仕事や学校のことで心が限界に近づいているとき、「今日だけでも休みたい」「診断書をすぐに提出しないといけない」と焦ってしまうことがありますよね。
特に精神科や心療内科を受診したことのない方にとっては、「当日でも診断書はもらえるの?」「どんなことを話せばいいの?」と不安が大きくなるものです。
このページでは、当日診断書を発行できるケースや準備すべきポイント、会社や学校への伝え方まで、やさしく丁寧にお伝えします。
精神科・心療内科で「当日(即日)」診断書はもらえる?
結論:多くのケースで可能だが、条件によっては不可
診断書の即日発行は、初診であっても医師が「医学的に妥当」と判断した場合には可能です。
実際、うつ病や適応障害、不安障害など、生活機能に明らかな支障が出ており、その状態が診察時点で確認できる場合には、当日の発行が行われるケースは少なくありません。
ただし、診断書はあくまで「診断に基づく医学的文書」です。
診断を下すには、症状の継続期間や重症度、社会生活・労働能力への影響など、いくつかの要素を総合的に評価する必要があります。
たとえば、DSM-5-TRやICD-11では、うつ病と診断するには「抑うつ気分または興味の喪失が少なくとも2週間以上続いている」などの時間的要件があります。
こうした診断基準に合致していない段階では、「経過観察が必要」と判断され、当日の診断書は見送られることもあります。
したがって、診断書の即日発行は“できる場合もあるが、保証されるものではない”というのが結論です。
医師の診察と判断を経たうえで、「医学的妥当性」が認められれば、当日中に文書が発行される可能性があります。
初診でも当日発行してもらえるケース
以下のような条件に当てはまる場合、初診でも即日で診断書を受け取れる可能性が高いです。
1. 明らかな生活・仕事の支障があると判断できるケース
例えば以下のような状態が診察時に確認できれば、診断書が出やすくなります:
- 抑うつ気分、焦燥、不安、過換気などの明確な訴えがあり、労働や通学が困難と判断される
- 睡眠障害や食欲不振などの身体症状が継続しており、社会生活が破綻している
- 職場でのストレスによって心身に影響が出ている旨が問診から明らかである
- すでに本人が休職・欠勤しており、事後的に証明が必要になっている
2. 診断名が仮でも付けられる状況
DSM-5-TRやICD-11の診断名を正式に記載するには一定の診断要件が必要ですが、「抑うつ状態」や「ストレス反応」といった暫定的な医学的見解を基に、会社提出用の診断書が書かれることがあります。
3. 予約制のクリニックで、あらかじめ診断書希望を伝えている
即日対応を行っている心療内科・精神科では、予約時に「診断書希望」と伝えることで、医師側も準備がしやすくなるため、当日の発行がスムーズになることがあります。
当日発行が難しいケース(診断に時間が必要/経過観察が必要)
一方で、以下のような場合は、即日での診断書発行が難しい、または医師が断る可能性が高いです。
1. 症状が診断基準にまだ満たない場合
例えば、DSM-5-TRにおけるうつ病は「2週間以上の症状の持続」が必要条件です。
仮に受診当日が不調の初日であった場合、「その時点で確定的な診断ができない」と医師が判断する可能性があります。
2. 医師が「診断書の発行はリスクがある」と判断した場合
診断書には医師の責任が伴います。とくに、就労不能や休職を伴う内容であれば、職務遂行能力が明確に低下している根拠を示す必要があります。そのため、短時間の診察や主観的訴えのみでは慎重になる医師も多いです。
3. 医師との信頼関係が築かれていない
「診断書だけが目的」と受け取られるケースでは、医師が懸念を感じる場合があります。精神医療では特に、患者さんとの信頼関係が診断や治療の基盤になるため、一度の受診で判断を見送ることもあります。
4. 書類対応に時間がかかるクリニックもある
診察後に「カルテ記載 → 診断名の検討 → 医学的文書作成」という工程を経るため、即日発行に対応していないクリニックも一定数存在します。特に医師1人で運営しているクリニックでは、文書作成に1~3日ほどかかることも珍しくありません。
- 多くの精神科・心療内科では、症状が明確で医学的根拠がある場合、当日診断書の発行が可能です
- 一方で、診断基準を満たさない場合や医師が経過観察を要すると判断した場合は、当日発行が難しいこともあります
- 医療現場では「診断の妥当性」が最優先であり、文書発行には医師の慎重な判断が求められます
- 事前に診断書希望を伝えることや、症状・背景を丁寧に説明することが重要です
では、初診であっても診断書が出ることがあるとはいえ、実際にはどのようなケースで「即日発行」が認められやすいのでしょうか?
次の章では、「初診でも診断書が当日発行される典型的なケース」について、具体的な例とともに詳しく解説していきます。
当日診断書を発行できるかどうかを左右するポイント
こでは、当日発行の可否を分ける判断ポイントについて、精神科医の視点から丁寧に解説していきます。
診断書に記載する「医学的根拠」とは
診断書は、単なる意見書や紹介状とは異なり、医師が「医学的に妥当な診断に基づいて」責任を持って記載する文書です。
特に、就労困難や休職、欠勤の必要性を示す診断書には、症状の程度・経過・DSM-5-TRやICD-11に準拠した診断名、そして「なぜ今、仕事や学校を休む必要があるのか」といった医学的根拠が必ず求められます。
たとえば、うつ病や適応障害と診断する場合には、
- 抑うつ気分が2週間以上持続している
- 集中力の著しい低下がみられる
- 食欲や睡眠に変化がある
- 業務遂行能力が明らかに低下している
といった症状やエピソードが明確に確認される必要があります。
医師は、これらの情報を問診で得たうえで、診断基準(DSM-5-TR、ICD-11)と照らし合わせ、十分な根拠があると判断したときにのみ、診断書を発行します。
つまり、「ただ疲れている」や「気分が乗らない」だけでは医学的根拠としては弱く、診断名や症状の重さが、明確な根拠として示される必要があるのです。
問診内容(症状・期間・生活への影響)
初診時に問診される内容は、診断書発行の可否に大きく影響します。
医師は、以下のような情報を具体的にヒアリングし、症状の継続性や生活機能への影響度合いを把握しようとします。
- 症状の内容(例:気分の落ち込み、不安感、過呼吸、怒りや涙のコントロールができない等)
- 発症時期と経過(いつから不調が始まり、現在どうなっているか)
- 生活への影響(仕事・学校・家事・対人関係などに支障が出ているか)
- 身体症状の有無(食欲不振、眠れない、倦怠感など)
- 既往歴・服薬歴(過去の通院歴や精神科の受診歴があるか)
このように、医師は単に「つらい」「休みたい」という主観的な訴えだけでなく、「どのような症状が、どのくらい続いており、どのように日常生活に支障を与えているか」という客観的かつ具体的な情報を重視します。
診断書がその日のうちに発行されるためには、これらの問診内容が医師の診断基準を満たすかどうかが鍵となります。
会社提出用の診断書で求められる内容
会社や学校に提出する診断書には、決まった書式がない場合が多く、医師の自由記述で書かれます。
ですが、実務上よく含まれる記載内容には以下のようなものがあります。
- 診断名(うつ病、適応障害、神経症性障害など)
- 現在の症状や就労困難の理由
- 休職・欠勤が必要な期間(例:2週間の休養を要する、など)
- 今後の治療方針と見通し(継続通院、再診予定など)
とくに企業の人事や産業医が確認したいのは、「この人は本当に働けない状態なのか?」という点です。
したがって、診断書においても就労困難の医学的理由が明示されることが求められます。
また、企業側に提出する書類では、
- 「本人の申し出により休職が必要と判断した」
- 「業務継続は本人にとって健康上の悪影響があると認められる」
といった文言が用いられることもあります。
これらは法的にも重要な意味を持つため、安易に発行できない理由にもなります。
「当日でも診断書をくれるクリニック」として評判の高い施設では、こうしたフォーマットに慣れており、会社向け診断書の記載経験が豊富なことが多いです。
どうしても急ぎで必要な場合は、事前に「会社提出用で、就労不可の診断書を今日書いてほしい」と伝えておくと、対応の可否が確認しやすくなります。
- 診断書には医学的根拠(診断名、症状の程度、生活への影響)が必要
- 医師はDSM-5-TRやICD-11に準拠した診断基準に基づいて判断する
- 初診時の問診で、症状の内容・経過・生活への影響が詳しく問われる
- 会社提出用診断書には「就労困難の理由」「必要な休職期間」などが明記される
当日発行が難しい場合の代替手段 – 再診でもらう心づもりをする
受診しても「今日は診断書を出せません」と言われたとき、焦りや不安で頭が真っ白になってしまう方もいるかもしれません。
特に、会社から「今日中に診断書を出してほしい」と言われていた場合や、すぐに休養が必要な場合などは、「どうしたらいいの?」と戸惑うのも当然です。
この章では、当日に診断書がもらえなかった場合でも対応できる現実的な代替手段について、精神科医の視点から具体的に解説していきます。
とりあえず「受診証明書」をもらう
当日中に診断書が出せないと医師に言われた場合でも、「何も証明がないまま帰される」わけではありません。
そのようなときにまず検討すべきなのが、「受診証明書(通院証明書)」を発行してもらうことです。
受診証明書とは?
受診証明書は、「本日、〇〇クリニックで診療を受けた」という事実を記録した文書です。
診断名や病状などの詳細は書かれませんが、「医療機関で専門的な相談を行った」ことを客観的に証明できるため、会社や学校に対する説明の第一歩として有効です。
なぜ役立つのか
- 職場に「受診したこと」は即日で報告できる
- 医師に経過観察を求められた正当性を示せる
- 診断書の「後日発行」の流れをスムーズにできる
多くの企業では、「とりあえず受診したことが分かればOK」というケースもあります。
特にメンタルヘルスに理解のある職場であれば、「初診当日は診断がつかないこともある」と理解されやすい傾向があります。
どのように依頼すればいい?
「診断書が出せないとのことですが、受診証明書をいただくことはできますか?」と受付や医師に丁寧にお願いすれば、ほとんどの医療機関で対応してくれます。
発行までの所要時間は短く、料金も500〜2,000円程度と比較的安価です。
後日発行でも会社が認めてくれるケース
「診断書は次回になります」と医師に言われても、それだけで焦る必要はありません。
多くの職場では、初診日から数日以内に診断書を提出できれば問題ないとされているケースが一般的です。
よくある会社側の対応
- 「診断書は後日でも構わないので、まずは療養を優先してください」
- 「受診証明書を今日出してもらい、診断書は出たタイミングで再提出してください」
- 「診断書の提出期限は3日以内」など、一定の猶予があるケースも
一部の大企業では、産業医や人事部が医学的プロセスに理解を示し、「即日発行を求めない」ルールを定めていることもあります。
自分でできる工夫
- 診療後すぐに職場に連絡し、「診断書は次回受診での発行になる」と伝える
- 医師の指示があれば、「次回予約日」や「経過観察中であること」も補足する
- 必要に応じて、受診証明書をスキャン・撮影してメールで提出する
ここで大切なのは、「診断書が出なかった」ことを隠さず、正直に説明することです。
医師が慎重な判断をしていることは、決して悪いことではありません。
二度目の受診後に診断書が出る理由
なぜ初診では診断書が出せないことがあり、二度目の受診であらためて診断書が発行されるのでしょうか?
それには、精神科・心療内科特有の“慎重な医学的プロセス”が関係しています。
精神疾患の診断には「経過観察」が重要
たとえばDSM-5-TRやICD-11においても、うつ病や適応障害、不安障害などの診断には「症状の持続期間」「日常生活への影響」「ストレス因との関連性」など、一度の診察だけでは判断できない要素が多く含まれています。
精神的な症状は日によって変化しやすく、「一過性の不調」か「疾患レベルの症状」かを見極めるには、数日の経過観察が必要になるのです。
医師の責任と診断書の重み
診断書は単なる書類ではなく、「医学的判断を文書として保証するもの」です。
診断が間違っていた場合、社会的・法的責任が医師に問われることもあります。
そのため、特に初診で情報が限られている場合は、「まず1回目の受診で現状を評価し、2回目で診断を確定する」という慎重な手順がとられるのです。
フォローアップを受けることで信頼性が高まる
再診で同様の症状が確認されたり、生活に支障が続いていることが確認されることで、より確実に診断名が確定し、診断書の内容も信頼性の高いものになります。
これは会社側にも納得してもらいやすい、というメリットにもつながります。
- 当日診断書が出せない場合でも、「受診証明書」で受診の事実を証明できる
- 多くの企業では後日提出を認めており、受診直後に誠実に報告することが重要
- 精神科の診断は慎重を要し、二度目の受診で診断が確定することも多い
- フォローアップを重ねたうえで発行される診断書は、医療的にも社会的にも信頼性が高まる
ここまで、当日診断書が出せなかった場合の現実的な代替手段についてお話ししました。
次の章では、診断書の料金相場や保険適用の有無について、初めての方でもわかりやすく整理してご紹介します。
費用(料金)と保険適用について
精神科・心療内科で発行される診断書は、原則として自費診療であり、健康保険が適用されないのが通常です。
ここでは、その理由や料金相場、会社が負担してくれるケースまで、安心して受診できるよう丁寧に解説していきます。
診断書は原則「自費」である理由
診断書の発行は、医療行為そのものではなく、医療機関が行う「文書作成業務」として位置づけられています。
健康保険は「治療のための医療行為」に対して適用される制度であり、書類作成のような“治療以外のサービス”には保険適用が認められていません。
これが、診断書が保険適用外となる基本的な理由です。
精神科領域では、欠勤や休職を証明する診断書が求められることがありますが、たとえ診断名がICD-11やDSM-5-TRの基準に該当するものであっても、「書類の発行そのもの」は医療保険の対象外です。
また、診断書には医師が責任を持って記載するための以下のような作業が含まれます。
- 問診内容の整理
- 診断基準との照合
- 就労困難の医学的根拠の明記
- フォーマットの確認・記載
- 必要に応じた経過の説明
こうした専門的な判断と文書作成にかかる手間を反映し、文書料として自費で請求される仕組みになっています。
診断書の一般的な料金相場
診断書の料金は医療機関によって多少異なりますが、一般的には以下の範囲に収まることが多いです。
- 簡易な診断書(欠勤・短期の休養等):2,000〜3,300円程度
- 休職診断書(1ヶ月以上の休養が必要など):3,000〜5,500円程度
- 保険会社提出用など詳しい記載が必要な診断書:5,000〜10,000円程度
いずれも「文書料」として請求され、医療行為とは区別されます。
休職や傷病手当金の申請に使用する診断書は、医師が慎重に症状の程度や就労困難を説明する必要があるため、料金がやや高くなることがあります。
また、診断書を当日発行する場合、クリニックによっては急ぎ対応の加算料金を設けていることもあります。
料金は医療機関ごとに自由に設定できるため、受診前に「文書料の相場」を確認しておくと安心です。
会社が負担するケース/自己負担のケース
診断書の費用を「誰が負担するか」は、会社の就業規則や提出目的によって異なります。
一般的には次のような区分があります。
■ 自己負担となるケース(もっとも一般的)
多くの企業では、次のような場合には診断書の費用は本人負担となります。
- 欠勤の理由として診断書の提出を求められた場合
- 本人が任意で会社に症状を説明したい場合
- 軽度の体調不良の証明
- 提出先が学校・アルバイトで、規定がない場合
これらは、会社が必要とする「事務上の証明」であり、企業側に法的義務がないため、費用負担も本人に任されることが一般的です。
■ 会社が負担するケース(特定条件で発生)
以下のような場合には、企業が診断書費用を負担してくれるケースがあります。
- 会社が業務命令として診断書の提出を求めている場合
- 例:長期欠勤の際、復職にあたり医師の意見書が必須
- 産業医面談の結果、医療機関の受診・診断書提出を指示された場合
- 企業側の安全配慮義務の一環として必要
- 労災の可能性があるケース
- 「業務起因性の判断」に必要とされるため会社負担となる場合がある
ただし、こうした「会社負担のルール」は企業ごとに異なるため、提出先に確認することが重要です。
■ 公的制度に関する診断書(例:障害年金)
障害年金や自立支援医療などの制度に提出する診断書は、書類によって相場が異なりますが、これらも原則的には自費です。
一部の制度では、自治体や保険者が補助を行っているケースもあります。
- 診断書の発行は医療行為ではなく「文書作成業務」であるため、保険適用外
- 一般的な料金相場は2,000〜5,000円程度で、内容や用途によって変動する
- 自己負担が基本だが、会社が「業務上必要」と判断するケースは企業負担になる場合もある
- 受診前に文書料を確認しておくと安心
まとめ
精神科や心療内科で診断書を求めるのは、決して「弱さ」や「怠け」ではありません。
むしろ、今の自分の状態をきちんと理解し、これ以上つらくならないように“立ち止まる勇気”を持てたという、とても大切な行動です
。診断書が当日発行できるかどうかは症状や医師の判断によって異なりますが、適切な準備と伝え方を知っておくことで、スムーズに受診を進めることができます。
この記事があなたの不安を少しでも和らげ、今後の判断に役立つものであれば嬉しく思います。
- 診断書は多くのケースで「当日発行」可能だが、症状や状況により例外もある
- 受診前に「会社からの指示」「症状の経過」「困っていること」を整理しておくとスムーズ
- 当日発行が難しい場合は「受診証明書」や後日診断書で代替できることが多い
- 診断書の費用は原則自費で、3,000〜5,500円前後が一般的
- 会社・学校には「診断書が当日出るかわからない」点を丁寧に伝えれば大丈夫
- 診断書を求めることは“甘え”ではなく、つらさを適切にケアするための大切な一歩
あなたが必要なサポートにつながり、安心して今日を過ごせますように。
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