「デパス」という名前に聞き覚えのある方も多いかもしれません。

エチゾラムは、不安や緊張、不眠などの症状を和らげるために処方される抗不安薬の一つで、心療内科や精神科だけでなく、内科や整形外科でも幅広く使われています。

しかし、「長く飲み続けていいの?」「依存にならない?」といった不安を感じる方も少なくありません。

この記事では、エチゾラム(デパス)の効果や使われ方、副作用や注意点、そして減薬・断薬について、医師監修のもと解説していきます。

本記事はファクトチェックを徹底しており、青字下線が引いてある文章は信頼できる医学論文への引用リンクとなっています

エチゾラム(デパス)とは?基本情報と効果

不安や緊張、眠れない夜に処方されることの多い「エチゾラム(デパス)」。

今回は、精神科医の視点から、エチゾラムの基本的な特徴や効果、仕組みについて解説していきます。


エチゾラムの正式名称と商品名の違い(デパスとの関係)

エチゾラム(Etizolam)は、「ベンゾジアゼピン系類似薬(チエノジアゼピン系)」に分類される抗不安薬で、有効成分の名称です。

日本で広く知られている商品名が「デパス(Depas)」であり、有効成分はどちらもまったく同じです。

処方箋では「エチゾラム錠1mg」などと表記されることが一般的で、ジェネリック医薬品が多く流通しています。

そのため、病院や薬局では「デパスで」とお願いしても、実際にはエチゾラムとして処方されることがあります。

この薬は日本、インド、イタリアなど一部の国で使用されていますが、アメリカのFDA(食品医薬品局)や多くの欧州諸国では正式に医薬品としては承認されていません

海外の情報を参考にする際は、日本での使用状況とは異なる点に注意が必要です。

抗不安作用と筋弛緩作用のメカニズム

エチゾラムは、脳内の神経伝達物質「GABA(ガンマアミノ酪酸)」の働きを助ける薬です。

具体的には、GABA受容体のベンゾジアゼピン結合部位に作用し、GABAの抑制作用を増強します。

その結果、脳の過活動を落ち着かせ、不安や緊張を和らげる効果をもたらします。

この薬には「抗不安作用」や「筋弛緩作用」があり、たとえば以下のような場面で使われます:

  • 強い不安やパニックに悩まされているとき
  • 肩こりや緊張性頭痛があるとき
  • 自律神経の乱れによる動悸・胃痛・発汗などがつらいとき

また、比較的早く効き目が現れるため、プレゼン前の極度の緊張や一時的な不眠などにも頓服として処方されることがあります。


効果が出るまでの時間と持続時間(半減期)

エチゾラムは「短時間作用型」の抗不安薬に分類されます。

経口投与後、おおよそ30分〜2時間で効果が現れ始めるとされ、即効性が高いのが特徴です。

効果の持続時間を示す指標である「半減期」は、平均で約3.4時間と比較的短いですが、個人差によっては6〜17時間に及ぶこともあります

このような薬理特性により、1日2〜3回に分けて定期的に服用されることが多く、必要なときだけ飲む「頓服」としても使われます。

ただし、(後ほど詳しく副作用については触れますが)作用が短いために効果が切れると再び不安や不眠がぶり返すことがあるという報告もあります。

そのため、持続的な症状がある場合には、中間型や長時間作用型の抗不安薬が選ばれることもあります。

加えて、短時間作用型の抗不安薬は依存形成のリスクが比較的高いことも知られており、長期連用には注意が必要です。

自己判断での増量・中断は避け、必ず医師の指示に従って使用しましょう。


まとめ
  • エチゾラムは有効成分名で、商品名「デパス」としても知られています
  • ベンゾジアゼピン類似薬として、GABAの作用を増強し不安や緊張をやわらげます
  • 抗不安作用や筋弛緩作用に加え、強い催眠効果を持つこともあります
  • 服用後30分〜2時間ほどで効果が現れ、平均半減期は約3.4時間です
  • 効果の持続が短いため1日複数回の服用や頓服として使われることがあります
  • 短時間作用型であるがゆえに、依存性には注意が必要です

エチゾラムの基本的な特性がわかったところで、次に気になるのは「どんな場面で使われる薬なのか」という点ではないでしょうか。

実は、エチゾラムは不安障害やパニック障害にとどまらず、さまざまな診療科で幅広く処方されている薬です。

次章では、エチゾラムの適応疾患について詳しくご紹介していきます。

エチゾラム(デパス)はどんな症状に使われる薬?

エチゾラム(デパス)は、不安やパニックの症状に限らず、身体的な緊張や自律神経の乱れによる不調、さらには睡眠のトラブルなど、さまざまなシーンで処方されることがあります。

この章では、具体的にどのような疾患や症状に対してエチゾラムが使われているのかを、診断基準や添付文書に基づいて丁寧に解説していきます。


適応される主な疾患(不安障害、パニック障害、うつ病など)

エチゾラムは、日本国内において以下のような疾患や状態に対して厚生労働省から正式に適応承認を受けている薬です。

【エチゾラムの承認適応】

  • 神経症における不安・緊張・抑うつ・睡眠障害
  • うつ病・うつ状態に伴う不安・緊張・睡眠障害
  • 統合失調症に伴う睡眠障害
  • 心身症(高血圧症・消化性潰瘍・過敏性腸症候群など)
  • 頸椎症・腰痛症・筋収縮性頭痛などに伴う筋緊張状態

※参考

「神経症」とは、現在の診断基準(DSM-5-TR/ICD-11)における不安症群(Anxiety disorders)を含む広い概念であり、全般性不安症(GAD)や社交不安症(SAD)などが該当します。

これらの疾患では、心理的な不安と同時に、動悸・胃痛・発汗といった身体症状を伴うケースが多く、エチゾラムの抗不安作用と筋弛緩作用が有効とされます。

また、うつ病やうつ状態に「強い不安」や「緊張感」「不眠」が合併している場合にも、エチゾラムが補助的に処方されることがあります。

主治療薬はSSRIやSNRIなどの抗うつ薬ですが、症状が強い初期に限り短期間の併用が行われることがあります。

なお、統合失調症に対しては、不安や幻覚に対する効果はありませんが、睡眠障害に限って適応が認められています。この点は誤解が生じやすいため注意が必要です。


不眠・緊張・自律神経症状などへの使われ方

エチゾラムは、短時間作用型で即効性があるという特性から、以下のような症状にも広く処方されます。

【主な使用場面】

これらの症状は、心身症や自律神経失調症と診断されることも多く、ストレスや心理的要因が関係しているケースが大半です。

エチゾラムは、GABAの作用を増強することで、身体と心の過緊張をゆるめてくれる効果があります。

とくに、検査では異常が見つからないけれど「体調が悪い」と感じる患者さんにとっては、症状を一時的に軽減する補助薬として使われることが多くあります。

ただし、不眠やPMSへの使用については承認された適応症ではなく、医師の裁量による「適応外使用(off-label use)」となります。

使用にあたっては、医師の十分な説明と、患者の理解・同意が必要です。


精神科以外で処方されるケース(内科・整形外科・歯科など)

エチゾラムは精神科に限らず、内科・整形外科・歯科・耳鼻科などでも広く処方されている薬です。

これは、エチゾラムが持つ「心の不安だけでなく、体の緊張にも作用する」という性質に起因しています。

【代表的な使用例】

これらの使用例の多くは、添付文書上の「正式な適応」ではありません。

つまり、診療科によっては適応外処方に該当するケースが多いということです。

たとえば、メニエール病や突発性難聴におけるめまいや不安への使用顎関節症に伴う筋肉のこわばりや痛みへの使用は、あくまでも医師の判断による適応外の使用です。

ただし、臨床的には一定の有効性が報告されており、症状に対して「必要最小限・短期間で使用する」ことを前提に、慎重に処方されることがあります。

薬のリスクとベネフィットを十分に理解したうえで、医師と相談しながら服用することが大切です。


まとめ
  • エチゾラムの正式な適応症は「神経症・うつ病・心身症・筋緊張状態」などに伴う不安や緊張
  • 統合失調症では「睡眠障害」に限って適応があります
  • 自律神経失調症や不眠症状、PMS、顎関節症などにも補助的に使われるが、これらは適応外使用
  • 内科・整形外科・歯科・耳鼻科などでも症状緩和を目的に処方されることがあります
  • 適応外での使用は、医師の説明と患者の理解・同意が重要です

エチゾラムは、心の症状にも身体の症状にも広く対応できる薬であることがわかりました。

一方で、効果があるからこそ注意したいのが、副作用や依存性の問題です。

次の章では、エチゾラムに関連する副作用や注意点について、医師の視点からわかりやすく解説していきます。

エチゾラム(デパス)の副作用とリスク

エチゾラム(デパス)は、不安や緊張をやわらげる効果が高い一方で、副作用や依存性といったリスクも無視できません。

「眠くなりやすい」「やめるのが大変」といった声を耳にすることもあるのではないでしょうか。

ここでは、エチゾラムを服用するうえで知っておきたい副作用や長期使用のリスク、注意すべき併用薬について、医学的根拠に基づき解説していきます。


よくある副作用(眠気、ふらつき、記憶障害など)

エチゾラムの主な副作用は、脳の活動を抑えるGABA受容体への作用によって生じる中枢神経系の抑制効果に関連しています。

以下のような症状は比較的頻繁にみられます。

【代表的な副作用】

  • 眠気
  • ふらつき・めまい
  • 注意力・集中力の低下
  • 記憶障害(特に前向性健忘)
  • 倦怠感・脱力感

※参考

これらの症状はとくに高齢者で強く出やすく、転倒や誤嚥など二次的な事故のリスクを高めることがあります。

また、新しい出来事を覚えづらくなる「前向性健忘」はベンゾジアゼピン系で知られており、アルコールの併用や過量投与がリスクを高める要因になります。

そのため、車の運転や危険を伴う作業に従事する方は、服薬のタイミングや量について必ず医師と相談することが大切です。


長期使用による依存性と耐性

エチゾラムを含むベンゾジアゼピン系薬は、継続的な使用により「耐性」や「依存性」が生じる可能性がある薬剤です。

【耐性・依存のリスク】

  • 耐性:徐々に効果を感じにくくなり、量を増やしたくなる
  • 身体的依存:中断すると離脱症状が出る
  • 心理的依存:「薬がないと不安でいられない」という状態

これらは、数週間の連日服用でも生じうることがあり、とくに短時間作用型の薬は依存の形成リスクが高いとされています。

「効いているから」となんとなく飲み続けてしまう前に、いまの飲み方が適切かどうか、医師と定期的に確認していくことが大切です。


離脱症状とは?突然やめてはいけない理由

エチゾラムを急に中止することは避けるべきとされています。

その理由は、「離脱症状(withdrawal symptoms)」と呼ばれるつらい反応が起きるリスクがあるからです。

【よく見られる離脱症状】

  • 不安感や焦燥の再燃
  • 不眠、悪夢、感情の不安定さ
  • 手の震え、動悸、発汗、消化器症状
  • 集中困難、過敏感
  • まれにけいれん発作、幻覚、錯乱

※参考

とくに高用量を長期間服用していた方、もともと不安傾向の強い方は、こうした症状が重くなる可能性があるとされています。

アルコール・他の薬との併用リスク

エチゾラムは中枢神経の活動を抑える薬です。

このため、アルコールとの併用は非常に危険とされ、添付文書上も禁忌・慎重投与と明記されています。

【アルコールとの併用による主なリスク】

  • 呼吸抑制・意識障害
  • 記憶障害の悪化
  • 攻撃性や衝動性の増加(脱抑制)
  • 転倒や誤飲による事故リスク

※参考

アルコールもGABA作動系に作用するため、エチゾラムとの相互作用で鎮静効果が大幅に増強され、意識が混濁したり、会話や行動を覚えていない状態になることもあります。

また、以下のような薬との併用にも注意が必要です

  • 他のベンゾジアゼピン系抗不安薬や睡眠薬(ソラナックス、ワイパックス、ゾルピデムなど)
  • 抗うつ薬(SSRIや三環系)
  • 抗精神病薬(リスペリドン、オランザピンなど)
  • 抗ヒスタミン薬(第一世代)

特に高齢者や複数の薬を服用している方では、副作用のリスクがさらに高まるため、処方前には薬剤師や主治医に薬の併用歴を正確に伝えることが重要です。


まとめ
  • エチゾラムでは眠気・ふらつき・注意力低下・記憶障害がよくみられます
  • 長期使用により、耐性・身体的/心理的依存が形成されることがあります
  • 急な中断によって離脱症状が起きるため、減薬は医師の指導のもとで段階的に行います
  • アルコールや他の中枢抑制薬との併用は危険で、呼吸抑制や意識障害を招く恐れがあります
  • 高齢者や多剤併用中の方は、より慎重な服薬管理が必要です

ここまでで、エチゾラムの副作用や長期使用のリスクについて詳しく解説しました。

では、数ある抗不安薬の中で、エチゾラムはどんな位置づけにあるのでしょうか?

次の章では、ソラナックスやワイパックスなど、他の抗不安薬と比較しながら、エチゾラムの特徴や選ばれる理由についてご紹介します。

他の抗不安薬(ソラナックスやワイパックス)との比較|強さ・効果・使われ方の違い

エチゾラム(デパス)は広く処方されている抗不安薬のひとつですが、実はほかにもさまざまなタイプの抗不安薬が存在します。

「何が違うの?」「どの薬が合っているのか不安」と感じている方も多いかもしれません。

この章では、抗不安薬を作用時間で分類し、それぞれの代表的な薬剤との違いや特徴、そしてどんな人にどの薬が向いているのか、整理してご紹介します。


短時間型・中間型・長時間型の違い

抗不安薬は、体内にどれくらいの時間とどまるか(血中半減期)によって大きく3つのタイプに分類されます。

【抗不安薬の分類と特徴】

分類半減期の目安特徴代表的な薬剤名
短時間型12時間以下即効性があり頓服(必要な時だけ使う)に向くが、離脱が出やすい傾向エチゾラム、アルプラゾラム(ソラナックス)
中間型約12〜40時間効果が長めに続き、1日2回で済むことが多いロラゼパム(ワイパックス)
長時間型40時間以上血中濃度が安定しやすく、依存や離脱が緩やかジアゼパム(セルシン)、クロナゼパム(リボトリール)

短時間型は急性期の強い不安やパニック発作などに即効性があり、頓服として適していますが、効果が切れると不安がぶり返しやすく、依存や離脱症状が出やすいとされています。

一方、長時間型は体内での血中濃度が比較的安定しており、離脱症状が穏やかで、依存形成のリスクも相対的に低いとされることがあります(ただし、ゼロではありません)。

減薬時の移行先として選ばれることもあります。


エチゾラムと他薬(ソラナックス、ワイパックスなど)との比較

エチゾラムは、抗不安薬の中でも即効性が高く、筋弛緩作用や催眠作用が比較的強めとされる薬です。

ここでは、臨床でよく用いられる代表的な薬剤と比較してみましょう。

🟦 ベンゾジアゼピン系抗不安薬の比較表

薬剤名(一般名/商品名)作用時間抗不安作用の強さ依存性リスク備考
エチゾラム(デパス)短時間★★★★★★即効性が高いが依存・離脱リスク高め。海外では規制あり。
アルプラゾラム(ソラナックス)中間★★★★★★抗不安作用が強く、パニック症に多用。依存に注意。
ロラゼパム(ワイパックス)中間★★☆★★☆筋弛緩作用も強い。肝障害でも使いやすい。
ジアゼパム(セルシン)長時間★★☆★★☆持続時間が長く、離脱症状が出にくい。
ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)長時間★★☆★〜★★
(個人差あり)
非常に長い半減期。離脱症状が起きにくいが翌日残ることも。

副作用や依存の出現にも注意が必要です。

症状やライフスタイルに応じて、薬剤の持続時間や副作用の傾向を見ながら選択されます。

抗不安薬は「効けばよい」というものではなく、副作用・依存性・生活への影響を最小限に抑えることも重要です。

精神療法や環境調整、必要に応じて抗うつ薬などの併用とあわせて、主治医と一緒に「最適な選択」を重ねていくことが大切です。


まとめ
  • 抗不安薬は作用時間により「短時間型・中間型・長時間型」に分類されます
  • エチゾラムは短時間型で即効性が高く、筋弛緩・催眠作用がやや強めです
  • ソラナックス、ワイパックスなどは持続時間や作用の違いに特徴があります
  • 長時間型の薬は血中濃度が安定しやすく、減薬時の離脱症状が穏やかです
  • 症状の出方や生活スタイルに応じて、薬の選択肢は異なります

ここまでで、エチゾラムをはじめとした抗不安薬の種類や特徴の違いをご理解いただけたかと思います。

とはいえ、実際に処方されるときには「どんな飲み方をするのか」「ほかの薬との飲み合わせは大丈夫か」など、気になることも多いはずです。

次の章では、エチゾラムを処方される際の注意点や、医師に相談すべきポイントについて詳しく見ていきます。

服薬頻度や併用などの注意点


処方のパターン(頓服・定期服用など)

エチゾラムの服用パターンは、大きく「頓服(必要時に飲む)」と「定期服用(毎日決まった時間に飲む)」に分かれます。

症状の出方や生活スタイルに応じて処方が変わるのが特徴です。

【1】頓服での使用(必要時のみ服用)

  • 強い不安や緊張が予測される場面(人前での発表、外出時など)
  • パニック症社交不安症などで発作的な不安が出るケース
  • 医科・歯科の処置前に不安や緊張を緩和する目的(※ベンゾジアゼピン系全般として使用されることがある)

エチゾラムは最大血中濃度到達時間が約0.5〜2時間とされ、即効性があるため頓服に向いています。

頓服使用では連続的に飲まないことが前提となるため、連日服用と比較して依存リスクは相対的に低いと考えられています。

ただし、「発作が不安で毎日飲むようになった」「効きにくくなってきた」などの変化があれば、依存の兆候である可能性もあるため、医師との相談が必要です。

【2】定期服用(1日2〜3回)

  • 不安や緊張感が慢性的に続く状態(例:全般性不安症、心身症、うつ状態の補助
  • 医師の判断で1日2〜3回に分けて服用するケースが多い

エチゾラムは半減期が比較的短いため、定期的に服用して血中濃度を安定させる処方がとられることがあります。

ただし、添付文書にもあるように、長期連用は推奨されていません

耐性や依存形成のリスクがあるため、治療期間の設定や定期的な見直しが重要です。

自己判断での増減量や突然の中断は避け、必ず医師の指示に従いましょう。


他の薬を飲んでいる人・持病がある人の注意点

エチゾラムは他の薬と作用が重なることで、副作用が増強されるリスクがあります。

また、持病がある方は、薬の代謝や影響が異なることがあるため、以下のようなケースでは特に注意が必要です。

【1】他の薬を服用中の方

以下のような薬と併用する場合は、過度の鎮静やふらつき、認知機能低下などのリスクが上昇します。

  • Z系睡眠薬(ゾルピデム、エスゾピクロンなど):中枢抑制作用が重なり、過鎮静や呼吸抑制のリスク
  • 他のベンゾジアゼピン系薬(ソラナックス、ワイパックスなど):作用が重複し副作用が増加
  • 抗うつ薬(SSRI、三環系など):併用で過鎮静や薬物相互作用によるふらつきが報告されることも
  • 抗精神病薬(リスペリドン、オランザピンなど):眠気や認知機能への影響が強く出る可能性
  • 抗ヒスタミン薬(眠くなるタイプの風邪薬やアレルギー薬):眠気や反応速度の低下に注意

特に高齢者多剤併用中の方は、薬物相互作用の影響を受けやすくなります。

市販薬を含めたすべての服薬歴を医師に伝えることが大切です。

【2】持病がある方の注意点

  • 呼吸器疾患(COPD、睡眠時無呼吸症候群など)
     → エチゾラムには呼吸抑制作用があるため、これらの疾患がある方では症状の悪化や低酸素血症のリスクが高まります。
  • 肝機能障害
     → 肝臓で代謝されるため、薬が体内に長く残りやすく、副作用が強く出ることがあります。医師による用量調整が必要です。
  • 腎機能障害
     → エチゾラムの排泄には腎機能の関与が比較的少ないとされていますが、併用薬の影響や全身状態を踏まえて注意が必要です。
  • 高齢者
     → 代謝機能が低下しているため、ふらつき・転倒・せん妄といった副作用のリスクが高くなります。少量から慎重に使用し、定期的な見直しが求められます。
  • 妊娠中・授乳中の方
     → エチゾラムは胎児・乳児への影響が否定できないため、どうしても必要な場合は、医師と十分にリスク・ベネフィットを相談しながら使用が検討されます。

まとめ
  • エチゾラムは、頓服と定期服用で使い方が大きく異なります
  • 頓服は即効性があり便利だが、頻度が高まったら依存に注意が必要です
  • 定期服用では1日2〜3回に分けて使われ、長期連用には慎重な見直しが必要です
  • 他の薬との併用では中枢抑制作用の重複に注意が必要です
  • 呼吸器疾患や肝機能障害、高齢者では副作用リスクが高まるため、個別の配慮が必要です
  • 妊娠・授乳中は原則避け、必要時は医師と慎重に相談しましょう

ここまでで、エチゾラムの使い方や併用時の注意点について解説してきました。

では、実際にこの薬を飲み続けていて「そろそろやめたい」「依存が心配」と感じたときは、どうすればよいのでしょうか?

最終章では、減薬・断薬を考えている方に向けて、安全なやめ方と注意点について詳しく解説していきます。

最終章:エチゾラムの減薬・断薬のステップ

エチゾラムを長期間服用していると、「このまま続けていて大丈夫かな」「やめたいけど不安でできない」と感じる方も少なくありません。

この章では、エチゾラムを安全にやめていくための考え方や、医師と一緒に取り組む減薬のステップ、離脱症状とその対処法について詳しくご説明します。


医師の指導のもとで行う減薬ステップ

エチゾラムの減薬は、計画的に段階を踏んで進めることが基本です。

突然の中断は、強い不安や不眠などの離脱症状を引き起こすおそれがあるため、必ず医師の指導のもとで行いましょう。

一般的な減薬の流れ

  1. 現状の整理とゴールの共有
    • 服用量や頻度、服用期間を確認
    • 「減薬」か「断薬」か、どこまでを目指すかを医師と話し合う
  2. 段階的な減量
  3. 長時間作用型への置換(必要に応じて)
    • 離脱症状が強い場合などは、ジアゼパム(セルシンなど)のような作用時間の長い薬に一時的に置き換えた上で、より安定した減薬が行われることもあります(クロス・タイトレーション)
  4. 心理的支援の活用
  5. 生活習慣の整備
    • 規則正しい睡眠、軽い運動、バランスのとれた食事などが、心身の安定を支える大きな助けになります

減薬中に出やすい離脱症状と対処法

エチゾラムを減薬・断薬すると、一時的に心身の不調を感じることがあります。

これは「離脱症状」と呼ばれ、薬に身体が慣れていたことによる反応です。

よく見られる離脱症状

  • 不安感の再燃
  • 入眠困難や中途覚醒などの不眠症状
  • 動悸・発汗・手足の震え
  • めまい・吐き気・頭痛
  • 感覚過敏(音・光などへの過敏反応)
  • 集中困難やそわそわ感

※参考

これらの症状は個人差が大きく、軽度であれば1〜数週間以内に自然と落ち着くことが多いとされています。

対処法

  • 離脱症状が出たときは無理をせず、減薬ペースを見直す
  • 状態に応じて、一時的に減薬をストップすることも医師と相談のうえで可能です
  • 「不調は一時的なもの」「体が回復のプロセスにある」と理解し、過度に不安にならないことも大切です

まとめ
  • エチゾラムは長期使用により依存や耐性が形成される可能性があります
  • 減薬を考える際は、必ず医師と相談し、自己判断でやめないことが重要です
  • 一般的には5〜10%ずつの減量を2〜4週ごとに行う方法が推奨されます
  • 離脱症状が出た場合も、ペース調整や一時的な対処で乗り越えられることが多いです
  • CBTや生活習慣の改善を併用することで、減薬の成功率が高まります

終わりに

今回の記事では、エチゾラムの基本情報から、実際にどのような症状や場面で使われるのか、そして副作用やリスク、減薬を考える際のステップまで、幅広くご紹介しました。

薬に対して不安を抱えている方も、「正しく理解することで、安心して向き合える」と感じていただけたら幸いです。

服薬について迷いがあるときは、一人で抱え込まず、必ず医師や専門家に相談してください。

薬は“使い方”が大切です。あなたの状態や生活に合わせて、最適な方法を一緒に考えていきましょう。

◆ 本記事のまとめ

  • エチゾラムは不安や緊張、不眠に用いられる抗不安薬です
  • デパスという名前で広く知られていますが、正式名称はエチゾラムです
  • 筋弛緩作用や抗けいれん作用もあり、整形外科や歯科での処方例もあります
  • 副作用としては眠気・ふらつき・依存性などに注意が必要です
  • 減薬・断薬は医師と相談し、計画的に進めることが大切です

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