「統合失調症でも、オンライン診療は受けられるの?」

そう感じてこのページにたどり着いた方の多くは、通院の負担や体調への不安を抱えているのではないでしょうか。

外出がつらい日がある、移動だけで消耗してしまう——

その思いはとても自然なものです。

この記事では、精神科医の立場から、

  • 統合失調症におけるオンライン診療の効果
  • オンライン診療に向いているケース・注意が必要なケース
  • 具体的な診療方法
  • オンライン診療の費用

などをできるだけやさく、わかりやすくお伝えします。

統合失調症はオンライン診療で対応できるのか?

「統合失調症でもオンライン診療は受けられるのだろうか?」

——この疑問は、ご本人だけでなく、ご家族や支援者の方からも多く寄せられます。

この章では、精神科医の立場から、統合失調症におけるオンライン診療の可能性と限界を、医学的な根拠に基づいて丁寧に整理していきます。

結論:統合失調症はオンライン診療でも対応可能(ただし安定期であることが前提)

結論からお伝えすると、統合失調症は「症状が安定しているケース」において、オンライン診療での対応が可能です。

ただし、これは「誰にでも」「どの状態でも」当てはまるわけではありません。

オンライン診療は、対面診療の完全な代替ではなく、あくまで治療を継続するための補完的な手段として位置づけることが重要です。

まず、統合失調症という疾患そのものについて簡単に整理しておきましょう。

DSM-5-TRおよびICD-11では、統合失調症は「思考・知覚・感情・行動などの統合が障害される精神疾患」と位置づけられています。

代表的な症状には、幻覚や妄想といった陽性症状、意欲低下や感情の平板化といった陰性症状、注意力や記憶力の低下などの認知機能の変化が含まれます。

これらの症状は、急性期と安定期で大きく様相が異なることが特徴です。

オンライン診療が現実的な選択肢となるのは、主に安定期にある場合です。

具体的には、幻覚や妄想が落ち着いており、現実検討能力が保たれている、服薬が継続できている、日常生活がある程度自立して営めている、といった条件が重なっているケースです。

このような状態では、ビデオ通話による診察でも、症状の変化や治療反応を十分に評価できることが多く、治療の継続に支障をきたしにくいと考えられています。

急性期や再発直後のオンライン診療は慎重に。

一方で、急性期や再発直後など、症状が不安定な時期には注意が必要です。

強い幻覚妄想が出現している場合や、被害的な考えが強まっている場合、あるいは自傷・他害のリスクが懸念される場合には、オンライン診療だけでの対応は安全とは言えません。

こうした状況では、表情やしぐさ、空気感といった非言語的な情報を含めて総合的に判断できる対面診療が不可欠になります。

オンライン診療の位置づけを考えるうえで大切なのは、「できるか・できないか」という二択ではなく、どのタイミングで、どのように使うかという視点です。

たとえば、対面診療で治療方針が固まり、症状が安定した後の定期フォローや服薬調整、生活上の相談などは、オンライン診療と非常に相性が良い領域です。

通院負担を減らしながら治療を継続できることは、再発予防の観点からも大きなメリットになります。

また、DSM-5-TRやICD-11の診断基準に照らしても、統合失調症の診断や重症度評価は、単一の診察だけで完結するものではありません。

症状の経過や治療反応を継続的に観察することが重要であり、その一部をオンライン診療で担うことは、現在の医療制度の中でも現実的な選択肢として広がりつつあります。

大切なのは、「オンライン診療=軽視された医療」では決してない、という点です。

適切な症状評価と医師の判断のもとで行われるオンライン診療は、対面診療と同じく、診断・治療の一環として位置づけられています。

ご本人やご家族が不安を感じたときには、その気持ちをそのまま医師に伝え、納得しながら治療方法を選んでいくことが、何よりも重要です。

まとめ
  • 統合失調症は症状が安定しているケースではオンライン診療が可能
  • オンライン診療は対面診療の代替ではなく、治療継続を支える補完的手段
  • 安定期では、症状評価・服薬調整・生活相談などに有効
  • 急性期や再発時、リスクが高い場合は対面診療が不可欠
  • DSM-5-TR・ICD-11に基づく診断・治療では、継続的な経過観察が重要

次の章では、統合失調症においてオンライン診療が向いているケース・難しいケースを、症状の特徴やリスクの観点から、より具体的に解説していきます。

オンライン診療で行われる診察の流れ

オンライン診療と聞くと、「画面越しで本当に十分な診察ができるのだろうか」「対面と比べて評価が浅くならないか」と不安を感じる方も多いかと思います。

この章では、精神科医の立場から、統合失調症のオンライン診療で実際にどのような流れで問診・評価・フォローが行われているのかを、できるだけ具体的に、わかりやすくお伝えします。

問診・生活状況の確認 – まずは睡眠の状態などチェック。

オンライン診療においても、診察の土台となるのは丁寧な問診です。

これは対面診療と本質的に変わるものではありません。

特に統合失調症の診療では、「今どのような生活を送っているか」「薬をどのように飲めているか」「日々の調子に変化はないか」といった生活全体の流れを把握することが非常に重要です。

まず確認されることが多いのが、睡眠の状態です。

寝つきやすさ、夜中に目が覚める回数、朝の目覚め、昼夜逆転の有無などを通して、生活リズムが安定しているかを見ていきます。

睡眠の乱れは、統合失調症の症状悪化や再発のサインとして現れることがあるため、オンライン診療でも重点的にフォローされるポイントです。

服薬状況の確認

次に、服薬状況の確認が行われます。

処方されている抗精神病薬を「毎日決まった時間に飲めているか」「飲み忘れが増えていないか」「自己判断で量を変えていないか」といった点を、責めることなく一緒に振り返ります。

また、副作用として眠気、体重増加、だるさ、手の震えなどが出ていないかも丁寧に聞き取ります。

これらは本人が「些細なこと」と感じて見過ごしてしまうことも多いため、医師側から具体的に質問することが大切になります。

生活リズムなどの日常の調子を確認

さらに、日中の過ごし方や生活リズムについても確認します。

仕事や学校、家事、外出の頻度、人との関わりなどを通して、生活機能が保たれているかを評価します。

オンライン診療では、自宅というリラックスした環境で話せる分、生活実態を率直に話しやすいという利点もあります。

こうした情報は、症状の安定度や今後の治療方針を考えるうえで欠かせません。

症状変化の確認も重要なポイントです。

「以前より調子が良いと感じるか」「不安感や緊張が強まっていないか」「考えがまとまりにくい感覚はないか」など、主観的な変化を丁寧に聞き取ります。

DSM-5-TRやICD-11でも重視されているように、診断や治療は症状の有無だけでなく、その程度や経過を総合的に評価することが基本です。

オンライン診療でも、この考え方は変わりません。

症状評価と現実検討能力を確認

問診で生活状況を把握したうえで、次に行われるのが症状の評価とリスクチェックです。

統合失調症の診療では特に妄想や幻覚といった症状の有無や変化、思考のまとまり具合、現実検討能力を丁寧に確認することが求められます

妄想や幻覚については、「最近、周囲の人が自分を監視しているように感じることはないか」「実際には聞こえない声が聞こえることはないか」といった形で、具体的かつ慎重に質問します。

オンライン診療では、ビデオ通話を通して表情や話し方、反応のタイミングなども観察できるため、言葉だけでなく全体の様子から評価を行います。

また、現実検討能力、つまり「自分の考えや感じ方が現実とどの程度一致しているか」も重要なチェックポイントです。

例えば、不安や疑念を抱いていても、「もしかしたら考えすぎかもしれない」と振り返る力が保たれているかどうかを見ます。

この力が低下している場合、対面診療への切り替えや、家族・支援者との連携を検討することもあります。

自傷行為などのリスクチェック

また、安全面のリスクチェックも欠かせません。

自傷や自殺念慮の有無、衝動性の高まり、強い被害妄想による対人トラブルの可能性などを慎重に確認します。

オンライン診療では、「何かあったときにすぐ対面医療につなげられる体制があるか」「家族や支援者が近くにいるか」といった環境面も含めて評価し、必要に応じてフォロー体制を整えます。

これは、オンライン診療を安全に行うための重要な前提条件です。

こうした評価とフォローは、一度きりで終わるものではありません。

オンライン診療では、定期的な診察を通して小さな変化を早めに拾い上げ、必要に応じて治療内容を調整していきます。

むしろ、通院のハードルが下がることで、継続的なフォローがしやすくなるというメリットもあります。


まとめ
  • オンライン診療でも、丁寧な問診と生活状況の確認が診察の基本となります
  • 睡眠、服薬状況、生活リズムは症状安定の重要な指標として細かく確認されます
  • 妄想や幻覚、思考のまとまり、現実検討能力はビデオ通話を通して総合的に評価されます
  • リスクチェックや安全配慮を行い、必要に応じて対面診療や支援体制と連携します
  • 継続的なフォローによって、小さな変化を早期に捉えることが可能です

次の章では、こうした診察の流れを踏まえたうえで、オンライン診療における薬の処方や副作用管理の考え方について詳しく解説していきます。

抗精神病薬は統合失調症の治療において重要な役割を担いますが、オンラインで処方を続けることに不安を感じる方も少なくありません。

どのような点に注意し、どのように安全性が確保されているのかを、医師の視点から丁寧にお伝えします。

薬の処方・服薬管理はオンラインでできる?

統合失調症の治療を考えるうえで、「薬をきちんと続けられるか」「オンラインでも安全に処方や管理ができるのか」は、多くの方が不安に感じるポイントだと思います。

この章では、精神科医の立場から、オンライン診療における薬の処方の基本的な考え方と、服薬管理・副作用フォローがどのように行われているのかを、できるだけ具体的にお伝えします。

統合失調症の治療で用いられる主な薬の種類

統合失調症の薬物療法の中心は、抗精神病薬です。

これらの薬は、幻覚や妄想といった陽性症状の軽減だけでなく、意欲低下や感情の平板化などの陰性症状、さらには再発予防にも重要な役割を果たします。

現在の診療では、ICD-11およびDSM-5-TRの考え方に基づき、症状のタイプ・重症度・生活状況を総合的に評価しながら薬が選択されます。

抗精神病薬は大きく「定型抗精神病薬」と「非定型抗精神病薬」に分けられますが、近年の臨床では副作用プロファイルや継続しやすさの観点から、非定型抗精神病薬(リスペリドン等)が第一選択となるケースが多くなっています。

オンライン診療であっても、この基本的な治療方針は変わりません。

抗精神病薬のオンライン処方の考え方

オンライン診療における抗精神病薬の処方は、「何でもオンラインで出せる」というものではありません。

厚生労働省のオンライン診療に関する指針では、薬を処方するには患者さんの心身状態を十分に評価できていることが前提とされ、初診では情報が十分に得られない場合があるため、処方に制限が設けられています。

特に、初診では麻薬および向精神薬の処方は行わないこと、また(基礎疾患などの情報が十分に把握できない場合)8日分以上の処方を行わないことなどが示されています。

そのため実務上も、抗精神病薬のオンライン処方は、すでに診断や治療方針が定まり、対面診療や継続診療で状態が把握できている方の「再診」を中心に検討されることが多くなります。( 厚生労働省

服薬管理と副作用フォロー

服薬管理は、統合失調症の治療において重要な柱のひとつです。

抗精神病薬の維持療法は再発予防に有効であるという研究知見があり、自己判断での中断が再発リスクを高める可能性があるため、定期的な確認がとても大切です。

オンラインでできる服薬管理としては、まず「飲めているか」の確認があります。

飲み忘れが増えていないか、自己判断で中断していないか、服薬時間が大きくずれていないかを、責めるのではなく一緒に振り返ります。

副作用についても、眠気、だるさ、体重増加、手足のこわばり(錐体外路症状)、集中力の低下など、日常生活に影響しやすい症状は、具体的な質問を通して把握できます。

薬剤によって副作用の出方は異なるため、「どの程度生活に支障があるか」を丁寧に聞き取りながら調整を検討します。

ただし、ここで大事なのは、オンラインだけで完結できない領域があることです。

急激な症状悪化や妄想・幻覚の再燃が強く疑われる場合、あるいは副作用が重く日常生活に大きな支障が出ている場合には、画面越しの評価だけでは不十分と判断され、対面診療への切り替えが勧められることがあります。

さらに、採血などの定期的モニタリングが必要な薬(代表例としてクロザピンなど)では、対面受診や検査の併用が前提になります。


まとめ
  • 抗精神病薬のオンライン処方は、原則として再診・継続治療が中心です
  • 処方日数や薬の種類は、安全性を考慮して慎重に判断されます
  • 服薬状況や副作用は、オンラインでも丁寧にフォローされます
  • 症状悪化や重い副作用が疑われる場合は、対面診療が必要になります
  • オンラインと対面を適切に使い分けることが、安全な治療継続につながります

不安障害のオンライン診療の費用イメージ

オンライン診療を検討される方から、よく聞かれるのが「結局、いくらくらいかかるのか分からなくて不安です」という声です。

結論からお伝えすると、不安障害のオンライン診療は、多くの場合、対面診療と同様に保険診療として受けられます
ただし、オンライン特有の加算や、医療機関ごとの運用の違いがあるため、あらかじめ「費用の全体像」をイメージしておくことが大切です。

この章では、精神科医の立場から、現実的で誤解のない費用感を、できるだけ分かりやすく整理していきます。


保険診療が基本となるケース

全般性不安症、パニック症、社交不安症などの不安障害は、医師が医学的に必要と判断した場合、オンライン診療であっても保険診療の対象となります。

そのため、自己負担割合は通常の外来診療と同じく、

  • 原則3割負担
    (年齢や所得により1割・2割の場合もあります)

となります。

「オンラインだから自費になるのでは」と心配される方もいますが、診察内容が保険診療の範囲内であれば、基本的な考え方は対面診療と変わりません


診察料の目安(3割負担の場合)

実際の金額は、診療内容や医療機関の算定方法によって多少前後しますが、
一般的な目安としては、以下のようなイメージになります。

  • 初診
    約1,500〜2,500円前後
  • 再診
    約1,000〜1,800円前後

これに加えて、オンライン診療を行う場合、

  • オンライン診療に伴う加算
  • 通信・システム利用料(医療機関によっては設定あり)

が、数百円程度上乗せされることがあります。

そのため、「オンラインだから特別に高額になる」ということは通常ありませんが、対面診療と完全に同額になるとは限らない点は理解しておくと安心です。


薬代は診察料とは別にかかる

不安障害の治療では、抗不安薬や抗うつ薬などが処方されることがあります。この場合、薬代は診察料とは別に、薬局での支払いが必要です。

薬の種類や処方日数にもよりますが、自己負担額の目安は、

  • 数百円〜2,000円程度

となるケースが多く見られます。

オンライン診療では、

  • 近隣の薬局で受け取る
  • 自宅に配送してもらう

といった方法が選べることもありますが、配送を選んだ場合は送料が別途かかることがあります


自費診療になるケースもある

すべてのオンラインサービスが保険診療になるわけではありません。例えば、以下のような場合は自費診療として扱われることがあります。

  • 医師の診察を伴わないカウンセリングのみのサービス
  • 医療機関独自の自由診療プラン
  • 長時間の相談枠や、診断書・意見書などの文書作成

この場合、1回あたり数千円〜1万円以上になることもあります。

そのため、予約前に「これは保険診療なのか、自費診療なのか」を必ず確認しておくことが、費用面でのトラブルを防ぐポイントです。


ケース別・費用イメージ

具体的なイメージを持ちやすいよう、いくつかのケースを挙げてみます。

ケース①:再診・症状が安定しており、薬の継続処方のみ

  • 診察料(再診+オンライン関連加算):約1,200〜1,800円
  • 薬代:数百円〜1,500円程度
  • 合計:約2,000〜3,000円前後

ケース②:初診・不安症状の評価と治療開始

  • 診察料(初診+オンライン関連加算):約2,000〜3,000円
  • 薬代:1,000〜2,000円程度
  • 合計:約3,000〜5,000円前後

あくまで目安ではありますが、保険診療であれば、毎回1万円を超えるような費用になるケースは一般的ではありません

まとめ
  • 不安障害のオンライン診療は、多くの場合、保険診療の対象です
  • 自己負担は原則3割で、対面診療と大きな差はありません
  • 初診で約3,000〜5,000円前後、再診で約2,000〜3,000円前後が目安です
  • 薬代や送料、システム利用料が別途かかる場合があります
  • 自費診療かどうかは、事前確認が安心です

最終章:オンライン診療と対面診療をどう使い分けるか

最終章では、精神科医の立場から、状態に応じた使い分けの考え方を、できるだけ分かりやすくお伝えします。


オンライン診療は「継続支援の選択肢」

まず大切な前提として、統合失調症におけるオンライン診療は、「すべてをオンラインで完結させる治療」ではありません。

多くの場合、オンライン診療は治療を途切れさせないための継続支援の選択肢として位置づけられます。

統合失調症は、ICD-11やDSM-5-TRでも示されている通り、急性期の症状が落ち着いた後も、再発予防を含めた長期的な治療とフォローが重要な疾患です。

症状が比較的安定している時期には、毎回の通院が大きな負担になることもあります。

体調面だけでなく、移動への不安、人混みへの恐怖、仕事や生活との両立など、さまざまな理由から受診そのものが難しくなるケースも少なくありません。

こうした場面でオンライン診療を併用することで、医師との定期的な対話を保ち、服薬状況や生活リズム、再発の兆候を早めに確認することが可能になります。

対面診療を補完する形でオンライン診療を取り入れることで、「受診できない期間が続いてしまう」という事態を防ぎ、治療継続につなげやすくなるのです。


状態に応じた柔軟な切り替えが重要

統合失調症の治療で特に重要なのは、「今の状態に合った診療形態を選ぶ」という視点です。

オンライン診療が向いている時期もあれば、対面診療を優先すべきタイミングもあります。

たとえば、症状が安定しており、幻覚や妄想が強く出ていない状態では、オンライン診療での経過観察や薬の調整が可能なケースもあります。

ビデオ通話による診察でも、表情や話し方、思考の流れ、生活状況について一定の情報を把握することができるためです。

一方で、症状の悪化が疑われる場合や、服薬が不安定になっている場合、自傷や他害のリスクが高まっていると判断される場合には、対面診療が強く推奨されます。

対面診療では、非言語的な情報や細かな変化をより多角的に評価でき、必要に応じて検査や即時対応につなげることができます。

このように、オンライン診療と対面診療は固定的に使い分けるものではなく、状態の変化に応じて柔軟に切り替えていくことが、治療の安全性と質を保つうえで非常に重要です。


主治医と相談しながら決める姿勢

オンライン診療を取り入れるかどうかを判断する際に、最も大切なのは「主治医と相談しながら決める姿勢」です。

統合失調症の診療では、医師がその人のこれまでの経過、再発のパターン、生活環境、支援体制を総合的に見て判断します。

ご本人が「通院がつらい」「オンライン診療を使ってみたい」と感じている場合、その気持ちを率直に主治医に伝えることは、とても大切な一歩です。

その上で、どの程度オンライン診療が適しているか、どのタイミングで対面診療に戻すべきかを一緒に考えていくことができます。

治療を長く、安定して続けるために何が最適かを、主治医と対話しながら決めていく姿勢こそが、もっとも大切なのです。


まとめ
  • オンライン診療は、統合失調症治療における「継続支援の選択肢」として位置づけられます
  • 対面診療とオンライン診療は対立するものではなく、併用が前提となることが多いです
  • 症状が安定している時期にはオンライン診療が役立つ場合があります
  • 症状悪化やリスクが高い場合は、対面診療が優先されます
  • 診療形態の選択は、必ず主治医と相談しながら決めることが重要です

まとめ

統合失調症の治療において、もっとも大切なのは「無理なく、安心して治療を続けられること」です。

オンライン診療は、そのための新しい手段のひとつですが、すべての状態に万能というわけではありません。

症状が安定している時期や、医師との信頼関係が築かれている再診の場面では、通院負担を軽減しながら継続的なフォローを受けられる有効な選択肢になり得ます。一方で、急性期や強い幻覚・妄想がある場合には、対面診療が必要不可欠です。

大切なのは、「オンラインか対面か」を二者択一で考えるのではなく、その時々の状態に応じて、主治医と相談しながら柔軟に選ぶことです。

もし不安や迷いがある場合は、一人で抱え込まず、医師や支援者に率直に伝えてください。

あなたにとって最も安心できる治療の形は、必ず見つかります。

本記事のまとめ
  • 統合失調症でも、症状が安定していればオンライン診療は可能
  • オンライン診療は「継続支援」の位置づけであり、対面診療の代替ではない
  • 急性期・再発リスクが高い場合は対面診療が優先される
  • 薬の継続処方や副作用の確認は、条件次第でオンラインでも対応可能
  • 状態に応じて、主治医と相談しながら使い分けることが重要

<参考文献>

・米国精神医学会(APA)/米国遠隔医療学会(ATA)のビデオ会議型テレメンタルヘルスのベストプラクティスが、対面を含む適切なケア資源・連携・緊急対応計画などを重視しており、遠隔が万能でない前提を示す。精神医学会

・WHO mhGAP(精神病)で「精神病のある人は定期的フォローアップが必要」と明記。カナダ家庭医協会

・統合失調症では継続治療(維持療法)が再発予防の要であることが複数レビュー/ガイドラインで示される。サイエンスダイレクト

・遠隔診療の適応は状態・リスク等で判断すべきで、安定例での継続フォローに用いられうることがテレメンタルヘルス指針で示唆される。PubMe

・精神科診療の中核は問診・観察で、オンラインでも実施可能。ただし触診等の制約があり「対面と同等」とは言い切らず、対面と組み合わせる前提が公的には強調される_ 厚生労働省

・NICEは抗精神病薬中止(特に1〜2年以内)で再発リスクが高い旨を明示。APAも症状改善後の抗精神病薬継続を推奨。 NICE+1