カウンセリングでは「クライアントの感情」が大きく動くことがありますが、実はカウンセラー側もまた、無意識のうちに感情が揺れ動くことがあります。これを「逆転移」と呼びます。
本記事では、逆転移とは何か、どのように起こり、カウンセリングにどう影響するのかを、やさしく丁寧に解説します。
クライアントとしても、支援者としても、安心して人と向き合うための知識を一緒に学んでいきましょう。
逆転移とは?——カウンセリングで起こる心理的な“反応”
カウンセリングの場では、ときに予想外の感情がセラピストの側に湧き上がることがあります。
それは決して「プロ失格」ではなく、人間関係の本質に根ざした自然な現象です。
この章では、クライエントとの関係性の中でセラピスト側に起こる「逆転移」という心の反応について、丁寧に解説していきます。
転移と逆転移の基本的な違い
カウンセリングや精神療法の中でよく用いられる言葉に「転移(transference)」と「逆転移(countertransference)」があります。
まずはこの2つの違いを整理しておきましょう。
転移とは
転移とは、クライエントが過去の重要な他者(親・教師・元恋人など)との感情や関係パターンを、セラピストに向けて無意識に再現してしまう現象を指します。
たとえば、セラピストを「自分を否定する母親」のように感じたり、「守ってくれる父親」のように重ねて感じたりすることがあります。
この転移は、治療の妨げになることもありますが、過去の感情を安全な場で再体験し、修正していくプロセスでもあるため、治療的にとても重要な要素とされています。
逆転移とは
逆転移はその反対で、セラピスト側が、クライエントとの関係性の中で、自分の中に湧き上がる感情や反応に気づく現象を意味します。
たとえば、「このクライエントにはなぜか苛立ちを感じる」「守ってあげたいという強い衝動がある」「自分の娘に似ていて心配になる」など、感情移入や距離感の揺らぎが生じることがあります。

本来、セラピストは中立性を保ち、治療関係に集中する立場です。
しかし逆転移が強くなると、無意識のうちに不適切な態度をとってしまうリスクもあるため、注意深く自己観察する必要があります。
精神分析・心理臨床での定義
「逆転移」という概念は、もともと精神分析の創始者フロイトによって提唱されましたが、その意味は時代とともに変化・拡張してきました。
現在では、逆転移はより広く、「クライエントとの関係性の中でセラピストに生じるすべての感情・身体感覚・思考」を含む概念として理解されています(この考え方は「全逆転移」とも呼ばれます)。
このアプローチでは、逆転移を治療の情報源として活用する姿勢が強調されます。
つまり、セラピストが自分に生じる感情を丁寧に観察し、「この感覚は何を意味しているのか?」と探ることで、クライエントの無意識的なメッセージを読み解く手がかりにできるのです。
現代的視点のポイント
- 逆転移=悪いことではない
- 自己覚知とスーパービジョンが重要
- 感情は情報であり、治療の一部
このように、逆転移はカウンセリングのリスクにもなりますが、使い方次第では深い治療的洞察を得るチャンスにもなります。
なぜカウンセリングで逆転移が起こるのか(人間関係の性質から)
逆転移はなぜ、セラピストという専門職の人にすら起こってしまうのでしょうか?
その背景には、「人間関係の本質」が深く関係しています。
人は誰しも“無意識に反応する”
人間は、他者と関わる中で「この人は安心できる」「この人は怖い」といった感覚を意識するよりも早く、無意識に判断しています。
これはいわゆる「投影」や「感情移入」のはたらきです。
セラピストといえども人間ですから、クライエントの話や態度に触れる中で、自分の過去の経験や感情が揺さぶられることがあります。
とくに以下のような条件があると、逆転移が強くなりやすいとされています。
- クライエントの抱えるテーマが、セラピスト自身の未解決課題に似ている
- クライエントの態度が過度に挑発的・依存的・理想化的
- セラピストが疲弊していたり、自己ケアが不十分なとき
治療関係は“濃密な人間関係”
カウンセリングの関係は、言葉と感情を通して深く相手に向き合う特殊な人間関係です。
その中では、日常では感じないような強い共感や反発が起こることもあります。
つまり逆転移は、セラピストに問題があるから生じるのではなく、「人間としての反応が自然に起こっている」とも言えるのです。
治療同盟(セラピストとクライエントの信頼関係)に影響を及ぼす
逆転移が自覚されず放置されてしまうと、次のような影響が出る可能性があります。
- クライエントに対して過保護または冷淡な対応になる
- 無意識に“見捨てる”ような態度をとってしまう
- 個人的な感情を持ち込み、客観性が失われる
- 境界線(バウンダリー)があいまいになる
このような状況になる前に、セラピストは自身の感情を把握し、必要に応じてスーパービジョンやコンサルテーションで対処することが求められます。
- 転移=クライエント側の感情の投影/逆転移=セラピスト側の感情反応
- 精神分析では「逆転移」はかつて否定的に捉えられていたが、現代では治療の手がかりとされる
- 逆転移は「無意識」「投影」「感情移入」と深く関係しており、人間関係の自然な反応でもある
- セラピスト側の自己理解と専門的サポートが不可欠
逆転移は「気づかないうちに生じるもの」です。
では、実際のカウンセリングではどのような形で現れるのでしょうか?
次の章では、「逆転移が起こるとどんなサインがあるのか」「治療にどう影響するのか」について、具体例を交えて解説していきます。
逆転移が起こると何が起きる?——症状・サイン・具体例
この章では、「逆転移が生じたときに実際にどんなサインや行動が現れるのか」をわかりやすく解説していきます。
発現するケース1:カウンセラーが“過度に親身になる”
一見すると「熱心で優しい支援者」に見える行動にも、逆転移が隠れていることがあります。
たとえば、クライエントの悩みに深く共感しすぎた結果、セラピストが“守ってあげたい”“助けすぎたい”という強い衝動を抱くケースです。
よく見られるサイン
- セッション時間を毎回延長してしまう
- クライエントの生活や判断に踏み込みすぎる
- 連絡頻度が増え、境界線が曖昧になる
- 「この人には自分がいないとダメだ」と感じてしまう
一見ポジティブに見えますが、実際には治療同盟のズレが始まっていることがあります。
背景にあるもの
このタイプの逆転移には、セラピスト自身の未解決なテーマが影響していることもあります。
たとえば、
- 過去に「助けられなかった誰か」への罪悪感
- 自分が支援されなかった経験の反動
- “良い支援者でいたい”というプレッシャー
その結果、クライエントを本来の自主性から遠ざけ、治療の方向性が「支える側・支えられる側」という固定化した構図になってしまう危険もあります。
発現するケース2:怒り・イライラ・拒絶反応を感じる
逆転移は「優しくなりすぎる方向」にだけ起きるわけではありません。
むしろ多くの支援者が戸惑うのは、クライエントに対して苛立ちや怒りを感じてしまうケースです。
よく見られるサイン
- クライエントの話に“やりにくさ”を感じる
- 本来の支援計画を無視してしまいたくなる
- 無意識に距離を置きたくなる、避けたくなる
- クライエントの言動に過剰反応する
- 「なぜわかってくれないのか」と感情的になる
支援職は「どんな人にも寄り添うべき」と考えるあまり、怒りの逆転移を抱えたときに自分を責めてしまうことが多いです。
しかしこれは、セラピストが人間である以上自然に起こりうる現象であり、感情自体は悪いものではありません。
背景にあるもの
- 相手の攻撃的・挑発的な態度に刺激される
- 自分の過去の傷が揺さぶられる
- セラピスト側の疲弊(支援職バーンアウトの前兆)
- 過剰な期待や依存が生じている
怒りの逆転移はしばしば「危険な兆候」と捉えられますが、適切に扱えば治療関係の理解に役立つこともあります。
ただし、それには必ず自己覚知と専門的なスーパービジョンが必要です。
距離が近くなりすぎる/依存関係のリスク
逆転移の中でも最も注意が必要なのが、物理的・心理的距離が近くなりすぎるケースです。
よく見られるサイン
- クライエントを“特別な存在”として扱う
- セラピスト側が私的情報を過剰に開示してしまう
- セッション外での関わりが増える
- 会えないときに過度に心配したり、不安を抱く
- クライエントからの依存を肯定してしまう
これらは治療関係を危うくし、場合によっては倫理的な問題(dual relationships)につながる可能性もあります。
特に「助けたい」「近づきたい」という気持ちが強くなると、境界線(バウンダリー)が崩れていき、クライエントにとってもセラピストにとっても不利益をもたらすことがあります。
依存関係が持つリスク
クライエント側にも以下の影響が生じます:
- 自立や成長が妨げられる
- 感情の安定をセラピストに過度に依存してしまう
- セラピーの終了が困難になる
- 見捨てられ不安が強まる
逆転移が依存関係を助長すると、治療の目的が曖昧になり、クライエントの回復を阻む大きな障害となります。
- 逆転移は、セラピストの“過度な親身さ”“怒り”“距離の近づきすぎ”など、さまざまな形で現れる
- 境界線(バウンダリー)が曖昧になると、依存関係が生まれ、治療同盟が揺らぐ
- 逆転移には、治療を深める建設的な面と、治療を妨げる危険な面がある
- セラピストの自己覚知・倫理観・スーパービジョンが不可欠
逆転移の影響や具体例を理解すると、次に気になるのは「クライエント側にはどんな感情の動きが起きるのか?」という点ではないでしょうか。
続く章では、「転移」というクライエント側の心理反応を丁寧に解説しながら、逆転移との違いもわかりやすく整理していきます。
逆転移が治療に与える影響──良い作用と悪い作用
逆転移は、単に「避けるべき現象」ではなく、治療関係を深めるきっかけにもなり得ます。
一方で、扱いを誤ると治療の進行に深刻な影響を与えることもあります。
つまり逆転移は、治療的な可能性とリスクの両面をあわせ持つ現象です。
この章では、逆転移がカウンセリングや精神療法に与える影響について、肯定的な側面と否定的な側面の両方から解説し、最後に実例を通して「逆転移を活かす」可能性について触れていきます。
治療的に役立つ逆転移(共感・理解の深化)
逆転移には、「治療者が感じた感情をヒントにして、クライエントの内面をより深く理解できる」という側面があります。
たとえば、セッション中に理由のわからない不安や怒り、焦燥感を感じたとき、それがクライエントの「表現しきれていない情緒」や「幼少期から抱えていた感情パターン」の再現であることがあります。
このように、治療者の内面に生まれる反応が、クライエントの無意識的なメッセージの“鏡”となる場合があるのです。
このとき支援者が逆転移を自己覚知し、「自分が今なぜこう感じているのか?」を丁寧に内省できれば、以下のような治療的な働きにつながります。
- クライエントの感情の背景を、より共感的に理解する
- 言語化できない体験を“身体で感じ取り”、共鳴的に受け止める
- 沈黙や問いかけを通じて、適切なタイミングで内面の整理を支援する
- 投影や同一化による関係性の変化を、意識的に扱えるようになる
心理力動的精神療法では、このようなプロセスを「逆転移の利用(use of countertransference)」と呼び、専門性の高い技法のひとつとして位置づけています。
逆転移を抑えるのではなく、治療的文脈の中で“意味づけて使う”姿勢が重要です。
治療を妨げる逆転移(境界侵犯・誤った介入)
一方で、逆転移が適切に扱われないまま介入に反映されてしまうと、治療関係に深刻なゆがみや混乱をもたらすリスクがあります。
以下のようなケースでは、逆転移が治療を妨げる原因になります。
- クライエントに「期待しすぎる」ことで、本人のペースを尊重せず過干渉になる
- 「この人は私が救わなきゃ」と過剰に責任を背負い、共依存的な関係になる
- クライエントの言動に「怒り」や「見下し」を抱き、冷たい対応や指導的介入をしてしまう
- セクシャリティや保護欲などの感情に飲み込まれ、境界線(バウンダリー)を侵犯する言動を取る
このような“逆転移に巻き込まれた状態”では、カウンセリングは治療的でなくなり、場合によっては二次的な心理的被害や治療離脱を引き起こすおそれもあります。
また、クライエントの状態が回復していたにも関わらず、支援者側の不安や欲求により、治療の終結を引き延ばすケースも逆転移的介入の一つとされます。
専門家の主観が介入内容に影響していないか、常に点検する視点が必要です。
このようなリスクを避けるには、以下のような予防策が有効です。
- 治療関係に生じた感情のゆれを、セッション外で内省・記録する習慣を持つ
- スーパービジョンやチーム内のケース検討において、自己の感情を言語化し他者の視点を得る
- クライエントの進展を「自分の成功」として過度に結びつけない
- 境界線が揺らぎそうなとき、あえて「立ち止まる勇気」を持つ
逆転移が生じること自体は責められるものではありません。しかし、それを自覚し、治療的に意味づけるかどうかで、治療の質は大きく変わってきます。
実例ベースでの「逆転移がうまく活かされたケース」
ここでは、臨床現場における逆転移の「活用」の一例をご紹介します(プライバシーに配慮し事例は改変しています)。
事例:言葉にならない怒りを“支援者の身体”が感じ取ったケース
ある30代女性のクライエント。
幼少期から感情を表すことが許されず、成人しても感情表現が乏しい方でした。
淡々と話す姿に、支援者(カウンセラー)は「なぜか強い苛立ち」を感じてしまいます。
クライエント自身は怒りも悲しみも語らず、感情を一切出さないように見えました。
あるセッション後、支援者は「なぜこんなにイライラするのだろう」と疑問に思い、スーパービジョンにて相談。
指導者から「それはクライエントの“抑圧された怒り”が、あなたを通して浮上しているのかもしれない」とフィードバックを受けます。
その後、支援者はセッションで「最近、セッション後にすごく疲れることがあるんです」と、間接的に自身の感覚を共有。
クライエントは涙をこぼし、「私、本当はずっと怒っていた。でも、怒っていいって思ってなかった」と語りました。
このケースでは、逆転移として生じた苛立ちが“感情の出入り口”となり、クライエントの内在化された怒りを解放するきっかけとなりました。
治療者が自分の感情を安全に扱いながら、慎重にフィードバックすることで、治療が深化した事例です。
このように、逆転移は「支援者が自分を通してクライエントの無意識に気づくための感覚器官」として働く場合があります。
もちろん、これは高い自己覚知と技術を必要とする介入です。
しかし、逆転移を恥じず、丁寧に扱う姿勢こそが、関係性の力を治療に活かす鍵となるのです。
- 逆転移は「共感の深化」や「感情の気づき」につながることがある
- 一方で、未処理の逆転移は境界線の侵犯や治療の混乱を招く
- 治療者の内面に湧いた感情は、クライエントの無意識からの重要な“手がかり”であることがある
- 自己覚知・スーパービジョン・倫理的枠組みを通じて逆転移を安全に活かすことが可能
- 逆転移を受け止めることは、治療者としての成熟を育むプロセスでもある
カウンセラー・支援者側の視点——逆転移をどう扱うか
この章では、カウンセラー・支援職の立場から、逆転移をどう捉え、どう扱っていくべきかを丁寧に解説していきます。
倫理とバウンダリーの取り方
逆転移が生じること自体は問題ではありませんが、それを自覚せずに治療に持ち込んでしまうと、治療関係にゆがみを生むリスクがあります。ここで重要になるのが職業的距離(バウンダリー)の保持です。
例えば、以下のような逆転移的な反応は、臨床倫理の観点から問題になりやすいケースです。
- クライエントを特別扱いし、セッション時間を延長したり贈り物を受け取ってしまう
- クライエントに対して過剰な感情的巻き込まれを感じ、思わず叱責や過保護な介入をしてしまう
- 「助けなければならない」という義務感が過剰になり、介入が過干渉になる
- クライエントの態度に腹が立ち、冷たく接してしまう
これらは、ミラーリング(無意識的な感情の反射)や同一化のメカニズムによって生じやすいものですが、治療関係のなかでは慎重な取り扱いが求められます。
支援職は、「自分の感情反応をクライエントにそのまま返すのではなく、自覚したうえで適切な言語化や沈黙を選択する」ことが必要です。
自己覚知(self-awareness)と専門的な判断の両立がここで重要になります。
スーパービジョン・ケース検討の重要性
逆転移の扱いには、「ひとりで抱え込まない」ための仕組みが欠かせません。
とくに臨床経験が浅い支援者の場合、自分の中に起きている反応が逆転移なのか、単なる不快感なのかを見極めるのは困難です。
そこで活用すべきなのが、スーパービジョンやケースカンファレンスといった臨床支援の体制です。
スーパービジョンでは、経験豊富な指導者に自分の感情反応や臨床上の悩みを率直に開示し、フィードバックを受けます。
この過程で、
- 自分の逆転移に気づく
- 介入の妥当性を検討する
- 専門職としてのバウンダリーを再確認する
- 感情の巻き込まれから距離を取る
といった整理が可能になります。
また、複数の支援者でのケース検討では、他者の視点を取り入れることで、自分の偏りや盲点にも気づけます。
「チームで支える支援」の重要性は、逆転移の扱いでも大きな意味を持っています。
支援者自身のメンタルケア
逆転移の負担が蓄積すると、感情的バーンアウトや共感疲労(二次的外傷)につながるおそれもあります。
とくに精神的に脆弱なテーマ(虐待、喪失、性被害など)を扱う支援現場では、支援者の心理的安全性をどう保つかが極めて重要です。
ここで支援者に求められるのが、
- セルフモニタリング(自己観察)の習慣化
- マインドフルネスやリラクゼーションを取り入れたセルフケア
- 必要に応じて自身も心理的サポートを受けることへの抵抗の低減
また、「良い支援者でいなければ」という完璧主義的な信念も逆転移の引き金になりやすいため、自分の限界や感情に対して優しさと受容を持つ姿勢が重要です。
支援者自身が「支援を受けること」にオープンであること。それは、他者の痛みに寄り添う仕事を続けていくための土台であり、専門家としての成熟の一部でもあります。
- 逆転移はどの支援者にも起こり得る自然な心理現象です
- 倫理と職業的距離(バウンダリー)の保持が重要です
- スーパービジョンやケース検討を通じて自己覚知を深めましょう
- 感情の巻き込まれを防ぐには支援者自身のメンタルケアが不可欠です
- ミラーリングや介入技法の適正化も、逆転移の扱いに含まれます
まとめ
逆転移という言葉を初めて聞いた方も、支援現場で日々感じていた違和感に思い当たる方も、この記事を通じて少しでも心が軽くなっていれば幸いです。
カウンセリングは「人と人との関係性」によって成り立っています。
そのなかで、逆転移が起こるのはごく自然なことであり、決して「失敗」や「未熟さ」の証ではありません。
むしろ、そこに気づき、適切に扱うことができれば、深い理解や変容のきっかけにもなります。
最後に、この記事のポイントを振り返ります。
- 逆転移とは、支援者がクライアントに対して抱く無意識の感情反応のこと
- クライアント側の「転移」と表裏一体で、治療関係に大きく影響する
- 違和感を感じたら、自分を責めずに「話してみる」「他の支援を検討する」選択肢もある
- 支援者にとっては、セルフケアとスーパービジョンが重要な対策となる
- 逆転移は「悪」ではなく、気づきによって関係を深めるチャンスにもなる
カウンセリングは、完璧な人間同士で行われるわけではありません。
だからこそ、互いの感情に丁寧に目を向け、支え合える関係を築いていけることが大切です。この記事が、その第一歩となれば幸いです。
<参考文献>
・カウンタートランスファレンスが未認識・未処理の場合、境界違反やバイアスのかかった介入、治療同盟の悪化、否定的な治療転帰のリスクが高まると複数のレビューや実証研究が報告している。ResearchGate
・現代的CT理論では、CTは患者に誘発される面と、治療者自身の未解決課題・内部対象世界によって形成される面の両方があるとされる。未処理の葛藤や「救済者願望」が過度な関与や“救おうとしすぎる”態度につながりうると複数の著者が述べている。PMC
・Gabbardをはじめとする現代精神分析・心理療法の文献では、CTは患者の内的世界や治療関係で再現されているパターンを理解するための貴重な情報源と位置づけられている。relationalpsych.group+5PubMed+5ResearchGate+5
・CTをうまく用いると、患者の対人パターンや未意識的テーマへの洞察、共感の深化、ワーキングアライアンスの強化につながると臨床・研究の両面から示されている。ICANotes+5PubMed+5relationalpsych.group+5
・現代のカウンセリング・精神療法では、逆転移を「避けるべき邪魔物」ではなく、うまく扱えばクライエント理解を深めるツールになり得る一方、未処理であれば治療同盟とアウトカムを損なう要因になり得る、とする立場が一般的。EBSCO+2アメリカ心理学会+2
・「逆転移の意識化・管理が、治療同盟やアウトカムを改善し得る」という点は、メタ分析を含む研究で一定の支持があります。本文の表現は「つながり得る」と適度に慎重であり、現時点のエビデンスと整合的です。PubMed+2PubM
・メタ分析レベルで「未管理の逆転移は心理療法アウトカムと負に関連する」ことが示されており、また複数のレビューが治療同盟やクライエント体験への悪影響を指摘しています。PubMed+2centerhealthyminds.org
・逆転移を扱ううえでスーパービジョンが重要であることは、多くの論文・レビューで強調されています。特にCBTの supervision 研究などでも「スーパーバイザー側の逆転移」「 supervisee の逆転移」の扱いが議論されており、本文の主張と一致します。PMC+2rediviva.sav.sk+2
