現代の思春期の子どもたちにとって、SNSは大切な居場所である一方、依存的な使用傾向が心に影を落とすこともあります。
この記事では、2025年に国際的な科学誌に発表された海外論文『Effects of problematic social media use on depressive symptoms』の内容を要約し、日本の医療従事者や支援者向けに分かりやすく解説します。2,000名以上の若者を追跡した大規模データをもとに、利用頻度やフォロワー数、性別などの要因が抑うつ症状の経過とどのように関連しているのかを、専門家の視点から紐解いていきます。
📚 参考文献表記
Blanquer-Cortés M, et al. Effects of problematic social media use on depressive symptoms. Sci Rep. 2025;16(1):201. doi: 10.1038/s41598-025-29258-x. PMID: 41326538.
- PubMed(パブメド)URL https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41326538/
- 論文PDF(Nature公式)URL https://www.nature.com/articles/s41598-025-29258-x.pdf
第1章:はじめに〜若者のメンタルヘルスとSNSの現在地〜
(原文対応:Introduction)
思春期の患者様に向き合う中で、「スマートフォンやSNSの利用がメンタルヘルスに影を落としているのではないか」と危機感を覚える場面も多いのではないでしょうか。
この章では、本論文の背景にある現代の思春期のメンタルヘルスの現状と、本研究が特に焦点を当てている「問題のあるSNS利用(PSMU)」の定義について、臨床的な視点を交えながら整理していきます。若者たちのデジタル環境を正しく理解し、治療やカウンセリングに役立てるためのファーストステップとして、まずはその全体像を紐解いていきましょう。
なぜ今、思春期の「SNSうつ」が問題なのか
思春期という時期は、脳の発達段階としても精神的・社会的にも非常に多感で、他者からの評価や「承認欲求」が高まる特徴があります。現実世界だけでなく、デジタル空間での人間関係が彼らのアイデンティティ形成に大きな影響を与える現代において、SNSは切っても切り離せない「居場所」となっています。
しかしその一方で、四六時中つながり続ける環境は、常に「他者との比較」に晒されるリスクも孕んでいます。華やかな他人の投稿と自分を比べたり、反応の有無に一喜一憂したりすることが、自己肯定感の低下や深い「孤独感」を生み出し、結果として抑うつ症状のリスクを高めてしまう可能性が多くの研究で指摘されています。
臨床の場でも、「スマホ依存が止まらない」「SNSでの友人関係に疲弊して、学校に行けなくなった」という相談から、気分の落ち込みや不安を自覚されるケースが増加傾向にあります。本論文は、こうした臨床的・社会的な背景を踏まえ、単に「SNSの利用時間が長いから悪い」という単純な議論を超えて、より多角的な視点から若者の心のリスクを解き明かすために行われました。
論文が注目した「問題のあるSNS利用(PSMU)」とは
本研究を読み解く上で最も重要なキーワードとなるのが、「問題のあるSNS利用(PSMU:Problematic Social Media Use)」という概念です。
これは、単に「スマートフォンに触れている時間が長い(利用頻度:SMU)」という量的な問題だけを指すのではありません。日常生活や学業、あるいは対人関係に明らかな支障が出ているにもかかわらず、本人の意志でSNSの使用をコントロールできなくなってしまっている、いわば「行動依存」に近い病理的な状態を意味します。
ここで、医療や心理支援の現場において、患者様のアセスメントを行う際の参考として、PSMUにみられる主な特徴を以下にまとめました。

さらに本研究の特筆すべき点は、この「PSMU(依存的な使い方)」だけでなく、「利用頻度(SMU)」、そして「フォロワー数(SMF)」という、デジタルな人間関係の規模そのものが若者の精神状態にどのように絡み合っているのかを複合的に分析している点にあります。
本研究で評価された3つの主要な指標
本研究において、若者とSNSの関わりを多角的に解き明かすために用いられたこれら3つの主要な指標と、それぞれの臨床的意味合いは以下の通りです。
| 指標の名称 | 臨床における捉え方・意味合い |
| 問題のあるSNS利用 (PSMU) | 依存的な使用傾向。コントロールの喪失や、生活への明らかな悪影響を伴う状態。 |
| SNS利用頻度 (SMU) | 1日あたりの使用時間や、アプリへアクセスする回数の多さ(量的な指標)。 |
| フォロワー数 (SMF) | デジタル空間における人間関係の規模。承認欲求や他者比較の直接的な対象となり得る。 |
このように、本論文のイントロダクションでは、若者とSNSの関係性を単一の側面からではなく、「使い方の質(PSMU)」「使う量(SMU)」「繋がりの広さ(SMF)」という3つの軸から捉え、それらが思春期の抑うつ症状の経過にどう関わっているのかを検証しようとしています。
次の章からは、これらの指標を用いて実際に行われた、2,000名を超える大規模な追跡調査の具体的な方法について詳しく見ていきましょう。
第2章:調査の方法〜2,121名の若者を追跡した大規模調査〜
(原文対応:Methods)
前章では現代の思春期におけるSNS利用の背景や、研究の核となる主要な指標について確認しました。
この章では、本論文で実際に用いられた具体的な「調査の方法」について詳しく紐解いていきます。本研究がいかにして思春期の子どもたちの心の変化を捉えたのか、その研究デザインや対象者の詳細、そして用いられた測定尺度について、臨床のエビデンスとしての信頼性を高めるポイントを含めて解説いたします。若者たちのリアリティに迫るための緻密な設計を、一緒に確認していきましょう。
どのような子どもたちが調査対象になったのか
本研究では、思春期のリアルな心理状態とSNSの影響を正確に把握するため、大規模なサンプリングが行われました。
具体的な対象者の属性や調査の枠組みは、以下の通り構成されています。
- 参加者数: 2,121名の思春期のアドレッセント(Adolescents)
- 性別構成: 女性が52.38%、男性が47.62%
- 平均年齢: タイムポイント1(T1)の時点で13.79歳
臨床的にも、この13〜14歳という年齢層は、同級生をはじめとする友人関係の重要性が急激に高まり、自己意識の変容や発達段階におけるメンタルヘルスへの脆弱性が顕在化しやすい時期として知られています。これほど多くの多感な時期の若者を対象にしたデータだからこそ、私たちが日々臨床やカウンセリングで向き合うクライエントの背景を考える上でも、非常に示唆に富む内容となっています。
時間の経過を追う「縦断的調査」の信頼性
また、本研究の大きな強みは、ある一時点のデータを切り取った「横断研究」ではなく、時間の経過とともに変化を追う「縦断的調査(Longitudinal Study)」のデザインを採用している点にあります。
調査は以下のようなタイムラインで実施されました。
- タイムポイント1(T1):ベースラインの調査。SNSの利用実態や初期の抑うつ傾向などを測定。
- タイムポイント2(T2):一定期間の追跡調査を実施し、その後の抑うつ症状の「変化・進展(Evolution)」を測定。
このように2つの時点(T1、T2)でデータを収集することにより、「SNSの使い方が先にあって、それがその後のうつ症状の悪化予測につながるのか」という、時間的順序に基づく関連性を評価できます。
なお、本研究では以下の変数をそれぞれ標準化された尺度を用いて測定・評価しています。
- 問題のあるSNS利用(PSMU):強迫的な使用傾向や、それによる生活への支障の程度を評価。
- SNS利用頻度(SMU):1日あたりの使用時間や、アプリへアクセスする頻度の多さ。
- フォロワー数(SMF):SNS上で繋がっているユーザーのアカウント数。
- 抑うつ症状(Depressive Symptoms):思春期用の自己評価尺度を用いて、気分の落ち込みや不安などの症状を数値化。
さらに、これらのデータは単に全体の平均値を算出するだけでなく、「分位点回帰モデル(Quantile Regression:τ = 0.25, 0.50, 0.75)」という高度な統計手法が用いられました。これにより、もともとうつ症状の傾向が軽い子、平均的な子、そして症状の傾向が重い子(高分位点)のそれぞれにおいて、SNSの影響がどのように異なって現れるのかを精緻に分析できるようになっています。
次の章からは、これらの方法によって導き出された、具体的な調査結果の前半部分について見ていきましょう。
第3章:調査結果①〜利用頻度・年齢・もともとの心の状態が与える影響〜
(原文対応:Results)
前章では、大規模な縦断的調査のフレームワークについて確認いたしました。
この章では、本論文の「結果(Results)」の前半部分として、SNSの利用頻度(SMU)や問題のある利用(PSMU)が、思春期の子どもたちの抑うつ症状にどのように関わっているのかを解説します。特に、年齢による影響の違いや、もともとの心の状態(ベースラインの症状の程度)によってどのような差がみられたのか、研究のエビデンスを臨床的な視点から整理していきましょう。
利用頻度(SMU)と抑うつ症状の有意な関連
分位点回帰モデル(τ = 0.25, 0.50, 0.75)用いた解析の結果、臨床的にも非常に重要な事実が明らかになりました。
それは、「問題のあるSNS利用(PSMU)」および「SNSの利用頻度(SMU)」の双方が、すべての分位点において抑うつ症状の増加と有意に関連していたという点です。
つまり、もともとのうつ傾向が比較的軽い層であっても、平均的な層であっても、あるいはすでに重い傾向にある層であっても、いずれの初期状態においても、SNSの過剰な利用や依存的な使用傾向がその後の抑うつ症状の増加と関連していることが示されています。
年齢による違いと初期状態(高分位点)における関連の強さ
さらにデータを深く読み解いていくと、このSNSの利用頻度(SMU)がもたらす影響は、すべての若者に一律に現れるわけではないことが見えてきました。本論文では、以下の2つのモデレーター(調整)効果および分位点による違いを報告しています。
1. 年齢による違い(若年齢層におけるリスク)
利用頻度の高さと抑うつ症状の増加との関連は、特に年齢が低い(若い)思春期のアドレッセントにおいて顕著にみられました。発達段階のより早期にある子どもたちほど、デジタル空間の刺激に対して脆弱である可能性が示唆されています。
2. 初期状態による違い(分位点による関連性の強さ)
もう一つの重要な発見は、SNS利用と抑うつ症状の関連が「初期の症状の程度」によって異なる(differential impact)という点です。ベースライン(T1)の時点でうつ傾向が強かった層、すなわち高分位点(τ =0.75)において、SNS利用とその後の抑うつ症状の増加との関連がより強く認められました。
初期状態(分位点)別の影響の現れ方
ベースライン時の抑うつ症状の程度(分位点)によって、SNS利用がその後の症状に与える影響がどのように異なるのかを、以下の表にまとめています。
| 子どもの初期状態(ベースライン) | SNS利用(SMU)と抑うつ症状の関連性の傾向 |
| うつ傾向が比較的軽い層(低分位点:τ = 0.25) | 抑うつ症状の増加との関連は認められるものの、関連の強さは比較的小さい。 |
| 平均的な層(中分位点:τ = 0.50) | 利用頻度の高さと、その後の抑うつ症状の増加との間に有意な関連が認められる。 |
| すでにうつ傾向が強い層(高分位点:τ = 0.75) | SNS利用と抑うつ症状の増加との関連がより強く認められ、臨床的にも特に注視すべき層である。 |
次の章では、もう一つの重要な要素である「フォロワー数」と「性別」が、若者たちの心にどのような見えない罠を仕掛けているのか、結果の後半部分を見ていきましょう。
第4章:調査結果②〜「フォロワー数」と性別がもたらす見えない罠〜
(原文対応:Results)
前章では利用頻度や年齢、そしてもともとの重症度による影響の違いについて解説いたしました。
この章では、本論文の「結果(Results)」の後半部分として、SNS上の人間関係の規模を表す「フォロワー数(SMF)」が、性別や利用頻度とどのように相互作用し、思春期の抑うつ症状に関わっているのかについて見ていきます。デジタル空間のつながりが、ジェンダーや利用スタイルによって若者たちのメンタルヘルスに関わる際、どのような統計的特徴がみられたのか、論文のデータに忠実に整理していきましょう。
フォロワー数と性別の相互作用(インタラクション効果)
本研究の解析において、統計的に非常に重要な指標となる「フォロワー数(SMF)と性別(Gender)の相互作用(インタラクション効果)」が有意に認められたことが報告されています。
論文内で詳細な心理的背景まで直接検証されているわけではありませんが、多くのフォロワーを抱えているという環境が、ジェンダーの違いによって異なる心理的影響(自己肯定感への関わりや、目に見えないプレッシャーなど)をもたらしている可能性を示唆するデータと言えます。
フォロワー数と利用頻度の組み合わせによる相互作用
さらに本研究では、「フォロワー数(SMF)」と「利用頻度(SMU)」の間にも有意な相互作用が認められたという結果が報告されています。
ここで示されたのは、フォロワー数の多さが抑うつ症状に与える影響は、実際の利用頻度(高いか低いか)の組み合わせによって異なっていたという点です。
具体的には、フォロワー数が多いことの影響は、実際の利用頻度が低い(low use)状態と組み合わさったときにおいて、抑うつ症状の増加との関連が認められました。単に「フォロワーが多いから」あるいは「使用時間が短いから」という単一の要因ではなく、この2つが重なり合ったときに特異な関連が見られることが、統計的に明らかになったのです。
フォロワー数・利用頻度・性別の相互作用まとめ
本研究におけるフォロワー数、利用頻度、そして性別の複合的な相互作用のパターンと、それぞれのケースに対する臨床的な事実に焦点をあてたデータをまとめた表は以下の通りです。
| 相互作用(因子の組み合わせ) | 論文が示した統計的事実 |
| 女子 × 高フォロワー数 | 相互作用が有意であり、フォロワー数の影響の現れ方が性別によって異なっていた。 |
| 高フォロワー数 × 低利用頻度 | 相互作用が有意であり、フォロワー数多数と実際の低利用頻度の組み合わせで抑うつ症状の増加との関連がみられた。 |
このように、本研究の結果は、若者たちのメンタルヘルスを守るためには単に使用時間という「量」を制限するだけでなく、性別ごとの感受性の違いや、デジタル上の人間関係のあり方(構造や組み合わせ)にまで目を向ける必要があることを教えてくれています。
次の章では、これらの結果を踏まえ、なぜこのような現象が起きるのかという心理的メカニズムについての「考察」を深めていきましょう。
第5章:考察〜データから見えてくる若者たちの心理的背景〜
(原文対応:Discussion)
前章までに確認した具体的なデータや相互作用の分析を踏まえ、若者たちのデジタル環境が心にどのような波紋を広げているのか、実感が深まってきたことと思います。
この章では、本論文の「考察(Discussion)」に沿って、なぜ問題のあるSNS利用(PSMU)や利用頻度、フォロワー数が、思春期の発達段階にある若者たちの抑うつ症状に関連しているのか、本研究のデータから推察される「考えられる心理的・行動的メカニズム(仮説)」について詳しく見ていきます。
SNSが引き起こす「比較」と「プレッシャー」
本研究において、フォロワー数の多さや利用頻度の高さが抑うつ症状の悪化に関連していた背景には、思春期特有の心理的メカニズムが深く関わっている可能性が考察されています。
特に、フォロワー数が多い女子や「高フォロワー×低利用頻度」の層で影響が見られた点について、論文では「社会的比較」と「対人ストレス」の観点から、主に以下の2つのメカニズムを推測しています。
1. 社会的比較(受動的利用による認知の歪み)
自ら能動的に発信せず、他者の投稿を閲覧する時間(受動的利用)が増えると、他人のポジティブで華やかな側面ばかりを目にする機会が増えます。その結果、「自分だけが取り残されている」「自分の生活は充実していない」という社会的比較による錯覚を抱きやすくなり、自己肯定感の低下や孤独感を募らせていくと考えられます。
2. 他者評価への過敏性(つながりの維持コスト)
フォロワー数という目に見える人間関係の規模が大きいほど、「周囲の期待に応え続けなければならない」「他者からどう見られているか」という評価懸念(他者視線への感受性)が強まります。特に対人関係の評価を重視しやすい思春期女子において、目に見えないプレッシャーがストレッサーとなっている可能性が示唆されます。
「フォロワー多数×低頻度利用」に潜む3つの心理的リスク
では、第4章で示された「フォロワー数は多いのに利用頻度は低い」というギャップは、なぜ抑うつの増加に関連していたのでしょうか。
前述のメカニズムを当てはめると、以下の3つのリスクが浮かび上がります。
- 見る専(受動的利用)の泥沼化: フ自らは発信せず閲覧のみ(低頻度利用)となることで、社会的比較による心理的ダメージをより受けやすくなる。
- 更新できない自分へのプレッシャー: 多くのフォロワーを抱えながらも、心のエネルギー不足等で投稿できず、「つながりを維持できない」という恐怖や焦りを抱える。
- 数字と実態の乖離:画面上の数字(フォロワー数)は多くても本音を話せる関係がなく、表面的な数字と内面的な孤立感とのギャップが自己肯定感を低下させる。
思春期という多感な発達段階は、自己アイデンティティを確立する途上にあり、仲間からの評価に対して脳の報酬系が非常に敏感な時期でもあります。だからこそ、若者たちは大人以上にこうしたデジタル上の心理的ストレスを真に受けやすく、それが抑うつのリスクに関連しているのではないかと考察されています。
なぜ症状が重い子ほどSNSに逃げ込んでしまうのか
もう一つの重要な議論は、初期段階で抑うつ症状が重かった若者(高分位点)ほど、SNS利用による悪影響を強く受けていた点です。
現実世界で生きづらさを抱える子ほど、ネガティブな感情を麻痺させ、安心感や承認を得るためにSNSの世界へ没頭(エスケープ)しやすくなります。しかし論文では、これが結果的に以下のような「負のスパイラル(悪循環)」を生み出している可能性を指摘しています。
現実世界におけるストレス、初期の抑うつ症状、孤独感が背景にある。
ネガティブな感情を麻痺させたり承認を得たりするため、自己治療的にSNSへ没頭する。
オンライン上の比較やプレッシャー、睡眠不足などが重なり、症状がさらに悪化する。
このように、もともと心のエネルギーが低下している若者ほどデジタル環境のリスクに対して脆弱であり、結果として症状が悪化しやすい構造が推測されます。
だからこそ、私たちは表面的な「スマホ依存」という行動だけを問題視するのではなく、その背景にある本人のもともとの心の状態や、彼らが抱えているかもしれない孤独感に寄り添う必要があると言えます。
次の最終章では、これらの考察を踏まえた本論文の「結論」と、これからの予防や心理支援の実践的な展望についてまとめていきましょう。
第6章:結論と実践的アドバイス〜心を守るために私たちができること〜
(原文対応:Conclusion)
ここまで問題のあるSNS利用(PSMU)や利用頻度(SMU)、フォロワー数(SMF)が、思春期の発達段階にある若者たちの抑うつ症状の経過にどのように関わっているのかをデータとともに確認してきました。
この章では、本論文の「結論(Conclusion)」に基づき、思春期のアドレッセントのメンタルヘルスを守るために、私たちが臨床や社会の中でどのようなアプローチを行っていくべきか、実践的な展望をまとめていきます。論文が示すエビデンスが、これからの予防や個別の心理支援にどのように結びつくのか、最後に整理していきましょう。
若年層保護のための政策的介入の必要性
本研究の重要なインプリケーションの一つとして、若年層におけるSNS利用頻度の高さが抑うつ症状の増加に関連していたという結果に基づき、社会的なアプローチ(予防策)の必要性が挙げられています。
論文の結論(Conclusion)では、現在の世界的な規制のトレンド(global regulatory trends)という背景に触れつつも、特定の規制を一律に支持するような強い断定はせず、「若年層保護のための政策的介入の必要性が示唆された」と述べるに留めています。
思春期の早期にある子どもたちは、デジタル空間における人間関係や利用状況のあり方に対して、心理的に脆弱な発達段階にあります。そのため、個人の努力や家庭内でのルール決めだけに依存するのではなく、プラットフォームや社会全体といった「マクロな視点」から子どもたちを取り巻く環境に配慮していくことの重要性が示されています。
個人の特性(性別や心の状態)に合わせた個別支援の重要性
一方で、本研究が臨床現場の私たちに最も強く示唆しているのは、SNS利用に関する介入は一律のものではなく、「個人の特性に合わせてテーラーメイド化(tailored)されるべきである」という「ミクロな視点」の重要性です。
論文のデータが示した通り、SNS利用と抑うつ症状との関連は、若者たちの年齢、性別、そして「ベースラインのメンタルヘルスの状態(初期の重症度)」などの個人特性によって異なっていました。
特に、フォロワー数と性別の相互作用や、フォロワー数と利用頻度の組み合わせによる関連性の違いは、若者一人ひとりの背景に異なる心理的負荷が隠れていることを示しています。したがって、一律に「スマホを取り上げる」といった画一的な指導ではなく、個別の状態や利用スタイルに応じたきめ細やかな支援(環境調整)を行う必要があります。
テーラーメイドな介入アプローチの指針
最後に、今後の心理支援や治療の現場における個別の介入アプローチの指針を以下にまとめました。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。
本論文のエビデンスが示唆するように、思春期の複雑なメンタルヘルスを守るためには、単なる時間制限という「量」のコントロールを超え、個人の特性やデジタル上の人間関係のあり方にまで目を向ける必要があります。
本記事の知見が、未来を担う子どもたちへのより良い支援や、日々の関わり方のヒントにつながることを願っています。
