「リフレックスって、どんな薬なんだろう?」
初めてミルタザピン(商品名:リフレックス)を処方されたとき、多くの方がそんな疑問や不安を抱かれるのではないでしょうか。
眠気や体重増加などの副作用を耳にして、戸惑う方も少なくありません。
でも、正しく知ることで、薬との付き合い方がずっと楽になることがあります。
この記事では、ミルタザピンの特徴・効果・副作用・減薬方法までを、専門的かつやさしい言葉で丁寧に解説しています。
※本記事はファクトチェックを徹底しており、青字下線が引いてある文章は信頼できる医学論文への引用リンクとなっています。
ミルタザピン(商品名:リフレックス)とは?基本情報を解説
この章では、ミルタザピンの基本的な作用や特徴、適応される疾患、他の抗うつ薬との違いについて、解説していきます。
どんな薬?作用機序と特徴
ミルタザピンは、「四環系抗うつ薬」に分類される抗うつ薬です。
従来の三環系抗うつ薬に比べ、副作用が少なく効果が安定しているため、現在ではうつ病治療において比較的使いやすい薬とされています。
日本では「リフレックス®」や「レメロン®」という商品名で販売されています。
ミルタザピンの特徴は、ノルアドレナリン作動性および特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA:ナッサ)という独自の作用機序を持っている点です。
これは、以下のようなメカニズムに基づいています。
- 中枢神経のα2自己受容体を遮断することで、ノルアドレナリンとセロトニンの放出を促進
- 同時に、セロトニン受容体の一部(5-HT2・5-HT3)を遮断し、副作用の軽減や安定した効果を実現
特にセロトニンの中でも5-HT2A・2C受容体を遮断することにより、不安や焦燥、睡眠障害といった症状の改善に貢献するとされています。
また、5-HT3受容体を遮断することで、SSRIなどでよくみられる吐き気や下痢といった消化器系副作用が少ないというメリットがあります。
このように、ミルタザピンは抗うつ作用と抗不安作用、睡眠改善作用を併せ持つため、さまざまな症状に対応しやすい薬として臨床で広く活用されています。
ミルタザピンの適応疾患(うつ病・不眠など)
ミルタザピンの主な適応はうつ病およびうつ状態です。
特に、以下のような特徴をもつ患者さんに対して処方されることが多いです。
- 不安が強く、気分の落ち込みに加えて睡眠障害が目立つ
- 食欲不振や体重減少を伴うような身体症状を伴ったうつ状態
- SSRIやSNRIで副作用が強く、継続が困難だった人
また、日本では「不眠症」に対して正式な適応はありませんが、臨床現場ではうつ病に伴う入眠困難や中途覚醒などに対して選択されやすい薬です。
国際診断基準であるICD-11やDSM-5-TRにおいても、うつ病は多様な身体症状や精神症状を伴う疾患であると定義されており、特に睡眠や食欲の変化が目立つタイプのうつ病には、ミルタザピンの特性がよくマッチすると考えられます。
さらに、重症うつ病の患者さんに対しては、他の抗うつ薬との併用療法(増強療法)の一部としても使用されることがあります。(ただしエビデンスは限定的で賛否あり)
この場合、ミルタザピンの抗不安作用や睡眠改善効果を活かしながら、SSRIやSNRIの効果を補完する形で用いられます。
他の抗うつ薬であるSSRIやSNRIとの違い(副作用の比較)
抗うつ薬にはさまざまな種類がありますが、現在もっとも多く使われているのはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)です。
ミルタザピンは、これらと異なるNaSSAというメカニズムを持つため、効果や副作用の出方にも違いがあります。
項目 | SSRI | SNRI | ミルタザピン(NaSSA) |
---|---|---|---|
主な作用 | セロトニンの再取り込み阻害 | セロトニン+ノルアドレナリン再取り込み阻害 | α2受容体遮断→セロトニン・ノルアドレナリン放出促進 |
眠気 | 少ない~中程度 | 少ない~中程度 | 強め(特に初期) |
吐き気・下痢 | 出やすい | 出やすい | 少ない |
性機能障害 | 起こりやすい | 起こりやすい | 少ない |
このように、ミルタザピンは“副作用の質が違う”というのが最大の特徴です。
SSRIでは吐き気や性機能障害が問題になることがありますが、ミルタザピンではそれらは比較的少なく、一方で眠気が出やすい傾向があります。
そのため、患者さんの症状特性やライフスタイルに応じて、どの薬が適しているかを検討することが大切です。
たとえば「食欲が落ちて眠れない」といった人にはミルタザピンが適することがありますし、逆に「日中の眠気が困る」という人には他の薬の方が向いていることもあります。
抗うつ薬のSSRIについて詳しく知りたい方はこちら↓
- ミルタザピンはNaSSAに分類される抗うつ薬で、睡眠改善や不安軽減にも効果がある
- 吐き気や性機能障害などのSSRI特有の副作用が少ない
- 食欲増進や眠気などの副作用が出やすい点に注意が必要
- うつ病の中でも、睡眠・食欲低下が強いタイプに特に有効
- 他の抗うつ薬と違う作用機序のため、増強療法でも用いられる
ミルタザピン(リフレックス)の服用方法、効果が出るまでの期間
ミルタザピンを服用するにあたって、多くの方が「どれくらいで効果が出るのか」「効かないときはどうすればいいのか」といった疑問や不安を抱かれます。
薬の効果には個人差があり、期待通りに効かないと焦ってしまうこともあるかもしれません。
この章では、ミルタザピンの効果発現のタイミングや服用量の目安、効果を感じにくいときの対応について、専門的な視点からやさしく解説していきます。
効果について、身体症状の改善は1~2週間 / 抑うつ気分には2~4週間後に感じるようになる
抗うつ薬の効果は即効性があるわけではなく、服用を開始してから効果が実感できるまでには時間がかかるのが一般的です。
ミルタザピンも例外ではなく、通常は1~2週間程度で睡眠や食欲といった身体症状の改善が見られ始めることが多いです。
一方で、気分の落ち込みや無気力といった「中核的な抑うつ症状」については、おおよそ2〜4週間程度をかけて徐々に改善していく傾向があります。
このタイムラグは、薬が神経伝達物質に作用して脳のバランスを整えるまでに必要な神経の可塑性(柔軟性)の変化や、遺伝子発現の変化が関係していると考えられています。
また、ミルタザピンは初期段階で眠気が強く現れることが多く、不眠症状を抱える方にとっては、早い段階で「眠れるようになった」と実感されることがあります。
ただし、日中の強い眠気が出る可能性もあるため、最初の1〜2週間は特に慎重な経過観察が必要です。
効果の出方には個人差があるため、「すぐに効かない=自分には合わない」と早合点するのではなく、数週間は継続して様子をみることが推奨されます。
効果が乏しい、あるいは副作用が強い場合は、主治医と相談しながら用量調整や他の薬への変更を検討することが重要です。
用量・服用タイミング・継続期間の目安
ミルタザピンの標準的な開始用量は15mg/日です。
日本では「リフレックス®錠15mg/30mg」が市販されており、症状や体格、年齢などに応じて調整されます。
用量は最大で45mg/日まで増量可能ですが、30mg前後で十分な効果が得られる患者さんも多くいます。
服用のタイミング
基本的には就寝前に1日1回服用するのが一般的です。
これは、ミルタザピンのヒスタミンH1受容体遮断作用による眠気が強いため、夜間に服用することで日中の眠気を最小限に抑えるためです。
ただし、人によっては日中にも眠気が残るケースもあるため、その場合は用量を調整したり、服用時間を少し早めたりするなどの工夫が必要となります。
継続期間の目安
うつ病の治療においては、症状が改善してもすぐに服薬を中止せず、再発防止のためにある程度の期間継続することが重要です。
ガイドライン(例:日本うつ病学会治療ガイドライン、NICEガイドラインなど)では、改善後も6ヶ月〜1年程度の継続治療が推奨されています。
早期に中断すると、再発や再燃のリスクが高まることが報告されているため、「もう大丈夫かな」と自己判断せずに、主治医と相談しながら中止時期を見極めることが大切です。
効果が感じられないときの対応
数週間服用しても改善がみられない場合、いくつかの対応策が考えられます。
1. 用量の調整
ミルタザピンは低用量(15mg程度)で鎮静作用が強く、抗うつ効果は高用量(30mg以上)でさらに発揮されやすいという特徴があります。
したがって、「眠れるようにはなったが気分が改善しない」という場合、用量を適切に増量することで改善が見込まれるケースもあります。
2. 服用継続による時間的経過を待つ。4週間は継続する
効果が出るまでに時間がかかるため、焦らずに4週間程度は継続してみることも重要です。
急いで薬を変更すると、不安定な状態が続いてしまう可能性もあります。
3. 他剤への変更や増強療法
どうしても効果が不十分な場合には、他の抗うつ薬への切り替え(スイッチング)や、ミルタザピンを他剤に追加する増強療法が検討されます。
たとえば、SSRIと併用することで相乗効果を狙うといった戦略がとられることもあります。
ただし、こうした併用療法にはまだエビデンスが確立されていないのと、副作用リスクもあるため、必ず医師のもとで慎重に判断されるべきです。
4. 服薬以外の治療の併用
薬物療法の効果が十分でない場合には、認知行動療法(CBT)や心理療法の併用が効果的な場合もあります。
特に「考え方のクセ」や「ストレス耐性」の改善を目指すことで、薬だけでは届きにくい領域を補うことができます。
【CBTについて詳しく知りたい方はこちら↓】
- ミルタザピンは効果発現までに2~4週間かかることが多い
- 初期には睡眠や食欲の改善が先に現れることもある
- 服用は就寝前1回、開始用量は15mg、最大45mgまで調整可能
- 継続期間は改善後も6ヶ月~1年を目安に再発予防のため継続が推奨される
- 効果が乏しい場合は、増量、他剤併用、心理療法併用など多面的な対応がある
ここまでで、ミルタザピンの効果の出方や服用のタイミング、効果が感じられないときの対処法について理解が深まったかと思います。
次の章では、服用を続けるうえで多くの方が気になる「副作用」について詳しく解説します。
ミルタザピンの副作用と併用リスクなどの注意点
ミルタザピン(リフレックス)は、不眠や食欲不振など身体症状を伴ううつ病に対して有効性が高く、比較的使いやすい抗うつ薬とされていますが、副作用や併用時の注意点も把握しておくことが大切です。
よくある副作用(眠気・体重増加・口渇など)
ミルタザピンでよく見られる副作用には以下のようなものがあります。
1. 眠気(傾眠) – 「眠くなる?」
もっとも頻度が高く、臨床試験でも約半数(50%前後)の患者に認められた副作用です。
これはヒスタミンH1受容体遮断作用による鎮静効果の一環で、夜間の睡眠導入には有利に働くものの、日中の眠気として困ることもあります。
特に服用初期や用量が低い段階では、眠気が強く出やすい傾向があります。
2. 体重増加・食欲亢進 – 「太りやすい?」
ミルタザピンは抗うつ薬の中でも体重増加のリスクが比較的高いとされており、複数のメタアナリシスにおいてもSSRIなどより有意に体重が増加しやすいと報告されています。
これはヒスタミンH1受容体や5-HT2C受容体の遮断によって食欲が増進される作用があるためと考えられています。
3. 口渇・便秘・めまい
頻度はやや低いものの、口が乾く・便秘がちになる・立ちくらみを起こすなどの副作用も報告されています。
これらは抗コリン作用やα1受容体遮断による血圧変動などが関係していると推測されます。
4. 性機能障害が比較的少ない
SSRIなどと比較すると、性欲減退・勃起障害・オーガズム障害などの性機能障害は起こりにくいとされており、この点は治療継続のうえでのメリットとも言えます。
副作用は個人差が大きいため、「よくある」と言われる症状がまったく出ない人もいれば、逆に少数派の副作用が強く出る人もいます。
症状が強く出た場合は、自己判断で中止せず、必ず主治医に相談するようにしましょう。
セロトニン症候群など重篤な副作用のリスク
ミルタザピンはセロトニン系にも作用する薬剤であるため、セロトニン症候群の可能性もゼロではありません。
ただし、単剤使用ではセロトニン症候群のリスクは非常に低いとされており、他のSSRIやSNRI、トラマドール、リネゾリドなどと併用した場合に注意が必要です。
セロトニン症候群の症状
- 発熱、発汗
- 振戦(ふるえ)、筋硬直
- 興奮、錯乱、昏睡
- 自律神経の不安定(高血圧・頻脈など)
早期に適切な対応をすれば回復可能ですが、進行すると命にかかわる場合もあるため、併用薬を処方されている方や複数科受診中の方は特に注意が必要です。
また、極めてまれではありますが、好中球減少や肝機能障害、低ナトリウム血症といった副作用の報告もあります。
血液検査などを定期的に行っている場合は、その結果にも注意を払いましょう。
他の薬との相互作用に注意すべきケース
ミルタザピンはCYP450酵素系(主にCYP2D6、CYP3A4、CYP1A2)で代謝されており、これらに関与する薬剤との相互作用に注意が必要です。
注意が必要な併用例
- CYP3A4阻害薬(イトラコナゾール、クラリスロマイシンなど) → ミルタザピン血中濃度上昇の可能性
- CYP誘導薬(カルバマゼピン、リファンピシンなど) → 血中濃度低下、効果減弱の可能性
- 中枢神経抑制作用のある薬(アルコール、睡眠薬、抗不安薬) → 鎮静作用が増強されるリスク
- 他のセロトニン作用薬(SSRI、SNRI、トラマドールなど) → セロトニン症候群のリスク上昇
また、降圧剤や抗てんかん薬など、ミルタザピンと直接的な代謝経路で重ならなくても、副作用(ふらつき、眠気など)が増強することがあるため、注意が必要です。
「性格が変わる?」感情への影響を科学的に検証
「抗うつ薬を飲んだら性格が変わった」「感情が鈍くなった気がする」という声を耳にすることがあります。
ミルタザピンに限らず、精神作用を持つ薬に対してこのような不安を抱くのは自然なことです。
結論からお伝えすると、ミルタザピンが“性格そのもの”を変えてしまうという科学的根拠は存在しません。
ただし、以下のような現象が間接的にそう感じさせることはあります。
- 感情の幅が安定することにより「以前より淡々としている」と感じられる
- 抑うつ状態の改善により以前と人間関係の接し方が変わる
- 睡眠がとれるようになったことでエネルギー配分が変わる
また一部の抗うつ薬(とくにSSRI)では「感情の鈍麻(emotional blunting)」が生じることがあり、快・不快の反応がやや平坦になるという報告があります。
しかし、ミルタザピンではこの現象は比較的少ないとされており、むしろ情動の回復を実感する方も多いのが実際です。
感情や性格の変化に不安がある場合は、遠慮せず主治医に伝えることが大切です。
医師との対話を通じて、自分自身の状態を客観的に把握し、納得のいく治療を選んでいきましょう。
- ミルタザピンの主な副作用は眠気、体重増加、口渇、便秘など
- 性機能障害の頻度は比較的低く、治療継続上のメリットになる
- セロトニン症候群は単剤ではまれだが、併用薬次第でリスクが高まる
- CYP3A4、CYP2D6など代謝酵素に関与する薬との併用に注意
- 性格が変わるという科学的証拠はなく、感情の安定や回復が背景にあることが多い
ここまでで、ミルタザピンに見られる副作用や、他の薬との併用時の注意点についてご理解いただけたかと思います。
次の章では、「この薬はどんな人に向いていて、どんな人には注意が必要か?」といった視点から、禁忌や慎重投与の対象、妊娠中や高齢者での使用について解説していきます。
ご自身やご家族に関わる情報も多いため、ぜひ続けてご覧ください。
ミルタザピンの服用時に気をつけたい人(禁忌・慎重投与)
ミルタザピンは多くの方に効果的な抗うつ薬ですが、すべての人に安全に使えるわけではありません。
とくに妊婦さんや高齢の方、持病を抱える方は、薬の代謝や副作用の出方に個人差が大きくなるため、慎重な判断が求められます。
高齢者・子ども・妊婦・授乳婦への影響
高齢者はこまめに観察しながら投与
高齢者は肝機能や腎機能が低下していることが多く、薬の代謝や排泄に時間がかかる傾向があります。
ミルタザピンは半減期が20〜40時間程度とやや長く、鎮静作用が強いため、転倒やせん妄などのリスクが高くなることがあります。
そのため、高齢者への投与は低用量から慎重に開始し、副作用の出現をこまめに観察することが重要です。
また、高齢者は多剤併用(ポリファーマシー)になりやすいため、他薬との相互作用にも注意が必要です。
小児・未成年は原則使用しない
日本では、ミルタザピンは18歳未満の小児・思春期の使用に対する十分な安全性と有効性が確立されていません。
そのため、原則として小児には投与されませんが、医師が必要と判断した場合には慎重に使用されることもあります。
なお、SSRIを含む多くの抗うつ薬と同様、10代における自殺企図リスクの一時的な上昇が報告されているため、小児・思春期の使用にあたっては家族を含めた綿密なモニタリングが求められます。
妊婦は最小限の容量、最短期間で
妊娠中の使用に関しては、ミルタザピンは動物実験で催奇形性は認められていないとされており、また、ヒトでの大規模な奇形リスクの増加も確認されていません。
ただし、十分なヒトデータが存在しないため「安全」とは言い切れないのが実情です。
特に妊娠後期では、新生児薬物離脱症候群(過敏性、哺乳障害、筋緊張異常など)が起こるリスクが報告されています。
やむを得ず使用する場合は、最小限の用量・最短期間での投与が原則とされます。
授乳婦の危険は少ない
ミルタザピンは母乳中への移行量が少ないと報告されていますが、それでも少量ながら移行するため、授乳中の使用には注意が必要です。
現在のエビデンスでは、比較的安全とする報告が多い一方で、乳児の傾眠や摂食障害などの軽度症状が報告されている例もあります。
そのため、授乳を続けるかどうかは医師と相談のうえで決定することが推奨されます。
アルコール・カフェインとの併用は?
アルコールは原則避けるべき
ミルタザピンには中枢神経抑制作用(眠気を誘う作用)があるため、アルコールと併用するとその効果が相加的に強まるおそれがあります。
具体的には、強い眠気や集中力の低下、判断力の鈍化などが起こりやすくなるため、服用中の飲酒は原則として避けるべきとされています。
また、アルコール自体も抑うつ気分を悪化させることがあるため、治療効果を損なう可能性もあります。
カフェインは通常摂取量であれば問題ない(減らせるならその方ベター)
カフェイン自体がミルタザピンの代謝酵素(CYP1A2など)に影響を与える可能性はあるものの、通常の摂取量で重大な相互作用が起こることは稀です。
ただし、不眠や不安が強い人にとっては、カフェインがそれらの症状を悪化させることもあるため、夕方以降の摂取には注意が必要です。
コーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンクなどを多量に摂る習慣がある方は、1日あたりのカフェイン摂取量を意識的に減らすことが望ましいでしょう。
- 高齢者は代謝・排泄機能が低下しているため、転倒やせん妄に注意して低用量から開始する
- 妊娠中・授乳中は慎重な使用が必要で、最小限の量と期間にとどめるのが原則
- アルコールは中枢抑制作用を強めるため、服薬中は基本的に控えるべき
- カフェインは重大な相互作用は少ないが、不眠や不安を悪化させることがあるため節度ある摂取が推奨される
ミルタザピンを辞めたい時 – 減薬・断薬プロセス
気分が安定してきたとき、「そろそろ薬をやめてもいいのでは?」と考える方も多いと思います。
しかし、抗うつ薬の中断には注意が必要です。
特にミルタザピンのように中枢神経に作用する薬は、自己判断で急にやめてしまうと、心身にさまざまな変化が起こる可能性があります。
この章では、ミルタザピンの安全な減薬・断薬の進め方について、離脱症状の特徴やスケジュール例、そして再発予防のための生活習慣・認知行動療法(CBT)の活用まで、段階的にわかりやすく解説します。
いきなりやめるとどうなる?離脱症状とは
ミルタザピンはベンゾジアゼピンのような強い依存性はないとされていますが、急に中断すると離脱症状(中止後症候群)が現れることがあります。
これは脳内の神経伝達物質のバランスが急変することによって起こるもので、多くは一時的なものですが、不快な体験として記憶に残ることもあります。
主な離脱症状
- めまい、ふらつき、頭がボーっとする感じ
- 不安感、焦燥感、イライラ
- 不眠、悪夢、早朝覚醒
- 感情の不安定さ、涙もろさ
- 倦怠感、脱力感、微熱感
- まれに電気ショックのような感覚(いわゆる「シャンビリ感」)
これらの症状は、通常は数日から1〜2週間程度で自然におさまることが多いですが、個人差が大きく、ときに1か月以上続くケースもあります。
また、離脱症状と再発(うつ症状のぶり返し)との見分けが難しいこともあり、無理な断薬は精神状態を悪化させるリスクがあります。
そのため、ミルタザピンを中止したい場合は、必ず医師の指導のもとで段階的に減薬を進めることが大切です。
減薬時のスケジュール例と医師との相談ポイント
スケジュール例(あくまで一例)
個人の症状や服用量、服薬期間などによって異なりますが、以下は一例です。
- 服用量が30mg/日の場合
→ 15mgに減量し、2〜4週間ほど様子をみる
→ 問題がなければ15mgを1日おきに服用
→ その後、完全中止へ(1〜2週間様子を見ながら) - 15mgで継続していた場合
→ 1日おきに変更して1〜2週間様子を見る
→ さらに2日おき → 中止というように、**段階的に間隔を空けていく方法(間隔療法)**もあります
ただし、ミルタザピンは製剤としての細かな調整が難しい(錠剤が崩れやすい)ため、必要に応じて薬剤師にピルカッターの使用や粉砕調整を相談するのも選択肢です。
医師との相談ポイント
- いまの自分の症状が安定しているか(再発リスクの有無)
- 減薬による体調変化が生じたときの対応方針
- 中止後も定期的に通院し経過観察ができるか
- 不安が強い場合は、心理的サポートやカウンセリングの併用も検討
無理のないペースで、「一歩進んで半歩戻る」くらいの気持ちで進めることが、減薬を成功させるコツです。
減薬を支える生活習慣・認知行動療法(CBT)との併用
薬だけに頼らず、生活全体の安定を図ることが減薬成功のカギになります。
ここでは減薬中に特に意識したい生活習慣と、CBT(認知行動療法)との併用についてご紹介します。
規則正しい生活リズムを整える
- 毎日同じ時間に寝て起きる(体内時計の安定)
- 朝起きたら日光を浴びることでメラトニンとセロトニンのバランスが整う
- 夜はスマホやカフェインを避け、交感神経を鎮める習慣を作る(読書・ストレッチ・瞑想など)
栄養と運動
- バランスのとれた食事(ビタミンB群・マグネシウム・トリプトファンなど)を意識
- 軽めの運動(ウォーキング・ヨガ・筋トレ)は不安の軽減や睡眠の質向上に役立つ
- 飲酒・喫煙・エナジードリンクは可能な限り控える
認知行動療法(CBT)を取り入れる
CBTは、ストレスに対する「考え方のクセ」や「行動パターン」に働きかけることで、不安や抑うつを緩和する科学的に裏付けられた心理療法です。
ミルタザピンの減薬・断薬の過程では、「また調子が悪くなったらどうしよう」という予期不安や再発恐怖がつきまとうこともあります。
そうした思考の偏りを客観的に見つめ、バランスの取れた捉え方へと修正していくプロセスは、減薬への不安感を和らげるうえで非常に有効です。
- ミルタザピンを急にやめると、離脱症状が現れることがある(めまい、不安、不眠など)
- 減薬は数週間単位で段階的に行い、自己判断ではなく医師と相談しながら進める
- 製剤の性質上、粉砕やピルカッターの活用も選択肢
- 規則正しい生活習慣・適度な運動・栄養の管理が回復と再発予防に役立つ
- CBTの併用により、再発への不安や思考のゆがみに対処することができる
まとめ
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ミルタザピン(リフレックス)は、不安や不眠、食欲不振などに悩む方にとって、頼れるお薬のひとつです。
ですが、すべての人にとって「完全に副作用のない理想の薬」というわけではありません。
だからこそ、「薬の特徴を知ること」「自分に合っているかを見極めること」「医師と丁寧に相談しながら使うこと」がとても大切です。
もし不安な症状があれば、ひとりで抱え込まず、遠慮なく医師やカウンセラーに相談してください。
薬と上手に付き合うことは、自分を大切にすることでもあります。
この記事が、その第一歩として少しでもお役に立てたなら嬉しく思います。
- ミルタザピンはNaSSAと呼ばれるタイプの抗うつ薬で、睡眠改善や食欲増進にも効果があります
- よく見られる副作用には眠気や体重増加があり、服用には注意が必要です
- 妊娠中・高齢者・持病のある方は、慎重な使用が求められます
- 他の抗うつ薬(SSRI・SNRI)と比べ、副作用の出方や効果に違いがあります
- 急な断薬は避け、医師と相談しながら段階的な減薬を心がけましょう
- 減薬には生活習慣の見直しや認知行動療法(CBT)の併用が役立ちます
ご自身にとって最も安心できる治療の形を、無理せずゆっくり見つけていけますように。
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