場面になると緊張して言葉が出てこない…という方には、事前に「心のシミュレーション」をしておくことが効果的です。
💡おすすめ練習法:アサーション・リハーサル
- よくある困りごとを想定する(例:急な誘いを断る場面)
- 相手と状況を具体的に思い浮かべる
- アサーティブな伝え方を声に出して練習する
- 鏡の前で表情や姿勢もチェックしてみる
このリハーサルは、実際の場面でも“すでに経験した”と脳が認識しやすくなり、スムーズな発話を助けてくれます。
■ 上級編:難しい相手にも自分の立場を伝える
アサーションの中でも難易度が高いのは、「権威がある相手」や「気を遣う相手」に対して意見を伝えることです。たとえば、上司や親、パートナーなど、感情的な反応をされる可能性がある相手には慎重になりがちです。
そんなときは、次の3ステップが役立ちます。
- 事実を伝える:「〇〇の件ですが、昨日の会議で話が出ていました」
- 気持ちを添える:「私は少し戸惑いを感じています」
- 希望を表現する:「できれば再確認させていただけると安心できます」
このように、攻撃的でも受け身でもなく、自分の立場と希望を淡々と伝えることがポイントです。
■ 続けるためのマインドセット
アサーションは、繰り返しになりますが「完璧を目指すもの」ではありません。「うまく言えなかった」「伝え方を間違えた」と感じても、それは“気づき”であり、次に活かせる貴重な材料です。
こんなふうに考えてみましょう。
- 「今日ちょっと頑張って伝えてみた自分、えらい」
- 「言えなかったけど、自分の気持ちには気づけたからOK」
- 「次はもう少し柔らかい言い方を試してみよう」
自分に優しくなれる言葉を、心の中にストックしておくと、アサーションの練習が続けやすくなります😊
- アサーションは、練習によって誰でも身につけられるコミュニケーションスキル
- 「ありがとう」「お願い」「断る」など、日常のひと言から実践できる
- シミュレーション(アサーション・リハーサル)で苦手な場面にも備えられる
- 難しい相手への対話は「事実+感情+希望」の3ステップが効果的
- 継続の鍵は「自分に優しいマインドセット」を持つこと
ここまで、アサーションとは何か、なぜ必要なのか、そしてどのように実践すればよいのかを段階的に学んできました。最初は難しく感じるかもしれませんが、少しずつ慣れてくると、人との距離感がより心地よく、そして安心感をもって築けるようになります。
最後に、本記事全体の内容を振り返りながら、アサーションを生活に根づかせるヒントを改めてまとめていきましょう✨
「アサーション」とは、自分の気持ちや考えを、相手を尊重しながら正直に伝えるコミュニケーションの方法です。単なる自己主張とは異なり、「自分も相手も大切にする」という対等な関係性を築く姿勢が特徴です。
現代社会では、人間関係によるストレスや「言えなさ」からくる疲れが増えている中、アサーションは心の健康を守る大切なスキルとなります。
Iメッセージやノーの伝え方、傾聴などの具体的な技術を少しずつ身につけていくことで、自分を大切にしながら他者とつながる力が育っていきます。はじめは勇気がいるかもしれませんが、小さな一歩を積み重ねることで、より自分らしいコミュニケーションが可能になります。
大切なのは、完璧を目指すことではなく、「自分と相手を思いやる気持ち」を忘れずに対話することです🌿