「社会とのつながりが心の支えになる」──そんな言葉を耳にすることがありますが、実際にそうなのでしょうか?
本記事では、アメリカの若者を対象に行われた大規模調査をもとに、市民活動や政治的関心とメンタルヘルスの関係性を詳しく紐解いていきます。

最新の研究からは、社会参加がうつや自殺念慮の予防につながるだけでなく、心の状態がその後の活動意欲にも影響を及ぼすという「双方向のつながり」が明らかになりました。
心が疲れているとき、誰かとつながることは難しいもの。でも、無理せず関われる場があるだけで、人は少しずつ回復していけるのです。

Sciola, A., Ioverno, S., & Russell, S. T. (2025). Bidirectional Associations Between Civic Engagement, Depressive Symptoms, and Suicidal Ideation Among U.S. Adolescents. Journal of Adolescence, 102, 115–127. https://doi.org/10.1002/jad.70029

第1章:本記事の前提と対象論文の紹介

(対応原文:Abstract・Introduction)


この記事は、2025年にJournal of Adolescenceに掲載された最新の海外論文
Bidirectional Associations Between Civic Engagement, Depressive Symptoms, and Suicidality in Youth
(著者:Sciolaら)をわかりやすく日本語で解説したものです。

PubMed掲載ページを見る
論文PDFを読む(英語)

「市民活動(ボランティアや政治参加など)が、若者のメンタルヘルスにどんな影響を与えるのか?」
この問いに対して、科学的データをもとに答えようとしたのが本研究です。


なぜこの研究が注目されているの?🔍

近年、若者の間で社会活動への関心が高まっています。
ボランティア、SNSでの政治発言、寄付活動、署名活動、デモへの参加など、多様なかたちで「社会とのつながり」を模索する人が増えています。

一方で、以下のような悩みを感じている方も多いのではないでしょうか?

  • 「人のために何かしているのに、逆に疲れてしまう…」
  • 「社会の問題を知れば知るほど、無力感を感じる…」
  • 「活動の場でのトラブルや孤立で、気持ちが落ち込んだ…」

これらの声は決して特別なものではありません。
実際に、市民活動が「心の健康」にプラスに働くこともあれば、逆にストレスになることもある――それが本研究で示された重要なポイントです。


研究の概要:どんな内容なの?📊

本研究は、カナダ・ケベック州で1997〜1998年に生まれた若者1,451人を対象に、20歳と23歳の2回にわたって行われた縦断調査です。

調査項目は以下のとおりです:

調査内容説明
市民活動の種類政治参加、アクティビズム、ボランティア、慈善活動、地域参加の5分類
メンタルヘルス抑うつ症状の程度と自殺念慮の有無(いずれも自己記述式)
分析方法時間経過に伴う影響を検討するための「双方向パスモデル(cross-lagged model)」を使用

本研究のユニークな点は、「メンタルヘルスが市民活動に影響する」だけでなく、「市民活動がメンタルヘルスに影響する」可能性も含めて双方向の関係を調べたことです。


分析された「市民活動」の種類とは?🧾

本研究で分析対象となった5つの市民活動は、以下のように定義されています。

活動名内容例
政治参加政党に所属、Webで政治的意見を発信など
アクティビズムデモ参加、署名活動、不買運動など
ボランティアNPOや慈善団体での自発的な活動
慈善活動寄付や募金、衣類・食料の提供など
地域参加地域の委員会や団体への加入・参加

こうして分類することで、「活動の目的や手段によってメンタルへの影響が異なるのでは?」という仮説を丁寧に検証しています。


注目ポイントは「双方向の関係性」🔄

これまでの研究では、市民活動が「うつを予防する」などプラスの効果に注目が集まる一方、
「政治活動やアクティビズムによってストレスが増えるのでは?」というネガティブな影響も指摘されてきました。

しかし多くの研究が断片的で、以下のような課題がありました:

  • 活動の種類を明確に区別していない
  • 一方向の関係(例:メンタルヘルス→市民活動)しか見ていない
  • 時代背景が古く、現代の若者の行動様式を反映していない

本研究はこれらの課題を克服し、「活動の種類」「時点間の影響」「抑うつと自殺念慮の両方」を対象に、多面的に検証した点で非常に価値があります。


この先の記事でお伝えすること🧭

今後の章では、以下のような視点から本研究の結果を丁寧に紹介していきます:

  • ✅ ボランティアや寄付活動はうつ予防につながるのか?
  • ⚠️ アクティビズムや政治活動にはどんな心理的リスクがあるのか?
  • 💡 市民活動が「メンタルの改善」になるための条件とは?

私たちが「誰かのために動く」ことは、時に自分自身を癒す手段にもなり得ます。
一方で、過度な期待や社会の無関心に直面し、傷つくこともあるでしょう。

この論文は、「社会参加=善」「引きこもり=悪」といった単純な二元論では語れない、より深い人間の心理と行動のつながりを教えてくれます。


次章では、若者にとっての市民活動がもつ心理的・社会的意義について、
研究の背景にある理論(Positive Youth Developmentなど)を紹介しながら掘り下げていきます。

第2章:市民活動は若者にとってどんな意味を持つか

(対応原文:Introduction 後半)


「自分ごと」として社会に関わる意味とは🌱

私たちが生きている現代社会は、急速な変化と不確実性に満ちています。
そんな中で、若者が自ら社会と関わろうとする動き――たとえば、ボランティア、署名活動、SNSでの発信など――は、単なる“善意”や“お手伝い”ではありません。

それは、「自分が社会の一部である」という感覚=エージェンシー(自分で選び、動く力)のあらわれでもあります。

本研究の導入では、こうした若者の市民活動がどれほど発達的な意義を持つか、心理学的な理論を交えて丁寧に解説しています。


成長を支える「5つのC」とは?🧠

本研究で引用されているのは、「Positive Youth Development(積極的青年期発達理論)」という考え方です。これは若者を「問題のある存在」とみなすのではなく、ポテンシャルに満ちた存在としてとらえる枠組みです。

この理論では、次の5つの「C」が、健やかな成長に欠かせないとされています:

5つのC意味
Competence(能力)実行力や課題遂行能力
Confidence(自信)自己肯定感と自己効力感
Connection(つながり)他者や社会との関係性
Character(品性)倫理観やルールを守る力
Caring(思いやり)共感性と他者への配慮

そして、これらが十分に育まれると、6つ目の「C」――Contribution(社会への貢献)へとつながっていきます。

つまり、「市民活動」はただの“行動”ではなく、若者の心の成長そのものを支える発達の集大成といえるのです。


市民活動がもたらすポジティブな変化✨

近年の研究では、以下のような効果が市民活動に期待できることが報告されています:

  • ✅ 自己肯定感や達成感の向上
  • ✅ 意義のある人生(パーパス)を感じやすくなる
  • ✅ 学歴・収入などの社会的成果にも好影響
  • ✅ 仲間とのつながりや共感性が強まる

こうした変化は、抑うつや不安などの予防要因としても注目されています

また、活動に参加することで「私は社会にとって必要な存在だ」と実感できるようになり、
それが孤立や無力感を和らげる効果もあると考えられています。


でも、活動によっては「逆効果」も?⚠️

一方で、研究チームはこうも指摘しています。

「すべての市民活動がポジティブに働くとは限らない」

実際、これまでの研究では――

  • ボランティアは抑うつと負の関連(=予防的効果)
  • 政治活動やアクティビズムは正の関連(=悪化との関連)も報告あり

というふうに、活動の種類によってメンタルヘルスへの影響が異なるという結果が出ています。

また、過去の研究の多くが以下のような問題を抱えていたことにも注意が必要です:

  • 市民活動をひとくくりにして分析していた
  • 精神状態と活動の「どちらが原因か」を明らかにしていない
  • 古いデータを使っていて、現代の社会状況とズレがある

SNS時代の「新しい関わり方」も考慮が必要📱

特に注目したいのが、現代の若者特有の社会参加スタイルです。

例えば:

  • SNSで政治的意見を発信
  • オンライン署名やクラウドファンディングに参加
  • 不買運動をSNSで広める

こうした「デジタル市民活動」は、これまでの研究が見落としてきた新しい参加のかたちです。

しかしその一方で、炎上・誹謗中傷・情報の過負荷など、心理的リスクも存在します。
つまり、現代の若者の市民活動を分析するには、「時代の変化」や「参加の文脈」を無視できないのです。


市民活動とメンタルヘルスの関係をどう捉えるか?🧭

ここまでの流れをまとめると、次のように言えるでしょう:

✅ 市民活動は、若者の発達を支える「成長の場」である
✅ しかし、活動の内容や背景によってはストレスの要因にもなりうる
✅ よって、「活動の種類」や「参加理由」まで丁寧に分析する必要がある

こうした観点から、本研究は5種類の市民活動を区別しつつ、抑うつ症状・自殺念慮との関連を3年にわたり追跡調査しています。


次章では、調査の対象となった若者たちの具体的なプロフィールや、用いられた評価尺度、分析手法についてご紹介していきます📊
どんな方法で信頼性を担保しているのか?気になる方はぜひ続けてご覧ください。

第3章:研究の方法と対象者の特徴

(対応原文:Methods)


信頼性の高い大規模コホート研究📚

今回の研究は、カナダ・ケベック州で実施されている大規模な出生コホート調査
QLSCD(Québec Longitudinal Study of Child Development)」のデータを活用しています。

この調査は1997~1998年に生まれた子どもたちを20年以上にわたって追跡しており、心理的・社会的・健康的側面を多角的に記録しているものです。

このような長期縦断データを用いることで、「市民活動 → メンタルヘルス」「メンタルヘルス → 市民活動」両方向の因果関係を検討できることが本研究の大きな強みです。


対象者のプロフィール👥

研究に参加したのは、次のような特徴をもつ1,451人の若者たちです:

特徴内容
年齢20歳および23歳の2時点で調査
出生ケベック州内(先住民族地域を除く)で生まれたシングルトン
属性白人90%、性別は男女ほぼ均等
サンプル数初期登録2,120人 → 分析対象1,451人(有効回答あり)

※回答がなかった参加者の多くは、男性、非カナダ出身、低所得世帯の出身者である傾向がありました。

こうした背景も分析上考慮されており、「性別」「親の社会経済的地位(SES)」を統計的に調整した上で解析が行われています。


どんなことを測ったの?📋

研究チームは、20歳と23歳の2つのタイミングで、以下の3カテゴリーの情報を収集しました:

1. 市民活動(Civic Engagement)

参加の有無を5つのカテゴリに分けて質問しました。

活動の種類内容(例)
政治参加政党所属、Webで意見発信など
アクティビズムデモ、署名、不買運動など
ボランティア非営利団体での奉仕活動
慈善活動募金や物資の寄付など
地域活動地域団体や委員会への参加

各活動について、「1回でも実施したかどうか」の2択で回答(0=していない、1=している)という形式でした。

2. 抑うつ症状(Depressive Symptoms)

心理状態を評価するために使われたのは、CES-D短縮版(12項目)という、広く使われているうつ症状の自己評価尺度です。

  • 「最近1週間、気分が沈んだことがあるか」
  • 「何事にもやる気が出なかったか」
  • 「人と話したくなかったか」など

それぞれ0(まったくない)~3(ほとんど毎日)の4段階で評価し、合計点(0~36点)でうつ症状の強さを表しました。
20歳時の信頼性(α=0.85)、23歳時(α=0.87)と、非常に高い信頼性が確認されています。

3. 自殺念慮(Suicidality)

  • 「自殺を考えたことがある」
  • 「自殺未遂をしたことがある」など、3項目で評価。

年齢に応じて質問の文言やスコアのつけ方が一部異なりますが、全体として妥当な内部一貫性が確認されています。


統計手法:時間の流れをどう捉えたのか?🧮

今回の分析には、クロスラグド・パスモデル(Cross-lagged path model)という手法が用いられました。

この手法を使うことで、以下のような時間的因果関係が同時に検討できます:

分析した関係性意味
Civic Engagement → Mental Health市民活動が後のうつ・自殺念慮に影響するか?
Mental Health → Civic Engagement精神状態がその後の社会参加に影響するか?

また、性別・親のSES(社会経済的地位)も変数として調整済み。
さらに、データ欠損があった人には機械学習(ランダムフォレスト)を用いて補完処理が施され、精度と信頼性が高められています。


調査のタイミングと新型コロナの影響📆

20歳時のデータは2018年に、23歳時のデータは2021年に収集されました。
つまり、23歳時の調査は新型コロナウイルス流行下(第1回ワクチン接種が始まる頃)に実施されたことになります。

研究チームはこの点にも言及し、「パンデミックにより対面での市民活動機会が減少した可能性」を考慮した上で、分析と解釈が行われています。

まとめ

✅ 本研究は1,400人以上の若者を3年にわたって追跡する、大規模かつ信頼性の高い調査
✅ 市民活動を5分類し、それぞれが精神的健康とどう関わるかを統計的に検証
✅ データ欠損やバイアスも可能な限り補正されており、学術的に高水準な研究といえる


次章では、いよいよ調査の結果として明らかになった「市民活動と抑うつ症状の関連」について詳しく見ていきます。
特に注目されるのは、ボランティアや慈善活動にポジティブな影響があったという結果です。

第4章:ボランティア・慈善活動はうつ症状を軽減する

(対応原文:Results 3.2.2, Discussion 4.2)


「人のため」が「自分のため」にもなる不思議🌼

「誰かのために動くこと」が、自分のこころを癒してくれる――
そんな経験、みなさんも一度はあるのではないでしょうか?

本研究では、ボランティア慈善活動といった「支援を目的とした市民活動」が、若者のうつ症状を軽減することが、科学的に確認されました。

これは、過去の複数の研究でも報告されてきた傾向と一致しており、
「他者への貢献が、心理的な満足や自己肯定感を高める」という仮説を裏づける重要な結果です。


どのような活動が対象だったのか?📋

ここで言う「ボランティア」と「慈善活動」は、以下のように定義されています:

活動の種類内容の例
ボランティアNPOや福祉団体での無償の支援活動
慈善活動募金、寄付、チャリティイベントの参加など

20歳の時点でこれらの活動に1回以上参加した人は、23歳になったときにうつ症状のスコアが有意に低い傾向がみられました。

しかも、同時期の抑うつスコアだけでなく、3年後の変化にも影響していたという点が注目されます。


なぜメンタルに良い影響があるの?🧠

研究チームは、ボランティアや寄付活動がうつ症状に与えるプラスの影響について、次のような心理メカニズムを挙げています:

効果の背景となる心理的プロセス

  • 感謝や充実感が生まれる:他人に喜ばれることで、「自分は意味のある存在だ」と感じられる
  • 自己効力感が高まる:「自分にも人を助ける力がある」と再認識できる
  • 社会とのつながりが強まる:孤立感や疎外感が薄れ、安心感が得られる
  • “人のため”という価値が自己肯定感につながる:「私は役に立っている」という感覚が自信になる

同時期だけでなく「未来」にも影響✨

重要なのは、この効果が「その時だけの気晴らし」ではないということです。
20歳の時点で活動に参加していた人たちは、3年後の23歳時点でも、うつ症状が相対的に低い傾向を示しました。

🧾 実際のデータからの抜粋(標準偏回帰係数 β)

  • ボランティア → うつ症状の軽減:β = -0.11
  • 慈善活動 → うつ症状の軽減:β = -0.14

※ただし両者は重なりが大きく、独立した影響かどうかは議論の余地あり(詳細は感度分析にて)。

こうした数字は決して大きな効果とは言えないかもしれません。
でも、わずかでも「心が軽くなる」きっかけがあること自体が、支援においては非常に価値ある知見なのです。


具体的な行動へのヒント📝

「自分のメンタルのために、できることから始めてみたい」
そう思った方へ、気軽に取り組める活動例をいくつかご紹介します。

🔖 こころにやさしいボランティア・寄付活動の例

  • 地域のゴミ拾いや花壇整備(市民団体や自治体イベント)
  • フードドライブ(食品の寄付活動)への参加
  • 被災地支援や難民支援団体への少額寄付
  • 子ども食堂や福祉施設でのサポート(見守りや配膳など)
  • 学校や職場での募金・寄付キャンペーンへの協力

「毎週行かなきゃ」と気負う必要はありません。
“1回だけ”でも、心に何かが残るかもしれない――そんな気軽さで十分なのです。


研究チームの結論は?🗣️

研究者たちはこの結果を、次のように評価しています:

ボランティアや慈善行動は、本人と社会の両方に恩恵をもたらす可能性がある。

また、家庭医(かかりつけ医)や心理職による「社会的処方(Social Prescribing)」とも一致する成果であり、
臨床現場での支援やメンタルケアの一環として、「社会とのつながり」を意識的に取り入れることの意義
が改めて確認されました。

まとめ

✅ ボランティアや寄付活動は、うつ症状の予防に役立つ可能性がある
✅ 感謝、自己肯定感、社会的つながりなどが心理的な支えとなる
✅ 「1回だけの参加」でも十分に価値がある
✅ 医療や福祉の現場でも注目されている「非医療的支援」でもある


次章では一転して、「政治活動やアクティビズムはうつや自殺念慮と関連する」という注意すべき結果を紹介します。
なぜ「社会を変えようとする行動」が逆に苦しさにつながるのか?
その理由を一緒に探っていきましょう。

第5章:アクティビズムや政治参加はうつ・自殺念慮と関連

(対応原文:Results 3.2.2, Discussion 4.3)


社会を変えたいという「想い」が、こころに負担をかけることも…⚖️

人権、環境、ジェンダー、公正な社会――
今、多くの若者がこれらのテーマに真剣に向き合い、署名やSNS発信、デモなどを通じて声を上げています。

しかし、こうしたアクティビズム(社会運動への参加)や政治的な意見表明が、
時に「心の健康」に負の影響をもたらすことがある――それが本研究から示されたもうひとつの重要な側面です。


統計的に明らかになった「関連性」📉

研究チームの分析によれば、アクティビズムや政治参加は、同時期のうつ症状や自殺念慮と正の相関がありました
さらに、アクティビズムに関しては3年後のうつ症状増加とも関連しており、長期的な影響も示唆されています。

🧾 統計結果の一部(標準偏回帰係数 β)

活動内容抑うつ症状との関連(β)自殺念慮との関連(β)
アクティビズム(20歳→23歳)+0.17(有意)+0.11(非有意)
政治参加(20歳・23歳)同時期でうつ症状・自殺念慮ともに有意な増加傾向

このように、「社会のために動くこと」が、自分の心に負担をかけてしまう可能性が統計的にも裏づけられました。


なぜ「良いことをしているのに、つらくなる」のか?🧠

研究チームは、以下のような心理的要因が関係している可能性を指摘しています。

🔎 活動がこころに負荷をかける背景

  • 変化の難しさへの無力感:「頑張っても何も変わらない」と感じることで、無力感・絶望感が強まる
  • 攻撃やバッシングによるストレス:SNSや現場での否定的な反応がメンタルにダメージを与える
  • 社会的不正への怒り・悲しみ:社会問題に深く向き合うほどに、感情的な疲弊が起こる
  • 危険を伴う行動への関与:一部の抗議活動では暴力や警察との対立に巻き込まれることもある

とくに注意したい「若者ならではの脆さ」⚠️

若者はまだ心理的・社会的な安定基盤が整っていない時期でもあります。
そのため以下のような特性から、社会的挫折が精神的ダメージにつながりやすいと考えられます:

  • 感受性が高く、共感しやすい
  • 「正義感」が強く、理想と現実のギャップに苦しむ
  • 初めての社会参加で経験値が少ない

つまり、「心を込めて参加するほど、心が疲れてしまう」というジレンマが生まれやすいのです。


それでも、アクティビズムは悪いことではない🌍

ここで大切なのは、「社会運動=悪」と単純化しないことです。

研究チームは次のように強調しています:

アクティビズムや政治参加がもたらす社会的変革や意義は非常に大きい。ただし、その過程では個人の心のケアも必要である。

活動の中で感じる怒り、悲しみ、無力感は、「感受性」や「倫理意識」がある証拠でもあります。
それを否定せず、「自分を守る術を持つ」ことがとても大切なのです。


「心を守りながら参加する」ためのヒント📝

アクティビズムに参加する際に意識したいこと

  • 情報の取り入れ方を調整する:SNSやニュースを浴びすぎない
  • 小さな成功体験に目を向ける:「1人でも共感してくれた」で十分
  • 仲間とのつながりを大切にする:支え合える関係が心のクッションになる
  • 疲れたら一時的に距離を置く勇気も持つ:休むことは“逃げ”ではなく“回復”
  • 専門家に相談する:感情が強くなりすぎたときはカウンセラーの助けを借りる
まとめ

✅ アクティビズムや政治参加は、うつ症状や自殺念慮との関連が確認された
✅ 背景には「無力感」「怒り」「孤立」などの心理的要因がある
✅ 社会貢献と心の健康は両立できるが、そのためには“自己ケア”が不可欠
✅ 自分を守りながら活動を続ける工夫が求められている


次章では、これまでとは逆に「うつ症状や自殺念慮がその後の市民活動に影響するか?」という視点を扱います。
果たして、心の状態が社会参加の意欲を左右することはあるのでしょうか?引き続きご覧ください。

第6章:心の不調が、その後の社会参加意欲を左右する?

(対応原文:Results 3.2.3, Discussion 4.4)


「心が沈んでいるとき、人とつながるのは難しい」😔

これまでの章では、市民活動や政治的な発言がうつ症状や自殺念慮と関連していることをご紹介してきました。
では逆に、「うつ状態」や「生きるつらさ」が強いとき、人は社会にどのように関わるのでしょうか?

本章では、「メンタルの状態がその後の社会参加に与える影響」に焦点を当てて解説します。


うつ症状・自殺念慮が「つながり」や「発信」を遠ざける📉

研究によれば、うつ症状や自殺念慮が強い人ほど、後の市民活動や政治的参加が減少するという傾向が見られました。

特に、以下のような活動でその関連性が確認されています:

心の状態(20歳時点)その後の活動(23歳時点)との関係
抑うつ症状が高い✅ 市民活動・政治参加が減少
自殺念慮がある✅ 市民活動が減少(ただし政治参加との関連は有意でない)

つまり、「心のエネルギーが足りないと、人と関わる気力も湧かない」といった状態が、社会的な関わりを妨げてしまう可能性があるのです。


心が疲れていると、どうして人とのつながりがしんどくなるの?🧠

🔍 考えられる心理的メカニズム

  • 意欲・興味の低下
    うつ状態では、「何かをしたい」「誰かと話したい」という気持ちが起こりにくくなります。
  • 自己評価の低下
    「どうせ自分にはできない」「迷惑をかけるだけ」と感じてしまう傾向があります。
  • 希死念慮と孤立感
    「誰にも理解されない」という思いが強くなり、ますます社会から距離を置いてしまいます。

このような心理状態が、本来は関心を持っていた社会活動から自分を遠ざけてしまうことがあるのです。


「回復してから関わる」という選択肢もある🌱

本研究の示唆は、無理に「今すぐ動こう」と背中を押すものではありません。
むしろ、「今はつながるのがつらいなら、自分の心を優先してよい」という大切なメッセージを含んでいます。

✅ 自分の心を守りながら社会と関わるヒント

  • 無理に参加しようとしない
  • できる範囲で情報収集だけにとどめてもOK
  • 「見守る」というスタンスも立派な関わり方
  • 元気になってから、少しずつ再開しても遅くない

心の調子に応じた「関わり方のグラデーション」🌈

以下のように、心の状態に応じた段階的な関わり方を意識することが、長期的に見て自分にも社会にも優しい選択になります。

心の状態社会との関わり方
不調が強い情報を遮断して休む、信頼できる人とだけつながる
回復途中興味のあるテーマを少し調べてみる、SNSで閲覧中心
安定期勉強会や小規模イベントへの参加を試してみる
元気なとき積極的に発信やイベント参加、活動に関与する
まとめ

✅ うつ症状や自殺念慮が強いと、その後の社会参加が減る傾向がある
✅ 心が不調なとき、人と関わること自体が心理的負担になる
✅ 無理に動かず、「休むこと」「回復を待つこと」も大切な選択
✅ 回復段階に応じた関わり方を選ぶことが、長い目で見て自分を守る


次章では、社会活動に関わる人たちの「心のリスク」を予防するために、どんな支援が必要かを考えていきます。
自分も他者も傷つけない、やさしい社会とのつながり方とは?ぜひ最後までお読みください。

第7章:心にも社会にもやさしい「つながり方」とは?

(対応原文:Discussion 5章全体、特に4.5)


社会参加は、心の薬にもなれば負担にもなる🧩

「社会とのつながりは、心を癒やす力になる」
この考えは広く知られるようになってきました。しかし実際には、すべての人にとってそうとは限りません。

本研究が教えてくれたのは、「社会参加とうつ・自殺念慮の関係は双方向」であるということです。

  • 心が疲れていると、活動から距離を置きたくなる
  • 活動を通じて得られるつながりが、心の支えになることもある

このように、タイミングや心の状態によって、同じ「社会参加」が味方にもなれば負担にもなるのです。


「若者は政治的無関心」という誤解の危うさ⚠️

よく「最近の若者は社会問題に関心がない」と言われることがあります。
でも本研究では、社会や政治に参加している若者ほど、心の不調が少ないことが示されました。

つまり、関心がないのではなく、「関わる余裕がない」「関わり方がわからない」というのが実態に近いのかもしれません。

この違いに気づかず、「無関心だ」と切り捨ててしまうことは、さらなる孤立を招いてしまう可能性があります。


支援のカギは「柔軟な関わり方の選択肢」🌱

心の調子が万全でないとき、無理に人とつながることは、むしろストレスの原因になります。
大切なのは、本人の状態に応じた柔軟な関わり方が選べることです。

🌼 若者が安心して関われる環境づくりのヒント

  • オンライン参加や匿名での関わりを許容する
  • 発言しなくても「その場にいるだけ」でよいと伝える
  • 政治や社会問題を「生活に根ざしたテーマ」から始める
  • 精神的な不調への配慮がある場であることを明示する

「活動=正義」ではなく「選択肢のひとつ」としての提案👐

本研究は、社会参加を「誰もがすべきもの」として押しつける意図ではありません。
むしろ、「こんな関わり方もあるよ」と示すことで、人と社会のあいだの“距離感”を自分で選べる自由を守ることが、精神的な安定につながると示唆しています。

👣 一歩踏み出すもよし。立ち止まるもよし。
🌿 そのときの自分に合った関わり方を大切にしてほしい──

そんなやさしいまなざしが、この研究の根底には流れているのです。

まとめ

✅ 社会活動はメンタルの回復に効果がある一方、負担にもなり得る
✅ 若者が「無関心」に見える背景には、心理的・社会的なハードルがある
✅ 自分に合った関わり方を「選べる環境」がメンタルヘルスにとって重要
✅ 関わる・関わらないは自由であり、「今の自分」を尊重することが大切

社会との関わりは、ときに心を揺さぶります。
でも、その中で交わされる何気ない言葉や表情が、誰かの孤独をやわらげ、希望の光になることがあります。

心が元気なときに、ほんの少しだけ、誰かに目を向けてみる。
それだけで、あなた自身の心も、少しずつ温まっていくかもしれません。

🕊️ つながりは、無理をしないところから始めて大丈夫。あなたのペースで、自分らしく、社会と向き合っていきましょう。